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『やめて!!』

と、彼女は確かに言った。

あれから流れた沈黙は重い。こちらは奈菜を守る為に男を取り押さえようとしていたわけで、少なくとも自分にとってはそこに他意はなかった。それなのに、彼女は俺に守られる事を拒むかのようにそんな事を叫んだのだ。そこにあったのは、ただ強い拒絶のみだった。
男はしばらく状況を眺めて楽しんでいるようだったが、やがて言った。

「僕と一緒に行こう」

男が笑った。それに彼女が頷く。男が彼女の手を取った。
慌てて引きとめようと彼女の腕を引けば、

「離して!」

と強い口調で叫ばれる。そのたった一瞬で、ショックと驚きに身動きできなくなってしまった。男は相変わらず嘲笑うかのようにこちらを見つめていた。もう、手を伸ばすことはできない。

「それじゃ、行こうか」
「・・・うん」

目の前で連れ去られていく奈菜に、夜闇に溶けていく2人に、俺は何も言えなかった。


過ぎ去るを引き止める術なんて


そのまま2人は窓から出て行ってしまった。

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