||22
◇
一人で家に帰った私は、ベッドに潜って彼のことばかりを考えていた。最近距離が遠くなっていた事や、そんな中で遊園地に誘ってもらって嬉しかった事。・・・私が彼についてほとんど何も知らされていないという事も。
真夜中のだだっ広い部屋で、時計の音だけが私を支配していた。月明かりは曖昧で、その輝きに妖艶な影すら見た気がした。そうしてそんな時に限って、男は現れた。
「やぁ」
窓辺に現れた人影に、私は瞬時にそれが誰であるかを悟った。いつもの侵入者だ。本当に彼はタイミングが悪いのだから。いや、それとも狙っているんだろうか。
「元気ないのかい?」
「・・・・・・」
「可哀想に、あいつに裏切られたの?」
「・・・馬鹿にしないで!」
嘲るかのように言った男に、無性に腹が立った。思わず声を荒げた直後、わざとらしく音を立てて部屋の扉が開いた。
「あ・・・・・・」
そこに立っていたのは、蓮二だった。蓮二は男の存在に気がつくと表情を険しくし、睨みつけるようにして歩み寄ろうとする。
「・・・今日は、あの子と遊ぶんじゃなかったの」
蓮二の足を止めるように、私はそう言った。それに男が嘲笑う。蓮二は何か答えようとしていた口を閉じ、男の方へ体を反転させた。答えるより先に、男の処理が先だと判断したらしい。蓮二が男を取り押さえようと手を伸ばす。しかし男は余裕の風体を崩さない。ニヤニヤと、こちらをただ真っ直ぐに見つめていた。蓮二の手が男に触れる。
それに、私は。
「・・・やめてっ!!」
そう、叫んだ。
「奈菜・・・?」
そんなに信用できませんか、僕は後悔した時にはもう、遅かった。
[23/32]
[
prev/
next]