きちんとききかんりをしましょう 3 | ナノ
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きちんとききかんりをしましょう さん


俺は今、いわゆる絶体絶命のピンチにいる。
「鬼ごっこは終わりだぜ〜?」「そっ捕まったんだから罰ゲームだよなぁ」
にやにや笑う相手は全員で3人。どいつも平均的な俺と同じかそれ以上の体格で、ごく平均的な体格の俺と、華奢な前田君では普通にやっても勝負は見えてる。
下がれる限界まで下がった俺達をじわじわ追い詰めるように不良たちは扉を閉めて入口の方からゆっくりと近づいて来る。

「…前田君、君実は武道の達人とか言うギャップは…」
「あるわけないだろっそっちこそ平凡な容姿だけど実は怪力とかないのっ」
冷や汗を感じつつ小声で聞くと前田君はそう返してくる。
俺はもう一方の出口が備品の隙間から見えていることを確認する。
備品類は雑然と積み上げられ、周囲に武器として使えそうなものは無いこともないが、使ってしまって相手も使いだすと圧倒的にこちらが不利だ。

「俺可愛子ちゃんがいいなあ」「全員そうにきまってんだろ」
その声にびく、と前田君が震える。俺もその下品な視線にしらず眉が寄る。
「そっちの平凡はボコるだけでよくね?」「でもこいつ火向のなんだろ?見せしめに犯してやろうぜ。顔見なけりゃいけんだろ」
俺は暴力に加えそちらもありのフルコースらしい。
これは本格的に危険だ。何とかしなければ。
俺は必死に考える。

「大体河辺を倒したことで調子に乗ってんだよな、火向」
「そうそう、どうせ一人でやったなんてデマだろ。一人ぐらいなら俺らも余裕だしな」
どうやらこいつらは噂を信じていないらしい。おそらく河辺が恐ろしくて今まではおとなしくしていたが、千秋によりその河辺が倒されたと知り、千秋を倒して今度は自分がトップになろうって考えか。
どっちをヤルかでもめている様子を確認して、前田君に話しかける。

「前田君さ、確か俺より足速かったよね」
「え?う、うん」
この前の体育で計測したタイムからいうと確実なはずだ。俺はこれしかない、と考えた案を小声で伝える。
「あそこに出口あるから、そこから逃げて誰か呼んで来てくれるか?俺があいつらの気をひくからその隙に走ってさ」
このままいくと確実に二人とも最悪な事態になる。
幸い6時間目が終了してそんなに時間が経ってないし、近くの校舎に誰かいる確率は高い。二人とも危険な目にあうよりは一方が助けを呼びに走る方がマシなはずだ。

「で、でもそれじゃ岡崎が…!」
「一応護身術は教えてもらったし、俺足が遅いんだよね、残念なことに」
「だ、だからって」
「このまま二人ともここにいるよりはマシだろ?頼む」
しばらく逡巡していたが、俺がプロに護身術教えてもらったから、というとようやく頷いてくれた。心配そうな前田君に俺は3秒数えたらいってね、と気が変わる前に言ってしまう。
実はプロには君は絶対SPには慣れないね、と言わしめてしまった俺なのだが、そのことは伏せておこう。
早くしないと俺自身恐怖で前田君を逃がせなくなってしまう。

じり、と出来る限り扉に前田君が近づくのを待ってから、俺は深呼吸する。
覚悟を決めてからカウントを小声で始める。
「さん…に…」いち、と言うと同時に前田君は扉から飛び出していく。
その音に気付いた不良たちが慌てて追いかけようとするところに俺はサッカーボールを投げつけて注意を引く。
ぼこん、と音を立てて一人に命中し、「何しやがる!!」という怒声とともに3人が振り返る。

