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男は消えた。蓮二も帰ってこない。私はただ一人、暗闇に残されていた。
時刻はすでに12時をまわり、もうそろそろ蓮二も帰ってこようかと言うところだ。帰ってこない内に、私も眠ってしまおうか。そう思ってベッドにもぐりこんだところで、部屋の扉が開いた。
聞き覚えのある、冷えた足音。間違いなくこれは蓮二のものだった。
身体を起こして、小さく声をかける。

「・・・蓮二?」

すると目の前で彼の足が止まった。部屋の明かりはほとんどないが、その瞳の光だけはしっかりと私にも認識できた。何も言わない蓮二に、じっとその瞳を見つめ返す。薄く開かれた瞼は、しかしそれでも確かに私を捉えていた。
何か声をかけてみようか、と口を開きかけた私は、ふと動きを止めた。彼の瞳の色が明らかに変わるのを、見てしまった為だ。・・・それはそう、獣のような瞳に、

「・・・蓮、」

わずかに肩を逸らした蓮二の姿に、自分の中の危険信号が鳴り響いた。


サイレンが鳴り響く


伸ばされた手に、息が止まった。

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