頑固な弟
「おーい稔!学校遅刻するぞー!!」

「おう、わかった今行くー!」

朝のいつもの…いや、少々久々に聞くやりとりを終えて、オレは今日も制服に腕を通した。


「…ところで翔陽さ、最近どうなんだよ、部活」

「めちゃくちゃ楽しい!!中学の時とは全然違えの!なんつーの?こう、ぐわーって!!やっぱ本気って感じ!」

そういってぺろりと舌舐めずりをする翔陽。
かわいい。

そう、あの鬘事件(笑)から数日。
影山サンといがみ合いながらも無事にチームワークを見せつけ、部活に参加できるようになったらしい。
どうやら翔陽達は先輩たちに隠れて朝早くから練習してたらしく、久々にこうして翔陽と一緒に学校に行くことができたのだ。
オレとしては嬉しくて涙がちょちょぎれそうだ。
…影山サンは気に食わないが。

「…そっか、良かったな。
ずっとやりてーって言ってたもんな!
…じゃあ、目指せ全国?」

「いや、おれはもっと…オリンピック行くからな!
あ、稔は?どうなんだよ?」

「あー、オレ?帰宅部だからやり甲斐もクソもねえな」

オレがそう言うと、翔陽は眉を寄せ、口を尖らせた。
…かわいい!!!

「えー…勿体ねー!稔だったらもっといろんなとこいけるだろ!」

「ねーよ。誇れるの体力くらいだからな?
お前ほどの瞬発力も脚力もねえし。」

「んなことねーよ!稔はすげーよ!
おれみたいにあがり症じゃねえし!」

「そこかよ!!」

言った本人は顔を俯かせ、何やら考えているが、翔陽よりも勝ってる所なんて勉強くらいしかないのだ。本当に。
運動面では翔陽に勝てる気はしない。無論、勝とうとも思わないが。

「あ、ならさ!」

うーんうーん、と唸っていた翔陽がばっと顔を上げた。
面白いおもちゃを見つけた子供のような顔をこちらに向けながら。

「バレー部のマネージャーやればいいじゃん!!」

………。


「…はあ!?」

幾ら天使の願いでもそれはちょっと。
だってマネージャーって美人の女の子がやるイメージあるじゃん!
ただでさえあんな男臭いバレー部に野郎増やしてどうすんだよ!!

しかし言い出した当の本人は止まらない。
一度言い出したら聞かないタイプの人間なのだ、翔陽は。

「いーじゃん!!稔!お前結構器用だろ!」

「嫌に決まってんだろ!」

「なんでだよ!とりあえず今日の放課後、体育館な!!ぜってー来いよ!!」

そう言って走り出してしまう。
笑顔超可愛い…じゃなくて!

「え、おい!何勝手に決めちゃってんの!?」

ぽつん、と1人残されたオレ。
頭を頭を掻いて、なんなんだよ…とごちる。

このままここに居ても学校に遅刻するだけだ。
はあ、と溜息をつきながらも、オレも前を走るオレンジを追いかけるために地を蹴った。

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