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それから、他愛のない話をたくさんした。脈絡の無い話を繰り返せば、少しは楽になれる気がして。話した内容はもう既に全ては思い出せないが、それはどれも、私が蓮二と過ごしてきた日々に由来するものだった。
苦手な食べ物の美味しい調理の仕方、蓮二が見つけてくれた私の癖、愛されることの喜び。蓮二もそれに気付いてか、どこか優しげな瞳で話に付き合ってくれた。
そのまま眠りについて、目が覚めれば朝だ。蓮二は眠りに付く前のまま、ちゃんと隣にいる。おはよう、という彼の声が、酷く愛しい。しかし同時に蘇ってきたのは、昨夜までの記憶で。
幸村と共に逃げ出したこと、それは蓮二が他の女といたのが原因なこと、蓮二が私を愛してくれているのかは確かではないということ・・・。

「蓮二、私・・・」

何かを言いかけた私を引き寄せ、蓮二がきつく抱き締める。それから囁くように、懇願するように、彼は言った。

「もう、どこにも行かないでくれ」

昨日も聞いたセリフ。彼にそんな事を言わせたのは私で、その点に関しては私が悪いのはわかる。しかし、その言葉はどうにも自分勝手なように感じられて、私は彼の肩にうずもれたまま眉を顰めた。しかしそれは表に出さず、

「・・・ずっと、一緒だよ」

そう、小さく笑って返した。蓮二の安心したような微笑が、脳内にこびり付いて離れない。


傷付くのはわたしだけでいい


心はこんなにも、貴方を愛しているのに。

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