||崩壊は続く





それから連日、少女達からの嫌がらせが続いた。彼女達が来るのはいつも昼。それ以外はともかく、昼になると仁王への返信も遅くなった。彼に心配をかけてはいないかと、なにかを怪しまれていないかと、少し不安があった。けれど彼に本当のことを言うわけにもいかず、悟られるわけにもいかない。
それに、少女達のやることと言えば、教室に来て暴言を浴びせたり、時には何かを盗ったり、壊したり、とかその程度のものだった。気の弱い子であればとうに折れていたのかもしれないが、あいにく私はそこまでやわじゃない。まだ「いじめ」というよりは、嫌がらせの範疇だ。だから、このぐらいなら耐えられると、そう思っていた。

しかし、現実はそう甘くはなかった。

「・・・ッ!!」
「あんた、どうせまだ影で仁王君に会ってるんでしょ?そうよね、そうでなかったらここまで強情になるわけないもの」

ダン、と壁に思い切り背を叩き付けられた。頭もそれに追従するように壁に打ち付けられ、一瞬視界が揺れた。背中にじんじんとした痛みが広がる。少女はそんな私の頬を力強くはたいた。パァン、という小気味良い音。教室が静まり返る。いつも隣で泣きそうな顔をしていた香奈が、驚愕に目を見開くのがわかった。彼女の手が私へと伸びる。でもそれを目で制した。今ここで手を出したら、香奈まで巻き込まれてしまうのはわかりきっていた。

「生意気なのよ、ほんと」

頭を殴られる。鈍い痛みが波のように広がり、間もなくもう一度殴られた。そして三度目に続こうとしたところで、――チャイムが鳴った。今までは昼休みの終わりを告げるだけの迷惑なものでしかなかったそれが、今は酷くありがたいものに感じた。少女達は私を離し、ぞろぞろと去っていく。身体がずるずると壁を伝って落ちた。痛みと吐き気のようなものが身体を襲う。香奈が泣きそうな顔で私の身体を抱いた。というか、もう、彼女は涙を流していた。ごめんね、ごめんね、と何度も謝りながら。彼女が謝る必要などないのに、本当に優しい子だ。
それに痛みがあるとは言っても、所詮女の力だ。気を失ったりするほどのものではない。頬も赤くなっているだけでそれ以上は何もないだろうし、時が経ってしまえば痛みも消える。まだ、私は耐えられる。

「香奈、大丈夫だよ」
「でも・・・っ、」
「大丈夫。・・・あいつに、言うわけにはいかないから」
「っ!」

にこりと微笑んだ私に、また香奈が涙を流した。





「・・・返信が来ん」

そう呟いて、俺は壁に頭をもたげた。
どうも最近、昼休みになると芽衣の返信がなくなる。今までは昼休みだろうと小休憩であろうと返信がきちんと来たのに、ここのところそれが全くない。勿論、昼休み以外では普通に返信がくるのだが。
気になって仕方がないが、人目を忍ばずに会うわけにもいかない。毎晩の電話に特に可笑しなところはないし、何か事情があるだけかもしれない。しかし、だからといって不安がないわけでもない。・・・問題になっていなければ良いのだが。

(・・・・・・一度、調べてみる必要があるのぉ)

俺は目を細め、ぱたん、と携帯を閉じた。

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