なつくとたのもしいそんざいです 2 | ナノ
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なつくとたのもしいそんざいです に


あれから何事もなく過ぎていた。
前田君もあれ以降も変わらず千秋の傍にいて不良たちと元気に言い合っていたから、俺もすっかり忘れてしまっていた。
そういうタイミングで事件は起こった。

「あれ、今日はあのオカマいないんすね」
「え?」
昼になり例の会議室で食べているとぽつりと言われたセリフに、俺はあたりを見回す。確かに姿が見当たらない。不良さん達は人数がいるし単体でも騒がしいので気付かなかった。
「あれ、前田途中までいたよな?」
大山も箸を止めてそう言う。確かに教室を出る時はいたはずだ。

「あのオカマなら、途中で3年に呼びとめられてましたよ」
俺最後に歩いてたから、ちょうど追い抜かしたんで覚えてますもん、と不良の一人が言った。
「3年?」
俺はその言葉に何か引っかかりを感じた。が、思い出せない。
「にしても遅くないか?結構たつよな?」
「そのまま3年と食べてるんじゃないすか?あいつ結構知り合い多いみたいじゃないすか」
確かに前田君は上の学園の人ともよく話をしている。
話をするついでに一緒に食事をするから今日は一緒に食べれない、と言ってくることもあったことから、多分今回もそうなんだろう、と結論付け俺達は食事を再開した。
何か俺は気になっていたのだが、上手く説明できず結局はそのままとなった。

明らかに様子がおかしいと気付いたのは、6時間目が始まっても前田君が帰ってこなかったからだった。
5時間目だけなら、遅刻しそうになってサボったのか、とも思えるが、2時間連続でサボるとは、意外にも真面目だった前田君では考えられない。
俺と千秋、大山は6時間目が終わるなり教室を出て、前田君の携帯に電話をかけた。
しかし呼び出し音が鳴るばかりで、一向に出る気配が無い。

「これはちょっとヤバい事態かもな…」
携帯を切った大山が眉を寄せて苦々しげにそう言う。
「とにかく最後にどこで見たのか、聞きに行こう」
千秋がそう言ってFクラス棟へ向かう。俺と大山もそれに続いた。
「場所ですか?ええっと…確か中庭近くの階段らへんだったと思います」
HRであるはずの時間だが、彼らのクラスは教師の姿は無かった。
なんでも朝に一応出席とHRを行い、以降は授業に参加するものは指定の教室に移動するらしい。ということで教室は不良のものとなっていた。

「どこの中庭か覚えてるか?」
「ええと…確か4面とも囲まれてたかな」
「一緒だった人に見覚えは?」
「さあ…でもオカマ友達っぽかったすよ」
「チワワな感じか…前田の知り合いから絞り込むのは難しいか…」
大山が渋い顔で呟く横で、俺はまた引っかかりを感じた。
チワワな3年…チワワ…3年…ああ!!
「あのときの!」

いきなり大声を出した俺に千秋も大山も注目する。
「俺その人見たことあるかも!この前前田君に何か文句言ってた!」
「どこで見た?」
「ああっと…校舎裏!確か倉庫あるほうの!」
「倉庫…閉じ込められてるのかも知れないな、とにかく行ってみよう!」
どうして今まで思い出さなかったんだろう!警告してたじゃないか!
あの時千秋にも伝えておくべきだったのか!?
俺は倉庫まで必死に走りながらそんなことを考えていた。

倉庫には鍵がかかっていたが、古いタイプの錆ついた南京錠で、不良さん達がどこからか持ってきた鉄パイプにより破壊された。
鉄パイプについて普段なら突っ込みを入れているが、今は前田君を探すのが先だ。
俺達は一気に扉を開いて中を調べた。
すると前田君は倉庫の隅に両手両足を縛られ、猿轡をされた状態で見つかった。
さすがに疲労してはいたが、目立った怪我は見当たらなかった。

「大丈夫か?」
布を解かれ自由になった前田君に千秋が心配そうに声をかける。
「は、はい…ありがとう、ございます…」
「誰にこんな酷いことされたんだ?」
俺が一発殴ってやる、と千秋が眉を寄せて言う。
「え、でも…どうして…」
「だって前田は友達だからな」
にこ、と笑う千秋に前田君は唇をかみしめて下を向く。

その様子に「どこか痛いのか?」と千秋が声をかけるが、前田君は反応しない。
俺と大山もどうするか、と顔を見合せた時に、ようやく前田君は声を発する。
「…です」
「え?どうした?」
千秋が聞き返した途端、バッと顔をあげて前田君は真っ赤な顔でキッと眼に力を込めて千秋を見つめて口を開く。
「僕は火向様のことが好きなんですっ!!友達じゃなく、恋人になりたいんですっ!!!」

その爆弾発言は倉庫にいた全員に聞こえた。視線が彼に集中する。
真っ赤な顔で瞳を潤ませ、真剣な表情の前田君に、これが本気の告白であると知る。
俺達はぽかん、と間抜け面のまましばらく誰も動くことが出来なかった。




101004

とうとう前田君が告白しちゃいました!
次も彼には頑張ってもらいたい