獰猛な翔陽クラスタ
その後、澤村さんは教頭と共に何処かへ行って、話し込んだ後、神妙な面持ちで帰ってきた。
その間、とてもじゃねえけど喋れる空気なんかじゃなかったことは想像に容易いだろう。

「日向。影山。」

「「ウス」」

おお、綺麗に揃ってら。
オレも一応日向だけど、多分オレのことじゃないだろうから返事しなくていいよな?
そんな馬鹿なことを考えていた時、どうやら翔陽と黒髪の男、先程影山と呼ばれていた奴は喧嘩を始めたらしく。

「パクんなよ!!」
「お前がパクってんだろ!大体お前何が成長しただよ!まるで変わってねえし、期待して損した。」
「なにおうっ…!!」

実にくだらない。が。

「ちょっと影山サン。」
「あぁ?」

ちょっと怖えよガン飛ばさないでくださいって。

んん?この目つき、なんか…見たことあるような…
…あ。

「…ああ、今思い出した。
あんた"コート上の王様"か。」

眉間にさらに皺が寄せられたところを見ると応えは肯定というサインなんだろう。

「なんっ…「不名誉だっただろうな。オレ、見たよ。あの試合。
翔陽はバカだから見に行かなかったみたいだけど、凄かったね。いろんな意味でさ。
ああ、あんたの話は聞いてたよ。翔陽、あんたに泣かされて帰ってきたんだ。
でもあれは翔陽の負けだ。それは仕方ない。
でも、努力した、それからずっと。1人じゃ勝てないって。
…翔陽はな、強いよ。
…"あれから"他人にトスを上げることを怖がってるあんたより、ずっとな。
そうだろ、影山飛雄サン?
…どっちの方が期待外れだろうな?」


反論なんか、させてやらない。


ぞくりと影山は身震いをして、唇を噛み締めていた。


「ちょ、ちょっと稔…!おれもう気にしてないし、力不足なのも本当だから…な?ほら、落ち着けよ!」

しかし右隣で翔陽が焦ったような顔で腕を掴んで止めてくるもんだから、もうオレの胸の高鳴りがフィーバーする。
翔陽にそんなこと言われたら落ち着くしかないだろ…!!
涙目のオプション付きだぞ…!?
鼻の下に何やら暖かいものが伝ってる気がするがまぁ気のせいだろう。

「あああ…!もう翔陽可愛すぎ…!!」

抱きしめてしまったオレはきっと悪くない。

「あー…とりあえず暑苦しいから離れて稔」

「そんな冷たい翔陽も好きっ!!」

「……それで澤村さん!なんですか?こいつのことは気にしなくていいんで話お願いします。」


話逸らされたけどオレはめげない。オレ強い子だから…!!

そしてどうやら、喧嘩してしまった翔陽と影山さんはチームに迷惑をかける奴は要らない、と主将の澤村さんに言われ、
「互いがチームメイトだって自覚するまで、部活には一切参加させない」

との判決を下されたようだ。


まぁきっと、バレー馬鹿の翔陽と…影山サンの事だから、大丈夫なんだろうな。
不思議とそう感じていた。


とりあえず影山サン、今日は翔陽に免じて許してやるよ畜生!!

ーーーーーー

「ところで日向、乱入してきたあの人は誰なんだ?」

「ああ…あいつはおれの双子の兄、日向稔ですよ」

「!?!?」

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