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カチッ、カチッ、と針音が何重にも重なり合う。外からの微かな騒音、甘美なる鳥のさえずり。それら全てが私の頭を支配し、捉える。普段と何ら変わりない朝は、その閑散とした雰囲気をもって私を誘惑していた。
ぼうっと窓辺に腰掛け、流れ行く雲を眺めて早数分、すでに私の脳内は昨夜の出来事へと考えを集中させている。

「愛してる、ね」

あれから彼とは顔を合わせていない。最後に告げた言葉は夢物語のように美しい言葉だったけれど、果たして私はあれを本心から言えていたのだろうか。そうしてそれを受けた蓮二の本心は、一体どこにあるのか。

(愛されてるのは、どっち?)

極普通のカップルであれば、"どちらも"というのが正解なはずだ。しかし私たちの場合、それは不確かで酷く曖昧である。これと同様、愛しているのがどちらなのかさえも。

(・・・いっそ、蓮二と別れれば)

そんな考えが脳裏を過ぎり、小さく頭を振った。そう言えども、蓮二への愛はそんなに簡単なものではない。SとNの磁石が自分で離れられないのと同じように、私達もそれと同じ関係なのだと思う。
愛してしまったのだ、彼の事を。けれと、彼にとっては私なんて。

「・・・蓮二、」

もう、何度名前を呼んだのかも忘れてしまった。


裏切るのは簡単


それを正当化するのが、難しいだけで。

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