本編 | ナノ
リング編
はぁ、とため息をついてから綱吉は脳裏に不機嫌そうな表情を浮かべる夢月を思い浮かべた。
父親が帰ってきてから夢月は不機嫌な表情を浮かべることが多くなった。
…確かに、わからなくもないが。
再度ため息をついてから綱吉は少し口角を上げた。
不機嫌な顔をするようになった。同時に、あの儚い空気をまとうことが少なくなった。
確かに夢月が不機嫌そうな顔をするのは少し怖いが、同時に被っていた猫を脱いでくれた、距離が縮まった、という気分がして何だか嬉しいのだ。
笑みを浮かべた綱吉は胸元に下がったリングを見て、眉をひそめた。
こんなものいらない、と言いたげに。
綱吉は目の前でリングを嬉しそうに持つ獄寺と山本に叫んだ。
「つーかなんで!?なんで獄寺君と山本にまで!?」
「選ばれたからだぞ」
その綱吉の叫びに答えながらリボーンとディーノが現れる。
綱吉は二人の姿を認めて目を見開いた。
「ディーノさん!リボーンも!」
リボーンは病院のカウンターに腰かけ、足を組みながら口を開く。
「ボンゴレリングは全部で八つあるんだそして八人のファミリーが集まって初めて意味を持つんだからな。」
「!?」
それは綱吉が今、一番知りたい事であり、知りたくない事であった。
「お前以外の七つのリングは次期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するにふさわしい七名に届けられたぞ」
「なぁ!?俺以外にも指輪配られたのー!?」
「そうだぞ」
リボーンの言葉に、綱吉は少し顔をゆがめた。
自分のせいで…自分を守護するために他人を巻き込んでしまった、と。
そんな綱吉の心情を知らず、ディーノは腕を組みながら得意げに説明を始める。
「ボンゴレの伝統だからな
ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった七人がボンゴレファミリーである証として後世に残したものなんだ。
そしてファミリーは代々必ず七人の中心メンバーが七つのリングを受け継ぐ掟なんだ。」
ディーノの言葉を引き継ぐようにしてリボーンは獄寺と山本が持つリングを指差す
「獄寺のリングは「嵐のリング」山本のリングは「雨のリング」だな」
「そういやー違うな」
互いの持つリングを見比べる山本と獄寺を見ながら綱吉は顔をしかめた。
「なんだ?嵐とか雨とか・・・天気予報?」
「初代ボンゴレメンバーは個性豊かなメンバーでな。その特徴がリングに刻まれているんだ。」
そしてリボーンは綱吉の首に下がったリングを指差す。
「初代ボスはすべてに染まりつつすべてを飲みこみ抱擁する大空のようだったと言われているゆえにリングは【大空のリング】だ」
顔を青ざめさせる綱吉に気づかないふりをして、リボーンは言葉を紡ぎ続ける。
「そして守護者となる部下たちは大空を染め上げる天候になぞらえているんだぞ」
「すべてを洗い流す恵みの雨【雨のリング】
荒々しく吹き荒れる疾風【嵐のリング】
なにものにもとらわれず我が道をいく浮雲【雲のリング】
明るく大空を照らす日輪【晴れのリング】
実態のつかめぬ幻影【霧のリング】
激しい一撃を秘めた雷電【雷のリング】」
そこまで話し、リボーンは一旦はなしを区切り息を吸い込んだ。
「そして、すべてを魅せ、すべてを壊す【夢のリング】。別名【闇のリング】だぞ。夢のリングは初代でも該当者がいなかったんだぞ。」
そこまで聞いて、綱吉は叫んだ。
「とにかく俺はいらないから!!」
自分の平凡に、ひびが入る音がした。
リングの意味
(夢のリングって誰だ?…夢月?まさか…な)(ふーんこれってそういう意味があったんだぁ)
[*前] [次*]