5m H | ナノ
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距離5m:sadeH


「古川、この映画見に行かない?」
古川がこの前観たいと言っていた映画で、もちろん行く、と頷いた古川は松川にも声をかける。
古川は俺のことを意識してしまって、戸惑っている。あれからちょくちょく視線を感じるし、ちょっと触っただけで過剰に反応する。
ここからは一気にいく。自覚させてやる。

「なら今日の放課後な!」
松川に話しかけていた古川がそういったことを受けて、俺は亮と目配せをした。
亮には俺の気持ちも言ってあるし、何より亮は今松川に興味のほとんどが向けられている。
亮なんかに眼をつけられた松川には少し同情するが、俺の計画をうまく進めるためには好都合。古川とうまくいったら少しは気にかけてやるが、それまでは亮の好きなようにさせよう。「結構人がいるなあ」
「新しくできたところだからな」
近くにある映画館はショッピングモールに併設するように新しく作られたもので、平日の夕方にも関わらず学生で結構混雑していた。
「俺らの学校のやつがやっぱり多いな」
「近いから帰りに寄るんじゃないかな」
古川は俺の言葉に反応して顔が赤くなっている。可愛い。

「俺と亮で買ってくるから、古川と松川はここで待ってて」
俺はそういうと亮と二人でさっとチケット売り場へ行ってしまう。
「俺と古川、亮は松川とでいいだろ」
売り場で2枚ずつチケットを買ってさっさと戻る。

「ごめんね、間違えて二人ずつ分かれて観ることになっちゃたんだ」
「悪いな」
「お詫びに飲み物とかおごるよ。古川は何がいい?」
古川は俺の顔を直視できないのかうつむいたままオレンジ、と答える。
「オレンジね」
にこっと笑ってオレンジと自分の分にコーラを買う。

「はい、どうぞ」
挙動があやしい古川に自然に笑みが浮かぶ。いい感じに意識している。
もうひと押しか、と俺は行動することにした。
「ひとくちくれる?」
古川の手を包みこむと真っ赤な顔でこちらを凝視してくる。
くす、と笑ってから飲み始める。眼を伏せていても視線を感じる。
ゆっくりとあげた視線と絡む。

「…ごちそうさま」
口元に視線が集中する。一番エロい、と亮が指摘した唇。古川も同様の意見らしく、ぽうっとした表情で見つめてくる。
ふ、と笑った時、画面に映像が流れだす。
しばらくは隣の俺の存在が気になっていたようだが、古川はだんだんと映画の内容にのめりこんでいった。
ただ、俺をそういう対象としてみていることは確かだ。俺は映画に集中している古川の横顔をじっと見つめて過ごした。

「おもしろかったな!やっぱ映画館で見るのはいいなあ」
にこにこと古川は映画の内容に満足して笑みを浮かべていた。
「そうだね、また観に来ようか。今度は二人で、ね」
にこ、と笑うと映画館の中でのことを思い出したのか赤くなる。
「〜っ、あ、ま、松川!」
出口から出てくる松川を見ると真っ赤で、亮はにやにやしていた。
「ま、松川?どうし…」
「お、俺もう帰るっ!ふ、古川も帰るよな!?じ、じゃあお先にっ!!」
「あ、松川!?ひ、東に名護、また学校でな!」

俺はにっこり笑って手を振り、松川に引きずられるようにして帰る古川を満足げに見つめていた。後は最後の追い込みだけだ。
亮にも手伝ってもらおうか、と思いながら俺はようやく手に入るだろう古川に手を振り続けた。





100916
(すぐ赤くなってかわいいなあ)