「うそ…でしょ?」
嘘じゃないことはわかってる。だってそう、正式に書いてあるんだもの。
いちじゅうひゃく…。下から数え直してみても、やっぱり0の数は変わらなくて、しかも一番目と二番目に置かれた数字も数字で。
思っていた額との差に、私は愕然とした。
「…う、うわぁ」
歪んだ顔も正せないまま、再び指で辿って数えてみても、やはり無情に印字された数字列は変わらない。昨日、母から通帳へ振り込まれていたのとほぼ同額。 高すぎる。家賃ってこんなにするものなの?
おっとり手を組んで、「素敵なアパートねぇ」と悦に入っていた母の顔が思い出された。 「ならここにするか」母激ラブな父が反対するはずもなく、私の新居は本人の了解を得ぬままに決まったのだが。入ってから知った、私の立場って…
「冗談じゃないよ…!」
少なくとも、両親よりは平均的な金銭感覚を備えて育った自覚はある。これは逆ベクトルに破格だ。 しかし気づくのが遅かった。大学への住所登録も済ませ、引っ越しも済ませ、必要な買い物も一揃え済ませた後だ。今さら転居とか、ない。
「………」
こんな時はどうすればいいんだっけ。 困った時。 悩んでる時。 親に頼れない時。
「……あ、そうだ!」
記憶の引き出しを開けて開けて、閃いた。一昨日繋げたばかりの光回線。さっそく使うべき時がきたようだ。
床暖房導入済のフローリングに手をついて立ち上がる。
「こんな時こそ、こども電話相談室があるじゃない」
☆喜劇のヒロイン (100128)
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