||憤慨と高鳴り





屋上についた。あの後すぐに走ってきたから、そんなに時間は経っていない。あぁ、次の授業もついでにサボろうか。

「仁王!」

少し荒々しく扉を開けると、給水塔の上に仁王がいるのがわかった。そちらを見れば携帯を両手で握り締めていて、もしかしてメール待ってたのかな、なんて思った。そんな仁王を見つめながら、梯子を上っていく。

「なんでテニス部だって黙ってた!!」
「聞かれんかったし。それに、普通知っとるじゃろ?」
「でも私が知らないって事も仁王は知ってたでしょ!?」
「確かにそうじゃの。ん、俺がテニス部だと問題なんか?」
「大・問・題!ファンクラブ怖いんだよ!どーすんの、メアド交換しちゃったじゃんか!!」
「・・・やっぱりそこか。なら別にえーじゃろ、おまん目立たんし」
「地味で悪かったな」

低く唸るように言えば、仁王が肩をすくめる。そうして一通り騒いでから、はぁ、と溜息をついた。仁王を睨みつけてやるが、対する彼はニヤニヤと笑っている。非常に腹立たしい。

「まぁ、落ち着きんしゃい。バレなきゃええんじゃ」
「そういう問題じゃないっつの!こっちのメアド消すから、そっちも消して!それからもうここには来ないから「ちょ、待ちんしゃい」・・・なに」
「お前さん、さすがにそれは酷いんじゃなか?」

焦ってまくしたてる私を諌めるように、仁王が静かにこちらを見る。少しだけ寂しそうな目が私を射抜くように真っ直ぐに見つめ、こころが、ふら、と揺れた。

「お前さんにあって数日じゃけど」
「・・・・・・」
「俺はお前さんと友達になれたと思っとったが?」
「・・・・・・わ、たしは」
「ん、まぁ、お前さんが嫌なら構わん。メアドも消しちゃる」

それだけ言うと仁王はあっさり視線を外し、何事もなかったかのように寝転がった。その姿にぐ、と喉がなり、なんだか自分が悪いような、彼を傷つけてしまったような気になってくる。

「・・・ごめん」
「構わんゆーとるじゃろ」

彼の微笑みは優しかった。

「メアド、消さないでよね」
「は?」
「・・・これからよろしく」
「・・・、おん」

またも優しく微笑んだ彼に私も少し笑って、彼の傍に腰をおろした。視界に広がる青色は、いつもと変わらず澄んでいた。

[6/28]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -