むりにいうことをきかせようとしてはいけません | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


むりにいうことをきかせようとしてはいけません いち


俺は3人組があまりにも普通だったので忘れていた。
この学園のFクラスは、暴力飛び交うバイオレンスな生徒が集まっているのだと。
始まりは些細なことだった。

「お、おっ、岡崎君っ!!」
昼休みに食事が終わった後、大山と3人組と談笑しているとき、教師が慌てて教室の入り口に駆けつけ、俺の名前を大声で呼んだ。
「はっ早く来てくれ!!火向君が…!!」
どうやらトイレに行った帰りにでも何かしたらしい。
せっかく一人で行動するようになったというのに、俺の負担は減っていない。
むしろ毎回のように呼び出される分増えてないか?

「あ〜飼い主出動?」
「…」
はあ、と溜息をついた後立ち上がる。教師の焦った顔からしてまた始業式のときのように暴れているらしい。
急かす教師の後に大山達も続く。
「そういや君らもやられたよね?」
「あんときは本気で怖かったっす」「俺らとは格が違いますよ」
などと3人組がいかに千秋が強いかを語るのを聞きながら、俺は教師に案内されて問題の現場についた。

そこには思った通りの光景が広がっていた。
地面に転がる数人の生徒。遠巻きにしている生徒と教師。
おい!教師!そんな遠くから呼びかけるだけじゃ無くてもっと力づくででも止めろよ!
「うっわ痛そう…」
ちょうど千秋の拳が決まり、くらった生徒は壁際まで吹っ飛んだ。
「お、岡崎君っ!!頼む!!」
教師が俺にへっぴり腰で頼んでくる。
あんた達俺を猛獣の飼育員か何かと思ってんのか?
俺も出来たら行きたくないわっ!!

と思っていてもどうせ俺が行かないと誰も行かないし、行かないと後で煩く言われることも高校に入る前に経験済みなので仕方ない、と俺は一歩前へ出た。
興奮してしまった千秋は周りがあまり見えていないため、不用意に近づくと俺も殴られるので、慎重に進む。
千秋の射程範囲のぎりぎり外で俺は立ち止り声をかける。
「千秋!もうやめ…」
「っの野郎!!」
俺の声に、視界に俺の姿を入れようとした千秋に、残った一人が大声をあげて殴りかかる。
千秋はすぐさま反応して拳を避けた勢いそのままで男に回し蹴りをする。

「あ」
デジャブとでもいおうか。
綺麗に蹴り飛ばされた男が俺に向かって飛んでくる。
平均的な運動能力しかない俺はもちろん避けることなんてできず、男ともろにぶつかる。
「うぐっ」「がっ」
そのまま俺は背中から壁にぶつかり、男は顔面を打った。
壁で打った背中も痛いが、男の肩とぶつかった顔も痛い。
男は俺の上に覆いかぶさったまま気を失ったらしく動かない。
俺もじんじん痛む顔面を手で押さえたまま痛みにもだえる。

「か、和希っ!!大丈夫かっ!!」
千秋が駆け寄り、俺の上にあった男の体を乱暴に放り投げる。
手を外すとぽた、と鼻血。これもデジャブ。
俺の鼻血に慌てる千秋。
俺はその様子を見ながら段々腹が立ってきた。
大体いつも千秋が喧嘩するからこんなことになるんじゃないか?
壁にぶつかるはめになるのも、俺が鼻血を出すことになるのも、もとはと言えば千秋が喧嘩をするからだ。
いつもと違いうつむいたまま黙っている俺に何か感じたのか、千秋が「和希?」と名前を呼びながら顔を覗き込んでくる。
俺はその声には答えず鼻血を拭ってすっくと立ち上がる。
そして突然動いた俺を驚いたように見上げる千秋に向かって言い放つ。

「俺を喧嘩に巻き込むなっ!一人で始末出来ないなら喧嘩すんなっ!!」
ぽかんと俺を見上げていた千秋だが、むっとしたようで立ち上がり反論してくる。
「俺だって喧嘩しようと思ってしてるんじゃない!こいつらが喧嘩売ってきたんだっ」
「だとしても買わずに済む喧嘩だったとしてもお前は買うだろうっ!大体お前はすぐ手が出過ぎなんだっ」
「一種の防衛本能だろうがっ!大体和希にいちいち面倒みてくれなんて頼んでないっ!」
「だったらさっさとそう言えっ!俺だって迷惑してんだっ!」
言い合いを始めた俺と千秋に、周囲がおろおろとしているのが分かるが、俺も千秋ももう止まらない。完全に怒った。
「これ以上喧嘩を続けるようなら金輪際俺に近寄るなっ!!」
「ああ近づかねえよっ!!もう面倒みてくれなくて結構だっ!!」
ふんっ!とお互い反対方向を向く。

「か、飼い主さん…?」
3人組がおそるおそる声をかけてくるが、俺はギッと睨みつける。
「俺の名前は岡崎だっ!そして先生!」
おろおろとしている教師に視線を移すとびく!としながら「な、なにかな」と聞いてくる。
「お聞きになった通りですので、金輪際俺をこういうことで呼び出さないでください」
「し、しかし…」
「本人がああ言ってるんです。今後俺は関係ありませんから」
失礼します、と言って教室へ向かって歩き出す。
千秋もどこかへ行ったようで、教師の「待ちなさい火向君!」という声が反対方向へ遠ざかっていく。

「おいおい大丈夫かよ…猛獣が飼い主なしって…」
「お二人が一緒にいないなんて想像つかないっす…」
大山と3人組が何か言っているが、俺は猛烈に怒っているのだ。そう簡単に許すつもりはない。

俺はこの時千秋に喧嘩を売ったのがFクラス最大のグループの一員とは知らず、千秋への怒りを募らせていた。




100923
今回はちょっと暴力表現多めかもです
次回以降苦手な方は注意してください
といってもあまり大した表現にはならないと思いますが一応