デジタルの数字が切り替わったとこを見計らって、ソファーベッドでまどろむ羊くんに、そっとキスをした。
くちびるはまだ恥ずかしいから、透き通るほっぺたに。
明日は1日ふたりで過ごそうね、なんて笑ったのは昨日の夕方。明日はもう来ちゃったよ、羊くん。
「…お誕生日、おめでとう」
深夜零時、静かな夜だ。僅かに降った雪たちはもう溶けかけていたから、きっと朝にはつるつるに凍っているだろう。こんなに寒いんだもの。そしたら外は危ないね。
おひさまが上っても、今日は家の中で過ごそうか。羊くんと逢えない間、寂しくないと言い聞かせ、必死でみがいた腕をふるって、ふたりだけのこの部屋で。いっしょに。
長いまつげがぴくりと揺れた。ゆらりゆらゆら起き上がって、ふぁ…。ぐしぐし羊くんが瞼をこする。
「…ぼく、ねてた?」
せっかく君といっしょにいるのに、と言うから、次のセリフの前に、先駆けて曖昧に口を出した。だって、歳ひとつ重ねて最初に私に向けられる言葉が謝罪なんて、イヤだもの。
曖昧の返答には、不思議と曖昧な反応が返ってきた。うん?とか、んー、とか、そんな感じの。ああ、羊くんも察したみたい。
「誕生日の日に初めて目に入るのが君なんて、嬉しいな」
「…もう。羊くんったら」
「シアワセだよ。夢みたい」
「ふふっ。夢じゃないよ、羊くん。…私もシアワセだよ」
羊くんって、すぐ側であなたの名前を呼べることがシアワセ。あなたの赤毛に、手を伸ばせば届くことがシアワセ。あなたが私を見て微笑んでくれることが、シアワセだと言ってくれることがシアワセ。シアワセだと実感できるこの瞬間がシアワセ。大好き、羊くん。
首に腕をまわして後ろで絡めて、ぎゅっと抱きついた。
耳元で気持ちを囁けば、楽しそうな、くすくすという笑い声。
「ねぇ、それなら、さっきのキスも夢じゃないの?」
「…き、す?」
「僕のほっぺに。君からされた、夢を見たんだと思った」
…でも、夢じゃないんでしょう?もう一回、今度はこっちにしてよ。って、今度は羊くんが私の耳に、息を吹き掛けた。
それから唇で私のを掠めて、だめ押しににんまり。
「ね?」
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(100113)
羊くんハピバ!
例にもれず、1日遅れでごめんなさいっ。