あまやかしすぎはいけません | ナノ
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あまやかしすぎはいけません いち


あのFクラス事件により千秋はきき手の右手を負傷した。
そもそもそんなことになった原因のひとつとして俺の言葉も考えられないことも無く、俺はちょっとした罪悪感を感じていた。
だから俺は怪我が治るまで千秋の面倒を全面的に看ることにしたのだ。

「ほら、千秋こっち向け」
「ん」
ぱく、と俺の手からオムライスを食べる千秋。
「…なあ、それ、やっぱ明日からの学校でもすんの?」
大山がちょっとげんなりしたように言う。
「仕方ないだろ、手のひらの怪我だから物が上手く握れないんだから」
謹慎期間も今日で終わり、明日からは通常通り登校する。
謹慎期間は一応食堂が使えないことになっているので、昼のうちに材料を購買で買って自室でおとなしく食べているのだ。
大山は隣の部屋で、どうせならと俺達の部屋で一緒に食べている。

「でもさあ…」
「大山が代わりにしてくれるのか?」
「い、いや俺には無理だっ遠慮するっ」
大山はスプーンを差し出しながら言った俺の言葉に頭をぶんぶん振って拒絶する。
「なら俺がするしかないだろ、ほら」
「ん、和希のごはん、おいしい」
にっこにこ笑う千秋。
俺の気分は幼稚園児にご飯を食べさせる母親だ。

食事を終え、大山が礼に食器を洗ってくれる。
「明日何時に行く?大山も一緒に行くだろ」
「あ〜謹慎明けだしどうせ担任に一言言いに行かないといけないもんな」
結局大山が俺達の部屋に迎えに来ることに決まり、大山は帰って行った。
「んじゃ俺達も寝る用意するか」
いつもの通り先に風呂入れよ、と声をかけたところで千秋に「和希」と呼ばれる。

「俺、手がこれだから一人じゃ上手く洗えない…」
忘れていたことにハッとする。そうだった、怪我した日に一人で入らせて結局俺が風呂場に呼ばれ、服がびしょびしょになったんだった。それからは一緒に風呂に入っている。
「悪い忘れてた。じゃ、風呂行くぞ」
「うん」
上機嫌で俺の後に続いて風呂場に入ってくる千秋は片手で器用に服を脱ぎ始める。
身体は立派な大人なのに、俺に頭を洗ってもらって鼻歌を歌う様子は幼稚園児にしか見えない。

「和希と一緒にお風呂、嬉しいなあ」
浴槽につかった千秋が俺の後ろで楽しそうに言う。
「あのな、怪我で一人じゃ入れないから一緒に入ってるだけだから」
金持ち使用なのか、浴室も広めに作られているがやはり高校生男子が二人一緒に浴槽に入るには少し狭い。
別に浴槽には別々に入ってもいいのだが、千秋が一緒じゃないと入らない、とだだをこね、風邪をひかすわけにもいかないので一緒に入ることになったのだ。

「分かってるよ、怪我が治るまで、だろ」
ちょっとむ、としたような千秋の声が頭の横で聞こえる。
浴槽の中で千秋の脚の間に座るような体勢を俺はしている。
向き合って座ると千秋の脚がやり場に困ってしまうのだ。
くそ、千秋がちょっと長い脚なだけで俺は標準だっ!背中に感じる逞しい胸板なんて、羨ましく無いっ!

俺は誰にともなく心の中で叫んでいたが、千秋はそんな俺にかまわず上機嫌に俺の髪を長い指で弄ぶ。
「そろそろ出るか、千秋、身体ぐらい自分で拭けよ」
暑くなってきたので俺はそう言うと浴槽から出て後ろについてきた千秋にタオルを渡してそう言う。
「うん。髪の毛は和希がしてくれるもんね」
そう言って笑う千秋は完全に幼稚園。
俺はこれから寝るまでに髪の毛を乾かし、歯磨きをしてやらなければならないことを思い溜息をついた。




100927
和希育児疲れ(笑)