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暗い部屋の中で、私は今度こそ本当に一人ぼっちになってしまったような気がしていた。差し込む月明かりはとても優しいのに、その色は冷たい。自身を取り囲む闇が、嫌に重たく感じられた。
蓮二はいつもの如く、「仕事」で帰ってきていない。それが嘘か本当かは、・・・既に私にはわからなくなってしまったが。

『愛してる』

彼がそう告げる相手は、私だけだと思っていた。そこに多少なりと疑いの色があったにしても、今朝までは確かにその言葉を信じられていたのだ。
電話の向こうにいたのであろう美しい女性の姿を思い浮かべ、涙の勢いが更に増した。抱き締められた枕は、私の涙を吸いすぎてグショグショになっている。

しばらく涙は止まらなかったが、やがてそれも落ち着いた。

「・・・・・・」

ず、と鼻をすすって、ゆらりとベッドから立ち上がった。頬を伝う涙の残滓はそのままに、ふらふらと机に向かう。机の小さな明かりをつけると、自然と右手が動いた。
右手が掴んだのは、青インクの万年筆。震える手でそれを持ち、意味も無く置かれていた一枚の白紙に小さく綴った。まるで、心の内にあるものを吐き出すかのように。

「・・・・・・ふっ、ぅ・・・っ」

また溢れ出した涙が、ぽつりと真っ白い紙に足跡を残した。


インクの万年筆


蓮二、と震えた誰かの声が部屋に響いた。

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