とってもこわがりです 3 | ナノ
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とってもこわがりです さん


「お、お邪魔します…」
「そんな緊張しなくていいよ〜」
茜君はそう言うけど、緊張するよこれは!
車で送ってもらって来たのは大きなマンション。
え、あれ、茜君の家に行くんだよね?え?
と今一状況が理解できていないままあれよあれよと言う間に車から降り、いつの間にかエレベーターに乗ってある部屋の前まで来ていた。
俺と祥平君がえ?とぽかんとしてる前で茜君がカギを取り出したのを見てようやく理解出来た。
そう、茜君はこの広くて大きなマンションに住んでるんだって。
部屋の中に入る様に促され、緊張しながら足を踏み入れる。

「お腹空いたよね〜準備してくるからちょっとだけ待っててね」
「すぐ出来るからテレビでも見てくつろいでろ」
茜君と真淵さんはそう言うと俺と祥平君をリビングに残してキッチンの方へ向かう。
ていうかく、くつろげって言われても……
「…な、なんていうか、凄いね…」
「…うん、凄いね…」
正直くつろげません!
だってこの部屋凄いんだよ!このソファだってふかふかでテレビだってあんなに大きいんだよ!?
何て言うかこう庶民とはちょっと違う感じが…
高級そうな雰囲気が、こうどことなく場違いのような…

祥平君も俺と同じ気持ちみたいで居心地がちょっと悪そうにしてる。
ううう、今日は泊るって家にもう連絡したけどやっぱり止めようかな…
こんなに高そうなマンションに住んでるなんて思って無かったし、何よりこんな良いとこに泊まるのなんだか申し訳ないよ〜!!
俺って根っからの庶民だったんだとしみじみ思う。
広過ぎて落ち着かない!
家具も高そうで触るの怖い!!

もぞもぞとしてると祥平君とばっちり眼が合う。
お互い居心地悪そうにしているのが分かって思わず苦笑が漏れる。
「…なんだか落ち着かないね」
「祥平君も?実は俺も…こうなんだか高そうで、場違いみたいな気がして…」
「分かるよ、ここにいてもいいのかなって思うよね」
同じ気持ちを分かってくれる人がいてほっとする。
祥平君もそうみたいでさっきよりも顔の強張りが解けてきてる。
そこからやっぱり俺達庶民だよね、という話になり庶民トークで盛り上がっていると茜君と真淵さんがキッチンから戻ってくる。

「楽しそうだけど、何の話してるの〜?」
「随分盛り上がってたみたいだな、どんな話だったんだ?」
ここに来る途中で買ったおかずを乗せたお皿をテーブルに置きながら二人はそう聞いてくる。
その様子に俺と祥平君は顔を見合わせた後お互いぷっと軽く吹き出す。
だって俺達自分がいかに庶民かを熱弁してたんだよ、今考えるとおかしいよね。
「な、何でも無いことだよ、ぷっ…」
「う、うん…ほんとどうでもいい…ぷはっ」
さっきまでの変な緊張が解けたからか笑いが止まらない。
くすくす笑って話も出来ないような状態の俺達に二人はきょとんとしている。
いきなり笑いだしちゃうなんておかしいのは分かってるんだけど、ツボにはまっちゃったみたいで止まらない。

「ご、ごめ…ぷっ、ご、ごはん食べよっか…」
ようやく落ち着いてきた祥平君がそう言って俺も息を整えながらそうだね、と言う。
茜君と真淵さんはちょっとなんとも言えない顔をしてたけど、俺達が並んでご飯に向き合うと向かい側に移動してくる。
「こんな入れ物のままで悪いが、飯ならまだあるから足りなければ遠慮せず食べて良いぞ」
真淵さんがそう言ってチンするご飯をパックのまま置いてくれる。
あ、そっか、茜君一人暮らしって言ってたもんね。
お皿とか足りなくて当然だよね。
そう思って茜君のほうを見てあれっと思う。

「あれ、茜君、それ…」
「ん?何?トモちゃん」
不思議そうにしている茜君の前にも同じようなパックのままのご飯が。
俺の疑問に気付いたのか、真淵さんがお茶を配りながらああ、と答えてくれる。
「いつもは適当に外で済ますことが多いからな、ここ食器とか無いんだよ」
だからこれも紙コップで悪いな、と言われ、改めてテーブルの上を見てみて納得する。
確かに紙コップと紙皿ばっかだ。
「一人だから別にいっかと思ってたんだよね〜。でも、トモちゃんが遊びに来てくれるなら買い揃えなきゃね」
にこにこ笑って楽しそうに茜君はそう言うと何がいるかな〜?と考え出す。

