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その日は一日ずっと一緒にいた。こんなのは久しぶりで、とても楽しかった。

その夜の事、12時を回る時間帯であった。奈菜にキスをして、そのまま彼女を押し倒そうとする。しかし、彼女の両手にそれを拒まれた。思わず、どうしてという疑問が口に出る。すると奈菜は、悲しそうな顔をして言った。

「ごめんなさい。・・・まだ、蓮二を信用できなくて」

その言葉に俺は愕然とした。俺のこの思いが、未だ彼女に少しも伝わっていなかったなんて。まるで今更のようにそれに気がついて、俺は暫し呆然と押し黙る。
でも、よくよく考えてみれば、伝わっている筈もないのだ。愛の言葉を囁こうが、身体を重ねようが、それが本当の気持ちかどうかなんてのはわかりようがない。それは俺にとっても然りだ。侵入者が来た時に俺が奈菜を信じられなかったのと同じように、彼女もまた、俺の事を信じる事はできないのだ。

「ねぇ蓮二。私・・・あなたを信じて良いの?」

不安げな声に、俺は「勿論だ」と小さく微笑んだ。

「それでも、信じられないのなら・・・」

俺は奈菜を見た。奈菜も俺を見ていた。

「俺が、これから信用させてやる」

真剣な言葉に、彼女が笑った。何の混じり気も無い、心からの笑顔。俺も小さく微笑んで、そのまま奈菜にそっと口付けた。

俺たちの距離は、手を繋ぐには近すぎるけれど、抱き締めるには少し遠い。でも、それで良い、と思う。今はまだ、それで良い。いつか、その頬に触れ合える距離になるまでは。


を繋ぐには近すぎて、きしめるには遠すぎた


それなら、これから一緒に歩いていけば良いのだから。


(何度もすれ違う事は当り前だ)
(お互いに真実とは真逆の事を考えては悩んで、それでも愛し合える)

(いつの日か、本当にあなたを信じられる日まで)
(どうかそれを、忘れないで)


END


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