「どうせ今まで河辺が怖くて何も出来なかったけど、千秋なら簡単だと思ったからこんなことしてんだろ」
はん、と俺は馬鹿にしているように言う。内心はもうガクブルだけど。
「…んだと!?」「てめえぼこぼこにしてやらあっ!!」
図星なのかカッとした3人は勢いよく向かってくる。
さすがに何発かはくらう覚悟は決めたが、実際に来られると本気で怖い。
俺はしゃがんで一発目を避け、そのまま出口に向かおうと低い姿勢で走り出すがー
「ぐあっ!」
さすがに喧嘩慣れした相手はすぐに体勢を変えて横から足を蹴られる。
体勢を崩しうずくまってしまった俺は速攻で捕まってしまう。

「舐めたこと言ってんじゃねえ!!」
だん、と地面にあおむけに押しつけられる。振りあげられた拳に殴られる!と身を固くした俺に、不良の一人が待て、と声をかける。
「どうせぼろぼろにすんならまずは楽しもうぜ。青痣だらけだと萎えんだろ」
「まあ溜まってるしな、こいつでもいいか」
「けっさっきのお礼も含めて3人で可愛がってやるよ」
口々に言われるセリフに俺は血の気が引く。
俺は平凡だしどう考えてもボコる→ヤル、の順だと思ってたから、殴られることしか考えてなかった。

顔色の変った俺に気付いたのか、にやあと笑ってネクタイを引き抜かれる。
「や、やめろ…!!」
「はっ、お前の意思なんて関係ないね!」
二人に両腕を抑えつけられ、俺の腹に馬乗りになった一人がシャツに手を伸ばす。
「ーー!!」
「はははっ結構きれいな身体してんじゃん」
ブチブチっとボタンを引きちぎられてシャツが全開になり、下に着ていたTシャツも捲りあげられ上半身が丸見えになる。
舐めるような視線に鳥肌が立つ。
叫ばれると面倒だと思ったのか、一人が口に着ていたTシャツをつっこんだうえネクタイで固定する。
くそっ大声で叫んでやろうと思ってたのに!

「下も先に脱がしちまえよ。そしたら逃げらんねえだろ」
「んじゃそうすっか」
ガチャガチャとベルトに手をかけられて必死に抵抗するが馬乗りになられているうえ両手を押さえられていてはろくに抵抗も出来ない。
更に最悪なことに両手も誰かのネクタイで縛られてしまう。
前田君早く誰か呼んで来てくれっ!!俺はこんな体験で新境地に入りたくなんてない!!
神様仏様ご先祖様っ!!この際悪魔でもなんでもいいからとにかく誰か助けてくれっ!!

俺の心の叫びもむなしく、とうとうベルトがズボンから引き抜かれる。
ぐい、とズボンを太もものあたりにまで引き下げられて下着が見えてしまう。
「脚も結構綺麗じゃん」
「ちょっと俺こいつの身体好みかも」
全っ然嬉しくないわあああ!!
神も仏も役立たずめがっ!!このままこいつらにヤられたら一生呪ってやるっ!!

まさに万事休すの俺は既に半分諦めモード。
恐怖を紛らわせるためにも俺は、ごめん父さん母さん俺は未知の世界に突入します…トラウマにならないことを祈ってください…と遠い目で考えていた。
が、もちろんこうなりゃ捨て身の攻撃をしてやる。脚からどいたら急所を再起不能になる勢いで蹴りつけてやる、と俺は固く決意した。

下着に手がかかり、俺が心の中で考えうる限りの悪態をついた瞬間、微かな振動を俺は感じた。ほぼ同時に足音が聞こえてくる。
「ー何…」
急速に近づくそれに俺に馬乗りしている不良が顔を巡らせた時、俺達の真横を扉が吹っ飛んでいく。
かなりの勢いで飛んだそれは凄い音を立てて向かいの壁にぶつかる。
突然の出来事に固まる俺と不良たち。

「ー和希っ!!」

久しく聞いていなかった声。
弾かれるように声のもとへと視線を移した俺の眼に飛び込んできたのは、扉を蹴破った後の姿勢のまま荒い息をつき、焦った表情をしている千秋だった。




101009
(その声と姿に、心臓が音をたてた)

王道的展開(笑)
次は暴力表現の予定
あと皆様は当然ご存じでしょうが、無理やりは犯罪ですので実際にしてはいけません