「龍之介…?」
「あ、ああ」
「ふふ、なぁに? 緊張してるの?」
「あああたりまえだ!」
「…本当だ。心臓、すごい音してるよ」
「む……お前は違うのか?」
「…してる。すっごくドキドキしてる。龍之介と両想いになれた時から、いつだって」
「そんな、の、俺だって…」
「うん、知ってる」
「んな!?」
「あ。でも、いっしょにいると安心するよ? 矛盾してるみたいだけど、龍之介に対するドキドキは心地いいんだよね」
「っ、ありがとう…?」
「なんで疑問系? ま、いいけど。…私からも」
「む?」
「いつもありがとう。これからもよろしくね、旦那さまっ」
「……っ、」
「あれ? 顔真っ赤。ふふっ、大好きだよ龍之介」
「…ああ。俺も好きだ。愛してる。それから、」
「それから?」
「お前を大切にしたい。お前の笑顔が好きだ。一生懸命なところも、頑固なところも、全部。たぶん初めて会った日から、俺はお前に惹かれていた」
「龍之介…」
「…最期まで、俺についてきてくれるか?」
「っ、はい…!」
「……、」
「ど、どうしたの?」
「なんか、疑ってたわけじゃないが」
「うん」
「お前がすごくいい顔で笑うから、そのっ」
「?」
「……少し早いけど、キス、してもいいか?」
「…へ?」


 ちゃんと返事をする前に彼の顔が迫ってきて、躊躇なく唇が重なった。何度も繰り返してきた私と彼の甘く稚拙な情事。
 すぐに照れるくせに、ここぞという時は強引なのだ。

 あ、いけない、もうすぐ式が始まるというのに、メイクが落ちてしまう。
 そんな思惑を頭の済みに追いやって、私はタイムリミットの迫る人生一度の時間に、深く酔いしれていった。



華燭の典に桃色を添えて






(091025)

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