10mH | ナノ
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距離10m:sideH


俺は待ち合わせ場所の駅前に20分早く到着した。
古川は楽しみの余り早く来るだろうからだ。

「珍しいな。亮が早いとは」
駅前に向かう亮と会ったので二人で向かう。しかし亮は普段ならギリギリに来るのが常で、こんなに早く来るのは珍しい。
「別に良いだろ、ったくにしてもウザイな。ジロジロと」
苦笑して同意する。俺と亮に対して女子からの視線が凄い。話し掛けにくい亮がいて良かった。俺は優しそうに見えるらしく、一人だと五月蠅く話し掛けられる。
しばらく亮と話をしながら時間を潰す。ただし視線は二人とも駅前。
5分くらいして望んだ姿が目に入る。

「古川」
「東、良かったぁ会えて。人多くて心配だったんだ」
駆け寄って来る古川が可愛くて本音が漏れる。
「俺が必ず古川を見つけるから大丈夫だよ」
笑う古川を観察する。多分理解していない。けれど今日は俺を意識してもらう。

古川はTシャツに短めのズボン。薄いピンクのTシャツが古川に似合っていて可愛い。
「松川はまだかな?」
古川が呟いた時、ふい、と亮が歩きだす。
「な、名護?どこ…」
「ああ、古川、亮は松川を迎えに行ったんだよ」
亮の進行方向を見ると松川の姿。
「良かったぁ、名護って眼が良いんだな」
喜ぶ古川。だが亮はどうでも良い奴はすれ違っても気にしない奴だ。つまり亮は松川に興味を持っているのか。亮の最近の行動の理由がわかり、なるほど、と思わず呟いてしまった。

店はオーナーと知り合いのため席は少し融通して貰った。
「俺と松川が先に取って来ても良い?」
甘い物が好きな古川と松川はそわそわしている。古川の仕草が可愛くて、笑顔で送り出す。

「亮、俺の邪魔だけはするなよ」
「はぁ?しねぇよんな面倒なこと」
まぁ亮は松川さえ与えておけばおとなしいだろう。

「美味しい?」
「うん。あ、はい一口」
古川に聞くと予想通り一口食べさせてくれる。本当に可愛らしい。
するとまた松川がむせる。

むせた拍子に付いたのか、クリームが口の端に付いている。
と、亮が手を伸ばし指で拭ってやった後、指のクリームを舐めとった。
「っ!!な、何…っ!!」
真っ赤になった松川がパクパクと口を動かすが、亮は平然としたまま甘い、と呟く。

「古川も付いてるよ」
これ幸いと同じように古川の口についたクリームを拭って舐めとる。
困惑したまま赤くなって礼を言う古川が可愛くて、何度も繰り返した。

帰り道、別れ際に古川に改めて礼を言われる。
「ありがとう、東。美味しかった」
俺はここで攻めようとにこ、と笑い身をかがめ古川の耳元で囁く。
「俺も美味しかったよ、古川のクリーム」
普段とは違うどこか甘い声に古川は真っ赤になって後ろに下がる。
耳を押さえたまま固まる古川に自然と笑みが浮かび、また学校で、と言い駅の中に入る。

これで古川は必ず俺を意識する。ここから一気に追い込んでやる、と俺はニヤリと笑って次の計画をたてはじめた。




100913
(次はどうしてやろうか…)

確実に罠を仕掛けつつある東君