||ハッピーバレンタイン


聞いてください。っていうか助けてください。
私は、今・・・・・・

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!?」
「待てよ美優っ!!」

追われています。


ッピーレンタ


「こっ、こっち来んなぁぁぁ!?」
「なんで逃げるんだよ!?」

岳人が何か叫んでいるけど、気にしてる暇なんてない。っていうかなんで追いかけられてんだ私!!でも捕まるわけにはいかないから、とにかく逃げる。陸上部のエースをなめんなよ!

「こっちだ!」

角を曲がって、素早く茂みに隠れる。岳人はすぐに追いついてきたが、私には気付かずに、焦ったように辺りを見回した。

「クソクソクソ、どこ行ったあいつ!!」

岳人はしばらくその場できょろきょろした後、こっちか!と言って別の場所へと走り去っていった。それを確認してから、立ち上がる。なんとか撒けた。

「ふぅ・・・疲れた・・・・・・」

盛大に溜め息をつけば、余計に疲れが体を襲った。走りには自信があったけど、私はどちらかというと短距離が得意だったから。
っていうか、私はなんで追われてたの?何か恨まれるような事したっけ。うーん、なんかいっぱいある気がしてならないよ。
とりあえず教室まで戻ろう。きっと岳人はまだ私を探してるだろうしね。

「〜♪」

鼻歌を歌いながら歩いていると、後方でダンッ、という何かが落ちてくるような音が聞こえた。・・・果てしなく嫌な予感。
ギギギ、と音でもさせるようにゆっくりと首を回せば、そこにはいつの間にやら岳人の姿が。

「・・・見つけた!」
「ぎゃ、ぎゃぁぁぁぁ!?」

叫ぶと同時に全力ダッシュ。でもすぐにガシッと腕を捕まれた。

「今度は、逃がさねぇよ」

すぐ耳元で聞こえた声。ひっ、とひきつった声が無意識に上がった。その直後に授業開始のチャイムが鳴る。

「あっ、ほらもう授業始まっ「行くぞ!」・・・はい」

私の必死の抵抗も虚しく、ズルズルと岳人に引きずられながらその場を後にした。





皆が授業を受けている教室や廊下なんかから離れて、誰もいない場所まで来た。ここなら良いだろ、と言って岳人が止まり、改めて私の方を見た。

「なんで逃げてたんだ?」
「いやそっちこそなんで追いかけてたんだよ」
「なんでって、美優が逃げるからだよ」
「・・・私は岳人が追いかけるから」

なんだよ。じゃあ逃げる必要なかったじゃん。無駄な体力使わせやがって・・・。っていうか、それなら岳人は私に何か用があったの?

「ね、岳人・・・」
「そうそう、美優に用があるんだよ」

ぽん、と岳人が手を打った。なんだこいつ可愛いぞコノヤロー。

「あのさぁ、明日バレンタインだろ?」
「え?あぁ、うん」
「だから・・・なんだ、その・・・・・・」
「??」

岳人が言葉を濁す。視線はフラフラと宙をさ迷い、緊張しているのがわかった。
私はそんな彼の様子に首をかしげるが、岳人が何を言いたいのかなんてわかるはずもなくて。

「どしたの?」
「・・・あぁーもうクソクソ!」

急に岳人が叫ぶものだから、私は驚いて、数回目を瞬たかせた。岳人はあからさまに顔が赤い。

「だから、美優のチョコが欲しいって事だよクソクソクソ!!」
「・・・え?」
「じゃーな、俺は帰る!!」
「あっ、ちょ・・・」

慌てて声をかけるが、岳人はそのまま走り去ってしまった。私はその後ろ姿を、ただポカーンと見つめるだけ。

「・・・そんなの、言われなくても・・・・・・」

ようやく我に返ったあと、顔を赤くしてそう呟いた事は、私だけの秘密だ。


――――――――――――
がっくんでした!

2012/2/19 repiero (No,16)

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