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ミスドに行った日から3日後、再び大雨が降った。今度も天気予報は丸外れの「晴れ」。信じて傘を持っていかなかった私が馬鹿みたいじゃないかと、小さく舌打ちした。携帯を開いて、友達に「土砂降り、最悪」とメールを送る。すぐに「ドンマイ」と返信が返って来て、少し苦笑した。
「さて・・・帰るか」
はぁ、と溜息をついて、雨の中に飛び出す。途端にスーツが色を変え、むき出しになった両足はその勢いに痛さを感じるほどだ。もう夏になるというのに、雨のせいで酷く寒い。駅からアパートまでは、歩いて10分ほどかかる。必死に走っていけば、まぁ9時30分ぐらいには家につけるだろう。
「は、っ」
ほんの少し荒っぽく息をしながら、ひたすら走った。早く帰ってビールを飲みたいと、頭の中ではそれだけを考えていた。
◇
アパートにつくなり、私は盛大に溜息を漏らした。そういえば今朝も大家が
『この間降ったきり、全然雨が降らないわ!』
とか言っていた気がする。やっぱり大家のせいか、くそ。とかなんとかまた悪態づいて、のろのろと階段を上っていった。ここまでくると雨はもう当たらないが、ダァァァ、という明らかに雨とは思えない異様な音を聞いていると、どうにも疲れが身を襲う。ぶるりと体を震わせて、足を速めた。
「・・・あれ、」
階段を上りきってから、ふと足を止めた。私の部屋は、階段から2番目に遠い位置にあるのだが、そのあたりに何か人影が見えるのだ。・・・今度こそ不審者か?いや待て、今自分の身を守れるものは何も無いぞ。ここは警察に連絡するべきか。でも勘違いだったら不味いし・・・。
「・・・!」
恐る恐る近付いていこうとした瞬間、私はある事に気がつき、慌ててそちらに走り出した。私の隣の部屋の扉に寄りかかるようにして座り込んでいる彼は、間違いなく幸村さんその人で。遠目から見ても、ぐったりしているのがわかる。彼のそばに辿り着くなり幸村さんの体をゆすり、起きない事がわかると彼の体を無理矢理かついだ。大の男なだけに、私にはかなり重い。
自分の部屋の鍵をあけて、急いで彼を中に運び込む。ソファに寝かせ、毛布を被せた。額に手を当ててやれば、かなり熱い。雨に打たれて風邪を引いてしまったのだろうか。
「・・・ん、」
「幸村さん?・・・目が覚めたんですか?」
「・・・大木、さん?」
途切れ途切れにそういう幸村さんを見て、ほっと息をつく。良かった、彼は元気みたいだ。事情を簡単に説明すると、こちらを見てありがとうと弱弱しく微笑んだ。
はい、冷えピタです。
看病してくれる恋人くらいつくっといた方が・・・あぁ、そう。幸村さんはそのまま私のソファで眠りについた。ちょっと、私の寝る場所。
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