むりにいうことをきかせようとしてはいけません 3 | ナノ
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むりにいうことをきかせようとしてはいけません さん


「こっちっす!この下です!」
そうして連れて来られたのは、中庭の広場がよく見える2階の教室。
この学園は広く、校舎がいくつかあるのだが、その校舎に挟まれるようにしていくつか中庭が設置されている。ここもその一つで、ちょうどFクラスが纏められた校舎と普通のクラスの入った校舎に挟まれるように位置している。
通常なら綺麗に整えられた花壇や噴水やらが置いてあるのだが、ここはFクラスが近いためか芝生と小さな植え込みがいくつかあるだけだ。

急かす3人組に俺も下を覗き込む。
そこには俺達のいる校舎側に一人で立つ千秋と、対面するようにFクラス校舎の前に立つ集団がいた。
「あれ、河辺さんとこの精鋭部隊っすよ」「河辺さんも合わせて20人いるっす」
あわあわとする3人組は口々にそういう。
「あの真ん中の金髪が河辺だ」
大山が示した男は、なるほど偉そうに一人椅子に座っている。
なかなか顔もよく背も高そうだ。

「お前が火向ってやつか。俺は河辺だ。知ってるだろう?この前はうちの下のをずいぶん可愛がってくれたらしいな」
河辺が横柄に言い放つ。しかし俺にはこの後の千秋のセリフが予想できる。
「誰だお前、そんなこと覚えてねえ」
予想通り。大体千秋はいちいち喧嘩した相手の名前も顔も覚えていないのだ。
まあつまり覚えていたほうが非常に危険なのだが、男はその千秋の発言にムカついたらしい。
「…そうやって強気でいていいのか?これだけいるのが見えないか?」
周りの男達を示して、それとも状況も理解できないか、と馬鹿にしたように笑う。

「あああ千秋さん挑発してる!」「いくらなんでもこれだけ相手にそれは…!」
「岡崎、さすがに火向でもこれはヤバいんじゃないか?」
3人組と大山が強張った表情で言ってくる。
俺もどうしようか、と悩んでいた時千秋が口を開いた。
「どれだけいようと弱けりゃ一緒だ。そんなことより何の用だ?用が無いなら帰らしてもらうぞ」
千秋は多分真面目に答えたつもりなんだろうがこのタイミングでその発言はヤバい。
どうやら河辺もこれにはキレたらしい。

「…どうやら痛い目にあいたいみてえだなあ?お前ら、可愛がってやれ」
といっても全員行く必要はないと感じたのか、5、6人が前に出ただけだった。
「あれだけの人数なら大丈夫か」
ほっとしたように大山が呟き、俺もそう考えていたのだが。

「千秋さんっ!!」「ああっどうして!!」
「火向どこか悪いのかっ!?」
なんと千秋はいつものように暴れず、避けるのみなのだ。
しかしいくら千秋でも5、6人からの攻撃を全て避けるのは難しい。
いくつか拳をくらい、口元は血が滲んでいる。
俺も茫然とその光景を見ていたのだが、河辺がそんな状態の千秋を見て声をあげて笑う。

「強いって噂だがその程度かあ?」
ぐい、と滲んだ血を拭って千秋が河辺をまっすぐ見つめて口を開く。
「…俺はもう喧嘩しない。和希に迷惑かけたら、傍にいれない」
だから喧嘩はしない、という千秋に俺は衝撃を受ける。
あいつが何もしないでいるのは、俺が喧嘩するなと言ったからなのか?
たかだか俺の言葉一つで、殴られても殴り返さないのか?

「千秋さん…!!」「なんて健気な…!!」
「火向、お前…!」
3人組と大山が横で何か言っているが、俺に気にする余裕はない。
だって、あの千秋が。
俺のせいで、怪我を。

「はあ?何言ってんだ?この程度じゃ本気になれないってか?」
喧嘩はしない、という言葉にイラついたように河辺が立ち上がる。
「だったら本気にしてやるよ」
そう言って取り出したのは、小型のナイフ。
「これなら本気になんだろ」

そんな河辺を眼にしても、眉を顰めたまま答えようとしない千秋。
河辺はとうとう強硬手段に出ることにしたのか、ナイフ片手に千秋に近づいていく。
「澄ました面してられんのも今のうちだぜ!火向!」
振りあげられたナイフにそれでも手をあげようとしない千秋。

俺があんなこと言ったから、自分が怪我することになっても喧嘩はしないっていうのか?
そんなの、俺は。
「ー千秋っ!!」
俺は思わず声をあげていた。




100925
次も暴力表現が入ります
苦手な方は注意してください
といってもrenoの書く表現ではゆるゆるですね(苦笑)