副会長と朝の登校 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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副会長と登校


爽やかに晴れ上がった空。小鳥のさえずりでも聞こえてきそうな朝。
俺はもうすでに疲れ果てていた。
「瞬、気を付けてくださいね。もうあなただけの身体では無いんですから」
にっこり笑って俺をエスコートする副会長に顔が引きつる。
まだ寮の中だというのに、腰にまわされた手に対する周囲の視線が痛い。

「大丈夫です。俺が瞬のそのきれいな身体には傷一つつけさせません」
エレベーターという密閉空間の中、そんなことを言われた。
同乗していた生徒達がある者は頬を染めて羨ましそうに、ある者は妬ましそうに俺を見てくる。
俺だって代わってやりたい!
地獄の三分間だった。

いやに俺に密着してくる副会長を必死に押し返しながら歩いているとやっと校門に着いた。
副会長は生徒会室に毎朝寄っているので、このまま普通に教室に向かう俺とは靴箱までのはず。
この苦行に終わりが見えた!と靴箱の前で気を抜いたのがいけなかった。

「じゃあこれd…」
「俺が履き替えさせてあげます」
別れのあいさつをしようとした俺を遮り、副会長が俺の靴箱を開けて上履きを取り出す。
にこにこしたままさっと俺の前に跪いた。
ざわつく周囲をものともせずに「さあ、そのきれいな脚を」と促してくる。

俺はこうなったら副会長は絶対に譲らないことをもう知っている。
何しろ同じことを今朝寮から出る時に10分位やり取りしたのだ。
俺はひきつったまま仕方なく片足をそろそろとあげる。
ううう周囲の視線が殺人級にヤバい。俺はこの後こちらを見ているチワワ軍団に抹殺されるのじゃなかろうか。

俺の脚から上機嫌に靴を脱がし、上履きを履かせる副会長。
そういえばこの人超人気あるんだった、とようやく思い出す。
俺の前ではこの人、ただの変態だから忘れていた。
確かに顔はきれいだよな、と改めてじっくりと観察してみる。
王子様、と呼ばれる副会長は外国の血が入っているとか何とか聞いたことがある。
確かに色素の薄い色をしている。眼なんかうっすらブルーだもんな、とかぼうっと考えて副会長の顔を見つめていたことを、俺は次の瞬間猛烈に後悔した。

「〜っもう我慢できません!!」
「っぎゃああああぁぁ!!」
俺の脚を抱えるようにして副会長が迫ってくる。
片足をとられた俺は態勢を崩して背中を靴箱につけてしまう。
「そんな可愛い顔で俺を見るなんて!この脚を撫でまわして舐めまわして瞬をぐちゃぐちゃにしたいという欲望と必死に闘っていたのに!!欲望に負けてしまうでは無いですか!」
「ぅおおおおい!!そこは理性もっと頑張ろうよ!!もっと必死に闘おうよ!!」
ギラギラした眼で俺に迫ってくる副会長に身の危険を感じる!
このままではまた…!!それだけは嫌だ!!
必死に引きはがそうと抵抗するが片足を抱き込まれたままの態勢では十分抵抗できない。

「…瞬…」
ゆっくりと俺の脚を腕に抱えたまま立ち上がった副会長が俺の脚の間に身体を密着させてくる。
ひいいいいぃ!!この人眼がヤバいよっ!!
なんか手が太ももを弄ってるんですけどおおぉ!?
もうこの際誰でもいいから助けてくれよっ!!
チワワも俺のこと羨ましそうに見てないで邪魔しろよぉぉ!!

そんな必死の祈りが通じたのか、俺たちに声をかけてくれる存在が登場した。
「おはよう瞬!」
「!!片山!!」
俺の(いちおう)親友の片山だった。頼りないがもうこいつでもいい!
「た、たすk…」
「いや〜靴箱での公開プレイですかっ!?萌え〜!!」
俺の助けを求める声をきれいさっぱり無視して嬉しそうに叫ぶ片山。
親友ってなんだろう…一瞬俺は遠い目をしてしまった。

が、もちろんそんなこともお構いなしに現在進行形で俺は貞操の危機にあるわけで。
このままでは確実にヤられるっ!!
だんだんと激しくなってくる太ももの手の動きと首筋にかかる熱い吐息、腰を押しつけてくる動きに俺は本格的にヤバいと思い始めた時。
今度こそ神は俺に救いの手を差し伸べてくれた。

「ふ、副会長っ!し、書類の確認に生徒会室に来てほしいんですけどっ!」
どもりながらも声をかけてきたのは会計の人だった。
ナンパな雰囲気が漂い、複数の生徒と関係を持つという会計のことを俺は快く思っていなかったがその認識を俺は改めるっ!!
あなたは俺の救世主だああぁ!!
副会長は会計の声に弄る手を止め、うっとうしそうに振り返る。

「…俺がしなくてもあの猿がいるでしょう…」
「で、でも一応トップに見てもらわないと…」
冷や汗を流しながら食い下がってくれる会計さん。頑張れ!!俺は今全力で応援している!!
しばらく会計さんを睨みつけるようにしてから副会長ははあ、と溜息をついて俺に向き直る。
「すいません。俺は馬鹿共の監督をしなければならないのでこれから生徒会室に向かいます」
おお!!神よ!!会計さんありがとう!!

「そこの君は瞬の友人ですね。瞬を頼みますよ」
「任せてください!お礼は眼の前でいちゃついてくれたらいいですから」
片山、お前には後で話があるっ!
副会長は最後に名残惜しそうに俺の太ももをひと撫でしてから身体を離した。
もちろん俺はその瞬間に片山の後ろ側に隠れる。副会長の射程距離内にいるなんて恐ろしすぎる。

副会長はそれから周りを見回しながら誰にともなく言う。
「それから俺の瞬に手を出した奴には地獄を見せてやりますから」
みなさんは賢いですからそんな愚かな真似はしませんよね、といって笑う副会長。
笑顔が黒過ぎる!
「では瞬、お昼は一緒に食べましょうね。迎えに行くので待っていてください」
にっこり俺には輝かしい笑顔を向けて副会長は去って行った。

俺はようやくこれで普通に授業が受けれる、とほっと息をついた。
実際にはそんなことは無かったとすぐに実感することになるのだが。
それよりも俺は去り際の会計さんの憐れみのまなざしに、これからを思って溜息をついた。




100919
(ねね、副会長って絶倫ぽいけどどうなの?)
(片山…お前一回死ねえええぇぇ!!)

この後会計さんは邪魔したことで副会長にいびられます
誰が報告に行くかは役員間で本気のじゃんけん勝負で決定(笑)