「え、そ、そんな気にしなくても…」
慌ててそう言う俺を真淵さんが止める。
「川島、気にしないで良い。というかむしろ買わせてやった方が良い、今まで何度言っても聞かなかったんだから、良い機会だ」
真淵さんの言葉に祥平君がふと気付いたように問いかける。
「そう言えば、啓介はよくここに来るんだ?」
そう言えばさっきもキッチンに行ったりしてたし、真淵さんも慣れてるみたいだったなと思う。
「ああ、前に川島には言ったかも知れないけど、俺達は幼馴染だからな、ガキの頃から出入りしてたから半分自分の家みたいな感覚だな」

そう言えばそうだったっけ、と思い出す。
俺は幼馴染がいないから想像でしかないけど、小さい頃からよく来てたなら慣れてるのは当たり前だよね。
それに真淵さんって面倒見良いタイプだから掃除とか色々してそうだもんね。
「まあ腐れ縁だよね、真淵はどうでもいいけど、トモちゃんはいつでも遊びに来ても良いからね」
「てめ…誰がこの部屋の掃除してると思ってんだ!?」
にこ、と笑顔の茜君と引きつった顔の真淵さんに思わず噴き出す。
祥平君も笑ってしまって二人またくすくすと笑いあう。
何て言うかこの二人って多分小さい頃からずっとこんな感じなんだろうなあと思うと笑えて来てしまった。
俺と祥平君、今日は笑い上戸なのかな、さっきから笑ってばっかりだよ。

そんな感じで夕食は和やかな感じで終えて、さあお風呂ってなった時に問題になった。
着替えとかはこれまたここに来る途中で買ってきたからいいんだけど、そう、ここで俺は最悪な事にあの映画を思い出してしまったのだ。
「お風呂先に入っていいよ」
はい、と茜君がタオルを渡してくれるがどうしよう、と思う。
怖いからって泊めてもらうことになったのに、これ以上迷惑なんてかけれないし…
でも一人でお風呂怖い……
ど、どうしよう…あっ、そうだ!!

◇◇◇◇
「どうかな?痛くない?」
「うん、丁度いい力加減だよ、ありがとう」
広い浴室に俺と祥平君の声が響く。
そう、祥平君に一緒に入らない?と聞くと祥平君も俺と同じくどうしようと思っていたらしく、快諾してくれたのだ。
そう言うわけで俺は今祥平君と一緒にお風呂にはいっている。
「それにしてもお風呂も広いよね〜」
「俺達二人で入っても大丈夫だもんね」
背中を流し合いながら感心してしまう。

最初二人で入るのは狭いかもね、なんて笑いながらお風呂に来たんだけど、そんな心配はいらなかった。
脱衣所も大きめだし、浴室自体もゆったりと大きめに作られてあった。
まあ部屋も広いし、全体的に大きめに作ってあるのかな?
茜君や真淵さんみたいに大きめの人だと二人はちょっと狭いかも知れないけど、俺と祥平君ぐらいなら二人でもまあまあ広い。
「ちょっと修学旅行みたいだよね」
「じゃあ二人でお風呂から出たらまくら投げでもする?」
なんだかテンションが上がってしまってお風呂場の中だっていうのにはしゃいでしまった。

これ以上は上せちゃうね、ということでお風呂から上がった時にははしゃいだせいか眠くなってきてしまっていた。
「川島君、眠いの?髪の毛乾かさないとダメだよ」
「うん…」
祥平君が眠たさから既に動きが止まりつつある俺を見かねてかごしごしと頭を乾かしてくれる。
「これでいいかな」
櫛で軽く整えてくれた祥平君に引かれるままついていく。

「お風呂ありがとうございました」
「っお、おう、べ、べべべベッドなら用意しておいたぞっ」
真淵さんの声だ。あれ、なんだか真淵さん顔が赤い…?
「トモちゃん、眠いの〜?可愛い〜!」
茜君…?なんだか眠くてふわふわしてきたなぁ…
「川島君がもう寝ちゃいそうなんで…先に寝室に行ってても良いですか?」
「うん、高田君俺が出るまでトモちゃん任せても大丈夫?」
「はい、すみませんベッドまで貸して頂いて…」
「いいよぉ気にしなくて〜、それに真淵が頻繁に来るからベッドも二つあるしね」
う〜ん何の話してるのかな…?
ふわぁ…欠伸が出てきちゃった…

