||不変か、変化か
◇
「・・・と、言うわけなんだ」
放課後、部活をしながら屋上での事を香奈に話した。仁王という名前には驚いていたが、告白自体には大して驚いてはいないようだった。
「なるほどねぇ」
感慨深げに呟く。私はそれをじっと見つめ、彼女が口を開くのを待った。
「サボりに行く度楽しそうだったのはそゆ事か」
「え?」
「行く時も帰ってくる時もすごい笑顔なんだもん」
困ったように微笑む香奈だが、その表情はどこか嬉しげだった。
「私は良いと思うよ。ただ、突然過ぎて仁王君の意図がわからないけど」
「そうなんだよね。・・・なんか、謎で」
飛行機雲の話をしたのが恐らく原因なのだろうが、それにしても仁王の気まぐれとはこんなにも酷いものなのだろうか。考えれば考えるほど、深みにはまるようにわからなくなる。
それに、もし付き合うという事となれば、一気にファンクラブに目をつけられるだろう。そのリスクを背負うのは、正直辛い。
「でも仁王君は芽衣の事好きなんじゃないかなぁ」
「なんでわかるの?」
「・・・・・・勘?」
おどけたように香奈が笑った。それに苦笑しつつも、頭の中ではその言葉が何度も反響していた。
『仁王君は芽衣の事が好き』
もしそれが本当だとして、それなら私は? 私自身はどうなんだろう。
でも、もし仁王のことを好きかと言われたなら・・・・・・
「香奈、相談乗ってくれてありがと」
「ん?もう行くの?」
「うん、行かなきゃ。先生には誤魔化しておいてもらえる?」
「わかった。・・・頑張ってね」
小さく香奈に微笑み返し、私は走って屋上へと向かった。部活終了まであと30分ほど。急いでメールを打ち込んだ。
『部活が終わったら、屋上に来て』
パタン、と携帯を閉じる音が、大きく響いた。
[10/28]
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