じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう 2 | ナノ
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じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう に


「お、来た」
きゃあきゃあチワワ(いわゆる可愛い系の生徒)が廊下に群がっている。教室の中にも他クラスからどんどん集まりつつある。
クラスに前田(チワワの中でも結構上にいるクラスメイト)が興奮したように入ってくる。
「火向様がいらっしゃったよ!」
その言葉にクラス中の視線が前の扉に集まった。そして。

「ーっ!」「格好いい…」「迫力ある…」
息をのむ声や思わずというような呟きが広がる。
確かに千秋の容姿はいい。
濡れたような艶のある少しウェーブした黒髪。切れ長の長い睫毛が縁取る眼。スッと通った鼻筋に形のいい唇。
すらっと背が高く筋肉もついている身体は足の長いモデル体型。
黙ってじっとしていればいい男だ。黙ってじっとしていれば、だが。

「ー」
黙って教室を見ていた千秋の視線と俺の視線が絡む。
俺は昨日の俺の言葉を思い出せ!というメッセージを込めた視線を送る。
しばし無言での応酬が続く。
折れたのは千秋だった。
物言いたげな視線を送りはしたが、昨日強く言い含めたのが効いたのか、渋々視線を外す。
昨日の睡眠時間を削ってまで言い聞かせた苦労が報われた。

「…俺の席は」
ぽつりと呟いた千秋にいち早く反応したのは、前田君だった。
「こ、こちらですっ!あの、僕は火向様の後ろの席の前田洋一といいます!火向様のお役に立ちたいと…」
千秋に向って延々とアピールする前田君。
「すげ〜美形って声もいいのな。ていうか前田君めちゃくちゃ狙ってんじゃん、こりゃすぐファンクラブできるな」
大山が半分振り向いて俺にそう笑って言う。
そうだな、と返しながら前田君が千秋の世話をしてくれたら俺の負担も減るんじゃ、と期待に半分意識を飛ばしていた、ら。

「…おい、そこの…」
むっとした千秋の声が聞こえたと思った途端、その千秋の声を掻き消すように声がかかる。
「あっれ〜火向の御曹司様じゃん、こ〜んなとこになんでいんの〜?」
「もしかしてすっげ〜馬鹿とか?」
「まじ?だったら受ける」
ぎゃはは、と笑うガラの悪い金髪と茶髪の三人組が入口のあたりにいた。
「うわあ、あれFクラスの奴だぜ」
大山が声をひそめて教えてくれる。Fクラスとは問題児を集めたクラスで、クラス内の暴力事件は日常茶飯事らしい。
俺としては関わりたくない最たるクラス。

「あっれ〜ビビっちゃって言葉もない?」
「おい、何とか言えよ、御曹司様」
特に反応せず黙ったまま三人組を見ていた千秋の態度にイラついたのか、三人組の一人が千秋のほうへ手を伸ばす。が、千秋はその手をはたき落とす。
「…触るな」
「あ"ぁ?てめえなめてんじゃねえぞ!」
手を払われたことに怒った一人が千秋に殴りかかる。
ヤバ、と思った時にはもう千秋は動いていた。




100918
ふたつでまとめられませんでした(汗)
まだ続きます