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距離0m


「あれ、東は?」
「ああ、呼び出しだよ、呼び出し」
放課後に4人で帰るのが日課となった中、日直のため先生の荷物運びをさせられた松川を教室で待っていたのだが、東が荷物を置いたままで教室に姿が見えないことを疑問に思い聞いてみると、名護が携帯をいじりながら面倒そうに答えてくれた。

「呼び出し?」
「告白だよ、こ・く・は・く」
「えっ」
どく、と嫌な感じに胸が鳴った。
「結構美人なやつだったかな」
俺が何も言えないでいると、携帯を閉じた名護がにやりと笑って言う。
「古川、お前すっげーショック受けた顔してんぜ。んなにショックか?省悟が告白されてんの」

俺は何も言えずに固まってしまう。
だってこんなの普通じゃないだろ?
俺だって馬鹿じゃない。どうして東だけ意識してしまうのか分かってる。
東のことが、好き、だからだ。
東が誰かと付き合うなんて、考えたくない。
男同士でこんなの、おかしいよな?

「ぐだぐだ考えてんのかもしんねーけど、このままだと誰かに省悟、とられちまうぜ」
誰かに取られる、そんなの。
「嫌だっ!」
叫んだ瞬間、ハッとする。ヤバい、こんなのさすがに変だって名護もおもうはず。
「んじゃとられる前に自分んのにしちまえよ」
名護はもう興味が失せたように再び携帯をいじりだす。

「え、でも、だって俺、おとこ…」
「はあ?男同士だと悪いわけ?別に男も女もほとんど変わらねえのに?」
そ、それは変わるんじゃないか?と思ったが、俺は焦って変なことを聞いてしまう。
「だ、だってふつうは変だっておもうだろ?そ、それに名護も女の子のほうが好きだろ?」
「普通って何?ていうか俺は男も女も関係ないけど。省吾から聞いてない?」
首を横に振ると名護は相変わらず携帯を見たまま続ける。
「俺バイだから。あ、つまり男も女も大丈夫ってこと」
さらっと言われたセリフに驚く。

「え、男も…?」
「そ。古川は真面目だから悩むかもしんねーけど、そうなったもんは仕方無えって。認めたほうが楽」
「でも、もし東に言って嫌われたら…」
「あ〜まあそれは心配いらないんじゃね?あいつ今好きな男がいんだと」
「ええ!!俺、そんなの失恋決定じゃん…」
がっくりうなだれる俺を名護は鼻で笑う。
「はっ、そんなのお前が告白すんのに関係あんのか?」

「へ?」
「告白何ざてめえの気持ち伝えるためのもんだろ。それに奪いとれば問題ねえ」
なんとも豪快な名護に俺は呆気にとられる。
「古川、てめえはんな簡単にあきらめんのか?」
名護の言葉にはっとする。そうだ、別に失恋しても俺が東を好きなことに変わりはない。むしろ言わないままもやもやするほうが、嫌だ。
「ありがとう、名護。俺頑張ってみる!」
ぐっと拳を握り決意する俺を横目で見て名護が小さく、計画通りの思考かよ、単純すぎる、とちょっと憐れんだように呟いたことには気づかなかった。

「ごめん遅くなって」
「ごめんね、帰ろうか」
松川と東が同時に帰ってきた。俺はそういえば東は告白を断ったのか今更気になった。
「省悟、断ったのか?」
「うん」
名護に簡潔に答えた東に俺はほっとする。
しかしいつ告白したらいいんだ?呼び出し…は仲がいいのに微妙だし、メールは口で言いたいから却下。

どうしよう、と悩むうちに帰り道の途中にある公園についた。もう駅に着いてしまう。
今日は無理か、と思っていたら名護がいきなり忘れ物をした、といって松川の腕を掴んで元来た道を戻っていく。
協力してくれてるのか、と心の中で感謝しながらもう今日言ってしまおう、と決意する。

「ひ、東、話があるんだ」
立ち止った俺に嫌な顔一つせず東は向き合う。
「お、俺、おれ」
どうしよう告白なんて初めてでなんて言おう。顔が赤くなるのがわかる。
「おれっ東が好きだっ!!」
ぎゅ、と眼をつむってそれだけ言う。こ、このあとどうしよう。

「…それほんと?」
こくこくとうなづく。ど、どうしようこの後を考えてなかった!
「…古川、顔あげて」
す、と顔を手であげられる。ギュッとつぶったままの眼は開けられない。
「うれしい、古川、おれも好きだよ」
ふわ、と抱きしめられる。
「ええっ!?」
「ずっと好きだったんだ。だからうれしい」

ぎゅう、と抱きしめてくる東。俺はあわあわしてしまう。
そんな俺をくす、と笑ってからそっと顔をのぞきこまれる。
「…とりあえずは省吾って呼んでほしいな。十也」
名前で呼ばれて真っ赤になったまま小さく俺もなまえをよぶ。
「…しょう、ご」

本当にうれしそうに笑う東ー省吾に俺もうれしくなって笑う。
まだまだ照れが残るけど、いつか名前で呼ぶことが普通になるといいと、俺は手をつないだまま思った。




100918
(というか付き合うって何するんだろ)

一度書いたものが消えてしまった(涙)ため書き直したもの
中途半端ですがこれで一旦終了です…ここまで読んでくださってありがとうございました