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互いに無言のまま、長い時間が過ぎた。時計の音と僅かな息遣いしか聞こえないこの空間は、暗闇の中だと気が狂いそうになる。数分、数秒で済んだはずの出来事が、何時間もの長い体験に感じられた。
奈菜はずっと俺の方へ向けていた手を下ろし、握られていたガラスの破片を力なく床に落とした。カラン、という乾いた音が酷く大きく響いてきて、それが俺の意識を急に現実へと引き戻した。

「・・・・・・」

何か言おうとしても、言葉が出ない。ついさっきまで話せていたものが、今になって話し方を忘れてしまったかのように動かなかった。

「・・・蓮二」

と、奈菜が口を開いた。俺は顔を上げて彼女を見つめる。その間に漂う空気は、なんとも言えず俺を緊張させた。彼女は一歩、後ずさると、

「・・・・・・愛してるから、」

そう呟いて、部屋を出て行った。それを追おうと慌てて踏み出した足は、彼女が落としたガラスの破片を踏みつける。真っ暗闇の中では確認できないが、確かに血を流しているのがわかった。
開けっ放しの扉はその奥に誰もいない事を実感させる。静か過ぎるほどの空間に、寒気すら感じた。
気がつけばただ一人、暗闇の中に取り残されていた。


静寂が訪れる


夜は、君の影さえも残してくれない。

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