「おはようごっ………先生、顔色悪いですよ」

 今日のお昼は生徒会室で会議があるから、気持ち早めに登校して、掃除を済ませてしまおうと保健室を訪ねてみたけれど。
 先生は寝るでもなくベッドに腰掛けて、うつらうつら。最初は座ったまま眠ってしまったのかと思ったが、ゆっくり頭が上がってこっちを見たものだから、ぎくっとした。目が虚ろだ。据わっている。

「あー…ああ、昨日の仕事が遅くまで続いて…で、滅入った」

 途中でふぁ…と漏らしたあくびさえも中途半端で、説明は不鮮明。
 それほどの疲れらしい。

「…よくわかりませんが、おつかれさまです」
「眠い…」
「寝てていいですよ。掃除しちゃうんで」

 たまには甘やかしてもいいかな、と気を利かせてみたのだけれど、先生はいやと呟いた。「十五分から職員会議が…」あるらしい。
 今回は先生たちは朝に、それが回って昼に生徒会で議題が上がるのだろう。

「十分前に起こしますよ」
「そ…か?」
「だから少し休んでください」
「ああ」

 安心したのか、眠気が増したのか、いつもよりも柔らかい笑顔を向けてきた。
 まともに見てしまって、トクン、さっきとは異なる響きで胸が鳴った。ドキドキ、音色が変わっても鳴り続ける。心臓に悪い日だ。

「なら、目覚ましは手の届く位置にないとな」
「え?」

 脱いでそのままベッドに転がると思われた先生は、再度サンダルを引っ掻ける。

「え?え?」
「ちゃんと起こせよ」

 制服の袖を引かれた。バランスを崩した私を抱えて、今度こそベッドに倒れこんだ先生の瞼は、とっくに落ちている。

「せ、センセ!先生!」
「うるさい…ぞ…」



どうせなら緩やかな束縛で
(30分ももちません…!)






(091015)

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