日向は2人いる。
「あ?お前誰ですかコラ。日向のパクリですかゴルァ」
「おー、本当に似てるなあ!」
「うんうん、日向が2人いるみたいだべー」
「いや、オレも日向ですから!?!」

オレは今、自分よりかなりデカい、そしてかなり抜けている先輩方に囲まれていた。

正直に言おう。オレはビビっている。

だってキャラ濃過ぎなんだよこの部活!
オレが入ってきた瞬間喧嘩打ってきた坊主のヤンキーとか、
この前の怖い主将と天然泣きぼくろの質問責めとか!
満足に話もさせてもらってないし、
何よりツッコミが追いつかねーんだよ!

それにそんな一気に質問されたところでオレは一人しかいないし、日向のパクリってそもそもなんだよ日向だよ畜生。
そりゃ似てるって言われんのはよく言われるし慣れてるけど、ここまで好機の目に晒されるのは流石に怖すぎるだろ!

ほら翔陽だって震えて…ない!?なんで!?
そんな異常なものを見るかのような目で翔陽を見る。
すると翔陽は何かを察したのか、オレに天使のような微笑みを向けながらこう言ってのけたのだ。

「…うん、まぁいつものことだから…」

なんだよそれ知らねえよ!!

影山サンが離れた所から「あの、練習しないんスか…」なんて言っているのを横目で見ると、沈んでいた気分も僅かによくなる気がした。
ざまあみろ、なんて思って笑ってやりたい。

しかし、実際はそうなのだ。
影山サンの行っていることは、悔しいが正しい。とても不本意だが。
お前らバレー部だろオレと翔陽を見比べる前にバレーしろよ。

「あ、それで、日向…じゃなかった、稔の方は入部希望か?」

主将こと澤村大地さんは、軌道修正をして本題をオレに問い掛けた。
流石主将。

「あー……オレ、まだ迷ってて。
とりあえず今日は見学だけでも、と思ったんです」

「そうか、今日は大したことはしないと思うが、ぜひ見て行ってくれ。
そこのベンチな座っているといい。」

「はいっ!」

意外とまともだった大地さんに向かって返事をし、ベンチへ向かおうとくるりと踵を返した時。
後方から先程の泣きぼくろ先輩こと菅原先輩がゆったりと、しかし楽しげに口を開いた。

「あ、稔!飛んでくるボールには気をつけろよー!」

…もうオレは突っ込まないぞ、オレは。

「……うす」

すっかり消沈した心持そのまま、返事をした。
やっぱり情けない声だった。


暫く練習を眺めていて、声出しをする美人マネージャーの顔を見ながらそういえば、と思い出したことだが、マネージャー志望ということを全く言ってなかったことに、今更ながら気付いた。

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