いがいときずつきやすいいきものです | ナノ
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いがいときずつきやすいいきものです いち


「火向様っ!僕と組みましょう!ねっ」
「あ、ああ…」
ぐいぐいと腕に抱きつくようにして千秋をひっぱって行く前田君。千秋はこちらをちらちら見ながらもおとなしく前田君の後について行く。
「大山、俺と組もう」
「ああ、けどすっげーな前田。まあこれから頑張るって宣言してたけどさあ…」
「ま、千秋も前田君のこと嫌いじゃないし、これからどうなるかは前田君の頑張り次第じゃないか?」
「…岡崎、お前さあ…」
「何?あ、ほらパスするぞ」
ばす、とバスケットボールを大山とパスしあいながら俺は先日の前田君の告白劇を思い出していた。

あの誘拐騒ぎの後の告白を聞き、固まった俺達の中、いち早く回復したのは千秋だった。
「え、ええと…前田?こんな目にあって気が動転したのか?もう大丈夫だぞ、とりあえず保健室にでも…」
「僕は本気です!!火向様、真剣な気持ちなんです!」
じっと強い瞳で見つめそう言う前田君に、本気だと理解した千秋は困った顔をする。
「火向様は僕のことを、恋愛的な意味で好きになってくれますか!?」
「ま、待てこのオカマ男っ!火向さんにはな…」
「あんた達は黙ってて!!」
不良さん達もハッとしたように何か口を挟もうとしたのを、前田君が鋭い声で遮る。
「これは、僕と火向様の問題だっ!!あんた達に口出しする権利は無い!!」
そのいつもと違う気迫のこもった声に、不良さん達も口をつぐむ。

再びしん、とした沈黙が落ちる。その沈黙を破ったのも、さっきと同じく千秋だった。
「前田…悪いけど、俺…」
「火向様っ!」
ぴっと前田君は指を一本立てて千秋の眼の前に示す。
「返事は1か月待って下さい。僕だって今のままだと良い返事を貰えないなんて分かってます。だからこの1カ月、僕は好きになって貰えるように頑張ります。その後に返事をしてください」
「…前田…」
「…火向様はこういう…恋愛について他人を考えられたことありませんよね、だから考えてから返事をして欲しいんです」
本気だから、火向様にも真剣に考えてから返事して欲しいんです、と言い切る前田君に、可愛い容姿をしていても男の子なんだ、と感じる。この前も思ったけれど、前田君は想像するよりも男らしい一面を持っている。
千秋は前田君の真剣な表情をじっと見てから、「…分かった、俺も真剣に考える」と返事をした。

かくして前田君の猛アピールが始まった。
一緒に過ごす時間を増やすことで自分のことをよく知ってほしい、と授業でグループを作る際は必ず千秋と組むようにしているし、休み時間も話しかけたりしている。
不良さん達もきっぱりと宣言されたためか、千秋に話しかけはしても前田君の邪魔をすることはしない。俺と大山は言うまでもなく邪魔などしない。
とにかく頑張っている前田君は、今も体育で2人組で練習となったので、千秋と組んでいる。

「でもさあ、もう1週間無いだろ?期限まで」
「そうだな、あと3日か」
「…火向も前よりは対応が普通になったとはいえ、まだ好きって感じまでいってないように見えるしな…」「…それは千秋の問題だから、俺達には何とも言えないだろ」
「でもなあ…」
大山が何か言いかけたところで集合するように号令がかかったので、俺はボールを持って大山と一緒に教師の方へ向かい始めた。

他のクラスメイトに話しかけられた俺は、「…火向は前田といても、岡崎が傍にいないと岡崎ばっか気にしてるもんな…」という大山の呟きに気づくことは無かった。




101005

今回は前田君が重要になってくる…予定ですが、上手く書けるか心配です…(汗)