あまやかしすぎはいけません 2 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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あまやかしすぎはいけません に


今日から通常通り登校となる。二人分の鞄を忘れ物が無いかチェックしていたとき玄関の方からインターホンの音が聞こえ、俺は扉を開けた。
そこには大山と3人組が立っていた。
「おはよ、もう用意できたか?あとこいつらも来ちまった」
「おはようございます!」「俺らもご一緒させて下さい!」
「おはよ、別に同じ謹慎仲間だしいいよ。もうすぐだからちょっと待ってくれ大山もおまえらも」
大山と3人組を中に入れてから俺は「千秋」と呼ぶ。

「あ、大山達おはよ。和希あったよ」
千秋はネクタイを持って部屋から出てきた。こいつは朝着替えようとした時にネクタイを見つけられず、今まで部屋を探していたのだ。
「ちゃんと分かるとこに置いとけって言ってるだろ」
鞄を玄関まで運んでから千秋に向き直る。
「ほら、貸せ」
千秋からネクタイを受け取り、ん、と身体をかがめる千秋の首元に手を伸ばす。
しゅ、と音を立ててネクタイをつけてやる。かがまないと俺が背伸びしなきゃいけないのは千秋が大きいからで俺が決して小さいからではない!

きちんと形を整えてやってからさあ行くか、と大山達の方を向くと、こちらを凝視していた。3人組の眼が異様にキラキラして、若干顔が赤い。
「…それ、毎朝やってんの…?」
「え、ああ。怪我する前はどうしても形が悪い時だけだったけど、怪我してるし治るまでは毎日になるかもな」
それがどうかしたか?と大山を見るが、「新婚かよ…」と呟いた言葉は3人組の声にかき消され俺には聞こえなかった。

「朝からラブラブっすね!」「ここはお二人の愛の巣ですねっ!」
興奮したように意味不明な言葉を発する3人組。
「はあ?意味分からんこと言ってないで行くぞ」
千秋、おまえなんで照れてるわけ?
あの図はどう見ても、母親に服を整えてもらう幼稚園児だろうが!

担任に声をかけてから教室に行き、授業の準備をする。ノート類は千秋には必要無いので、これに関しては非常に楽だ。
しかしここに来るまでも視線がすごかった。千秋は分かるにしろ、なんか俺にも向けられてるように感じたんだけど。しかもなんか恐怖の視線。気のせいか?
大山にはそんなことなかったのに。
クラスメイトもどこか俺に怯えているような…俺は隣の奴に声をかけようとしたのだが、ちょうどそこで授業となってしまい俺は聞くことをやめ授業に集中した。

「今から昼だけどさ、ちょっと場所変えね?」
大山が4時間目が終わるとともに振り向いて言った。
確かに俺の一挙一動にクラスメイトは緊張したように反応するし、今日は前田君がお休みなので千秋に話しかけてくる奴もいない。
3人組も一応不良のFクラスだし、謹慎のこともあるから俺は大山の提案に同意した。

「ここなら空いてるっす!」「鍵もかかって無いっすよ!」
3人組が案内したのは今は使われることがほとんどないという第8会議室。高価そうな机と椅子が並べられており、庶民の俺としては使わないなら売ればいいのに、と思ってしまう。
「あ、お弁当っすか!」「ちょっとでかくないすか?それに購買のじゃないみたいですね」
俺が鞄から大きめの弁当とタッパーを出すと、そう言われる。確かにいくら育ち盛りと言ってもひとりでこの量は無い。
「一応手作りだし、千秋と俺の二人分だからな。どうせ箸持てないから俺が食べさせることになんだし」
面倒だからパンにしようと思ったのに、千秋がお得意のだだをこねたのだ。
最終的には「俺が勝手に怪我したからだもんな…」としゅん、とされ、怪我の一因でもあるという罪悪感に負けた。

早起きをして作った弁当はなかなか上手くできたと思う。
特に今流行り(?)のフライパンで作れるという唐揚げは上出来だ。短時間で出来るし、世のお母さん方のためにも企業さんにはこれからも頑張ってほしい。
ちゃんと野菜だっていれたし、まあちょっとごちゃっと入れた感はあるが男子高校生にしては上手いはずだと自負している。なにしろ俺は母親に鬼の猛特訓をされたことがあるからな。
ちょっと遠い眼をして地獄の猛特訓のことを思い出していると、3人組が驚いたように声をあげる。

「ええっ!これ岡崎さんが作ったんスか!?」「良いお嫁さんになれるすね!」
興奮したように言う3人組。だから千秋なぜお前が照れる!?
「お前らこれぐらいでそんなこと言ってたら、この後耐えれないぞ」
大山が弁当を広げながら呆れたように言う。こいつのは購買で売っているやつで、庶民の俺には高くて買おうと思えないやつ。昼飯に最低でも2000円ってありえん!
「なんでっすか?」「見てるとわかるよ」という会話を何のことだ?聞いていた俺だが、隣の千秋にくい、と腕を軽くひかれそちらを見る。

「和希、お腹すいた…」
「あ、悪い。どれ?」
「じゃあ唐揚げ」
ひょいと一つつまみ千秋の口元まで持って行ってやる。
「いただきます。ん…おいしい」
俺もいただきます、と言って口に運ぶ。ん、やっぱり上手く出来てる。
もぐもぐと咀嚼していたが、しんとしていることに気付き見るとまた凝視されていた。
大山はその横でひとり高級そうな肉を口に入れながら、「な、言ったろ」と言う。
赤い顔でこちらを凝視する3人組を訝しく思いながらも、俺は千秋の口に箸でごはんを運び続けた。

「…お、同じお箸でごはん…!」
小さく3人組が呟いていたが、俺は餌付をするのに忙しく聞いていなかった。




100928
(千秋野菜も食べろ)
(うん…次はまた唐揚げ頂戴)

今ものすごく唐揚げが食べたい…