あまやかしすぎはいけません 3 | ナノ
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あまやかしすぎはいけません さん


翌日からは前田君もなにかと千秋の世話をしてくれるようになった。
飲み物を用意したり、移動教室の際に荷物を持ったりという些細なことだが、前田君は3人組と競うようにして世話をしている。
3人組はFクラスで違うクラスのはずだが、Fクラス自体が出席はあまり重視しないそうなので気にしないことにした。教師ももう諦めたのか、3人組がBクラスで授業を受けていても注意すらしない。
今も前田君と3人組は千秋の荷物を奪い合いながら実験教室へと向かっている。
俺と大山は奪い合いのために遅い千秋達を置いて先に教室へ行くことにした。

「そういやもうFクラスの謹慎解けるんじゃないか?」
大山がそう言うのでそういえばもうあれから1週間か、と思う。
「逆恨みされてたりしてな、岡崎」
「やめろよ、実際にありえそうで怖…」
角を曲がったところで俺は言葉が途切れてしまう。
そこには話題にしていたFクラスの生徒がいた。しかもあの時ぼこぼこにされた人達が。まだ治りきらないのか、包帯やガーゼを付けている人も多い。
「…」
嫌な沈黙が流れる。もし大山の言った通りだとしたら最悪だ。
千秋のいない今、俺に残された道は一つ。ぼこぼこにされることだ。

最悪の事態を想定して青くなる俺と大山を不良たちはしばらく黙って見ていたが、先に動いたのは不良たちの方だった。
「…あの、あんたが岡崎さん?」
まとめ役っぽい不良が一歩前に出て大山に向かって聞く。そういえばこの人あの時も河辺の隣にいたし、副リーダー的な役割なのかもしれない。
大山はその問いに必死に首を横に振り、俺を指さす。
おい、大山!友達なら黙って身代わりになれよ!
ごめん!無理!友達でもそれとこれとは別問題だ!安心しろいざという時は救急車呼んでやるから!
おいいいい!!
という視線での会話を瞬時に交わした俺と大山。
その間に副リーダーさんは俺の眼の前に来る。

「岡崎さん、話がある」
「な、なんでしょう?」
声がちょっと上ずってるのは見逃してくれ。俺はごく普通の精神の持ち主でこんな事態には慣れてないんだ!
「この前のことなんだが…」
ひいいよくもやりやがったなごるぁ→ぼっこぼこ、みたいな展開か!?
恐怖に身を固くしていた俺の耳に前田君と3人組の言い合う声が聞こえる。どうやら階段を使ったらしく、横にある階段の踊り場から姿が見えた。

千秋は俺と眼の前にいる副リーダーさんを見た途端、残りの階段を駆け上がり俺と彼の間に立つ。
「…この前の奴らだな、何しに来た」
威嚇するように後ろの不良たちにも睨みを利かせる千秋。
ちょっと猛獣チックな目つきになってるけど許す!よく来てくれた千秋!
「…火向さん」
副リーダーさんは千秋をまっすぐ見た後、驚くべき行動に出た。

「この前のあれで思いあがってたことを思い知りました!俺たち全員を火向さんのグループに入れてください!!」
がばっと頭を下げた副リーダーさんに続き後ろの不良たちも頭を下げる。
驚く俺達を尻目に副リーダーさんは話を続ける。
「河辺さんも火向さんさえ良ければ一番下っ端でもいいんで入れてほしいと言ってました!お願いします!」
これ、3人組の時と同じじゃないか?
なんで不良さんは千秋にぼこぼこにされたら尊敬しちゃうんだよ!?
頭打っておかしくなっちゃたのか!?

「ええと…とりあえず頭あげろよ。俺や和希に復讐するつもりとかは無いんだな?」
「滅相もない!火向さんや岡崎さんに手出す奴は俺達が始末します!!」
なんでそこに俺の名前が出てくる?俺にまでその尊敬してます的な眼を向けないでくれ!!
「だったらもういいよ。俺、グループとか持ってないし、普通にと、友達でいいよ」
なんでそこで照れる千秋ぃ!?
「分かりました!これからは陰ながらもお二人を支えていきたいと思います!」
だからなんでおふたり!?俺と千秋を交互に見るな!

なんだかんだで次の授業までもう時間が無いことに大山が気付き、とりあえずその場はお開きになり俺達は実験教室へ急いだ。
結局その日以降不良たちがことあるごとに千秋と俺のクラスに顔を出すようになってしまった。
大山は「ぼこられるより百倍マシだ」と受け入れているが、このことにより俺の不良=実はM説がかなり有力になったことだけは間違いない。




100930
また、よんまで続いてしまった…