||03





それから1週間が経った今日、私は日曜日だからどこかに出かけようかとソファーを立った。いつもならPCで仕事か息抜きをしているが、たまには外に出ても良いかもしれない。しかし生憎、友達はほとんど予定が決まってしまっているらしかった。予定があるなんて羨ましすぎる、と一瞬思ったが、それを言うのも悲しいので黙っておいた。

携帯をいじりながら部屋から出る。ガチャガチャと鍵をいじっている最中、隣から声がかかった。

「大木さん」

つられてそちらを見れば、いつもの笑顔を浮かべる幸村さんの姿があった。ちなみにこの前の水漏れの件は、無事に丸く収まったらしい。それにしてもあの高原さんを納得させられるなんて、幸村さんはすごい。新人のくせにすごい。実はその美貌でなんとかしたんじゃないかと私は踏んでいる。

「おはようございます」

とりあえず挨拶をすると、幸村さんがクスクスと笑った。何が可笑しいのか、と眉間に皺を寄せそうになったが、別に悪気はないのだろうと思い直してなんとか堪えた。幸村さんは相変わらずの笑顔。

「どこかに出かけるんですか?」
「ええ、まぁ。暇なのでその辺をぶらぶらしてこようかと」
「そうですか。でしたら、少し付き合っていただけませんか?」
「・・・え?」

突然の言葉に、私は目を丸くした。付き合えとは、どういう事だと。別に仲の良いわけでもない、しかも異性である彼に誘いを受けるとは、正直なところ素直な気持ちよりも疑いが勝る。
私は眉を寄せて幸村さんの方を見た。

「俺も暇なんです。一人で行くより、二人で行った方が良いかな、と」
「・・・わかりました、ではご一緒します」

まぁ、今までの幸村さんの様子を見ている限り、危ない事はないだろう。もしあったらすぐに逃げ出せば良い。それに、一人より二人というのは私も賛成の事だったから。できるだけ明るい笑顔を浮かべて、幸村さんと一緒に歩き出した。
カン、カン、と階段を下りていく。彼の隣に立つと案外背が高くて、少し驚いた。私も女にしては高い方だと思っていたが、それでもかなりの差がついている。にこにことした表情を崩さない彼は、思った以上に男らしい人なのかもしれないなと無意識に思った。

「どこに行くんですか?」
「特に決めていません。越してきたばかりであまりよくわからなくて」
「でしたら、オススメのところに案内しますよ」

そうか、そういえば彼はここに越してきたばかり。もしかしたら、ただ単にこの町の事を知りたかった為に私と一緒に行こうとしたのかもしれない。そうすれば必然的に、町の大体の場所は見て回れるだろうから。
それだったら素直に案内してくれと言えば普通に応じたのに。私はそんな事を思って、小さく苦笑した。こちらです、と言って彼の足を促す。

「・・・あ、そうだ。ミスドってどこにあるかわかります?」

不意に幸村さんが言った。私はそれに首を傾げつつ、この先ですけど、と言った。なぜそこでミスドなのか。ひょっとして彼は相当のドーナツ好きなのかとも思ったが、

「これ。久しぶりに食べたくなったんです」

と言って一枚のチラシを差し出され、私はあぁ、とうなずいた。


「ミスド100円セールスなんです」って、
そのチラシこっちにも入ってましたしねぇ。



その後ミスドで軽くお茶をした。幸村さんはポンデリングが好きなんだそうな。

[3/9]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -