||屋上での危機





「ん・・・、屋上に来い、か。香奈、ちょっと行って来るね」
「いってらっしゃーい」

笑顔で彼女に別れを告げ、私は屋上への階段を駆け上がった。扉を開けば、すぐに頭上から振ってくる声。仁王だ。

「来たよ」
「おん、待っとった。こっち来んしゃい」

嬉しそうな彼の笑顔に自分も微笑んで、彼のいる場所へとのぼった。彼には昨日もテニスコートで会ったけれど、こうして屋上で会うのはちょっと久しぶりかもしれない。

「なんか久々だね。にお・・・・・・」
「仁王くーん」
「!?」

突然の声と、扉の開く音。声からして女子生徒。仁王に小声で促され、私は慌てたように彼の影に隠れた。仁王のファンクラブの人かもしれない。バレたら色々面倒なのは目に見えていた。もしバレればわざわざ屋上で隠れて会っている意味がない。

「あ、いたいた。・・・あれ?今誰かと話してなかった?」
「なんじゃ、野村か。何の用じゃ」
「あぁ、なんか先生に呼んで来いって言われた。サボりすぎだってさ」
「ほぉか。・・・そういえば、おまんは学級委員長じゃったな」
「そーそー。ったく面倒臭いったらありゃしないよ。で、早く来てくれないと私も困るんだけどな?」
「どこにもいませんでした、って事にして帰ってくれんかの。眠いんじゃよ」
「それ良いね。ついでに私もサボっちゃおうかな」
「・・・・・・」
「冗談だって。なんでそんな怖い顔してんの」

野村、と呼ばれた人はケラケラと笑って、それからバタンという音と共に屋上を去って入った。・・・やばい、心臓が。いつ見つかるかと思って緊張したけれど、なんとかなったようだ。

「芽衣、もうええよ」
「うん・・・。今の人、仁王のクラスの?」
「そうじゃ」
「仲良さそうだね」
「上辺だけな」

仁王は肩を竦め、小さく笑った。それにしても危なかった。まさかここに人が来るだなんて。もうこんな事がなければ良いんだけど。

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