||噂と崩壊





翌日のことだった。いつも通り、教室で仁王とメールをしていた私の元へ、見知らぬ女子生徒たちがやって来た。遠くからでも悪い意味で目立ちそうな、派手な化粧をしている。服装も、まるで風紀委員に怒られる為にあるような、典型的な崩れ方だった。

「・・・あっ、あの子だよ、美香!」

そのうちの一人が私の方を指差し、私はそれにきょとんとした表情を浮かべた。作成途中のメールを一度消し、携帯を閉じる。あんな派手な子達が私に何の用があるのかとも思えば、思い当たるのはひとつだけだった。

「あんたね、仁王君に抱きついてたっていうのは」

リーダーっぽい女の子が口を開いた。抱きついていた、と言われて記憶を探る。そこで思い出した。たしかに昨日、彼に抱きついたことを。しかしどうしてそれをこの子たちが。

(そういえば、扉・・・、)

昨日屋上に入った時、仁王に会えるということが嬉しすぎて、扉を開けたままにしてしまったことを思い出した。・・・たぶん、私たちが会話に夢中になっている時に、この子たちの誰かが屋上に入って、そして見てしまったのだろう。私たちの秘密を。

「仁王君に抱きつく女がどんなものなのかと思えば・・・この程度? ただのブサイクじゃない。仁王君も遊びで相手にしてやってるのね、可哀想に」
「はぁ・・・?」

その言葉だけは聞き捨てならない。ぎん、と少女を睨み返す。するとその子は一瞬怯み、後ずさりした。しかしすぐに他の子たちと一緒に近寄ってくる。教室内は私たちのただならぬ様子に気がつき、少しざわつき始めた。仁王がどうのって会話、聞かれてなければ良いんだけど。こんな状況になって私の頭に過ぎったのは、そんな内容だった。

「ひとつ忠告しておくわ」
「・・・・・・」
「あんた、これ以上仁王君に近付いたら・・・・・・」

タダじゃおかないわよ。

それだけ言って、少女達は踵を返して去っていった。残された私は彼女達の背をきつく睨みつけて唇を噛む。周囲は私の様子を遠巻きに見つめ、やがて私がそれらに視線を寄越すと慌てたようにそっぽを向いた。

(まずいことになったかも)

携帯を握り締めた私のこめかみを、冷や汗が伝って落ちた。

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