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「やめてっ・・・、やめて!!」
捕まれた腕を何度となく振り払い、必死で彼を遠ざけようとした。しかし伸びてくる手は止まる事無く、私を襲おうとする。そこにいるのは確かに蓮二であるのに、酷く恐ろしい存在に見えた。
「奈菜・・・、奈菜!!」
「・・・え、」
と、突然大声で名前を呼ばれ、はっ、と我に返った。蓮二をそろそろと見上げると、彼は嫌に落ち着いていた。捕まれた腕にはそれほど力もこもっていないし、服も全くはだけていない。暗かったはずの部屋には明かりがついていて、そこまで考えて自分が夢を見ていた事に気がついた。
「・・・ごめんなさい」
「いや、良い」
蓮二は小さく笑って軽くうなずいた。それからしばらく気まずい雰囲気が漂っていたが、それを断つかのように蓮二が口を開いた。
「奈菜、これを」
差し出されたのは、一枚のチケット。よく見てみれば、わりと付近にある遊園地のチケットだった。蓮二のもう片手にも、同じものが握られている。
「これ・・・、」
「たまには良いだろう」
そう優しく微笑んだ蓮二に、私も笑った。
メリィゴーランド・チケット唐突な誘いに、思わず頬をほころばせていた。
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