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どこか暖かな空気のある喧騒の最中、私達は遊園地の中へと足を踏み入れた。途端に飛び交う周囲からの視線。羨望の眼差しや嫉妬の目。蓮二と付き合い始めてからは、こんなの慣れたものだ。蓮二はいつも通りその視線を意に介す事無く私の方を見て微笑み、私もまたそれに微笑み返した。
「どこ行く?」
「お前の好きなところで良い」
「ほんと?そうだなぁ・・・じゃあ、」
「ジェットコースター、とお前が言う確率・・・78%だな」
「えっ?」
ぴたりと答えを言い当てられ、思わず目を丸くする。蓮二はそんな私を見てクスリと可笑しそうに笑った。
そんな折だった。
「・・・すまん、電話だ。少し待っていてくれ」
「あ、うん」
蓮二は私をベンチの方へ座らせ、どこか別の場所へと消えた。一人になってしまって暇になり、私は仕方なく周囲の様子にでも視線をめぐらす事にする。すると、突然見ず知らずの女二人に声をかけられた。
「ねぇ、そこのあんた」
「・・・はい?」
顔を上げれば、ケバい感じの女がこちらを睨みつけるように見下ろしていた。
「あんた、あの人の彼女?」
「・・・一応」
「はっ、嘘でしょ?つり合ってないのよ」
それから女達は私をあざ笑うかのように罵倒した。生意気だとか、ぶさいくだとか。それが本当だとしても、あまり知りもしない相手に恥ずかしげもなくよくそんな事が言えたものだ。私を嘲笑う前に、自分の人間性を見直したらどうかと思う。まぁ、そんな事言えるはずもないんだけれど。
「あんた、いい加減なんか喋ったらどうなの?それとも自分のあまりの恥ずかしさに何も言えなくなっちゃった?」
一人が痺れを切らしたのか、そんな事を言った。・・・恥ずかしい、ね。
私はそれにゆっくりと顔を上げ、少しだけ悲しそうに笑って言った。
「そんなの、知ってるよ」
徒花を踏んで歩くつり合わないとか、どうせ別れるとか。そんなの私にはどうでもいい。
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