「川島君?ベッドここだから…」
ふわふわベッドだぁ…あ、温かいの離れてっちゃう…そうだ!
「それじゃ…わっ!?か、川島君!?」
「う〜温かい…ふわぁ…」
「え、ちょ…川島君!」
なんだか祥平君焦ってる…?ん〜でも今凄く眠くて…起きてからでいいかな…?
「…おやすみなさい…」
あ…もう限界…おやすみ……

「か、川島君…」
眠かったのかベッドにつくなりごろんと寝てしまった川島君。
そこまでは良かったんだけど、手を引っ張られて俺までベッドに転がってしまった。
しかも川島君はそのまま俺の腕をがっつり掴んだまま寝入っちゃったから、起き上がれないし…
どうしよう…啓介にも柏木さんにも御礼をまだきちんと言えていないのに…
でも川島君を起こすのは可哀相だし…
「ふぁ…」
それに横になってるからか俺も眠くなってきてしまった。
多分緊張してたのもあるんだろうけど、ここでこのまま寝るのはちょっと失礼だよね…?

「あふ…」
でも眠気が…ちょっとぐらいなら、いいかな…?
まだ二人ともお風呂に入って無かったし…少しなら大丈夫だよね?
少しだけ、少しだけ……
俺は心の中でそう言いながらうとうとと眠りこんでしまった。

◇◇◇◇
「……なにこれ、可愛すぎ……」
「…っ」
お風呂上がりのピンクな頬とか濡れた髪とかいろいろ危なかったから、自分もシャワー浴びたりしてちょっと時間を置いてから寝室を覗いてみれば、二人とも夢の中。
しかもくっついて寝ちゃって、子犬が擦り寄って寝てるみたい。
きゅうって丸まって寝てる姿はぎゅうって抱きしめたいぐらい滅茶苦茶可愛い。
真淵も同じ気持ちみたいで真っ赤な顔のままちらちら高田君のことを見てる。
まあその気持ちは分からなくもない。
好きな人が無防備にベッドに、しかもちょっと大きめの服着て寝てたらそりゃ見ちゃうよね。
ていうかむしろいけないこと想像しちゃう?
あれが自分の服だったら、とかその格好で上目づかいされたらとか…

「…やば、エロイ…」
想像の中のトモちゃんのあまりのエロ可愛さにぽつりと思わず呟くと、隣の真淵が過剰なまでに反応する。
「っな!なん…っ!!」
このままだとちょっとヤバいかな、と思うので気を紛らわせるために真淵をからかうことにする。
「な〜に想像してんの?やらし〜」
「なっ!ななな何を…っ!!」
「だって二人がお風呂入ってる時も挙動不審だったじゃん、エロイことでも考えてたんじゃないの〜?」
初めは俺もえっと思ったけど、まああの二人だし、と気にしなかったけど、真淵は二人が入ってる間中ソファで顔赤らめて固まってた。
「なっ!違う!あ、あれは声が聞えて思わず…っ」
そこで真っ赤になる真淵にそう言えば、と思い出す。
きっちり閉めていなかったのか、二人の声や水音が聞こえてきたのだ。

『わ、祥平君肌ツルツルだね』
『え〜?俺より川島君のがツルツルだよ』
『そんなことないよ』
『絶対そうだよ』
『むっ、そんなこと言う祥平君は…こうだっ!』
『ひゃあっ!?ちょ…こら!そっちがその気なら…!』
『ふわぁっ!やったな!』
みたいな感じで二人はただ単にじゃれあってただけなんだろうけどね…
まあ、お年頃の俺達にとったらちょっと刺激的というか…
だってさあ、あの二人が裸でじゃれあってるんだよ?
他の男が相手なら嫉妬するとこだけど、あの二人だと、ねえ…

「な、なんつうか…その、あれだ…見てはいけないような…その…」
赤い顔でもごもご言う真淵も多分俺と同じ気持ちなんだろう。
なんだろう、このいけないモノを見てしまったようなむしろ良いモノ見た様ななんとも言えない感じは…
「………取りあえず、今日は寝よっか…」
「………おう…」
サッと同時に二人から眼を逸らしてシーツをかけてあげてからそっと部屋を出る。
うん、今日は、寝た方が良いや、うん。
これ以上考えてるといけないこと考えそうだし、寝よう、うん。

「…俺ベッド使うから真淵は床ででも寝ろよ」
「はぁ!?」
「一回絵面考えてみなよ〜?男二人が同じベッドなんて…(ハッ)」
「「…………」」
「……ソファ貸してやる…」
「……おう……」




130303
(トモちゃんと一緒に寝れなかったけどなんだろうこの妙な満足感…)
(祥平と川島だとまるでユ…ハッ!お、俺は何を…っ!!!)


受け子が二人でじゃれあうのが書きたかったんです
久しぶりの更新になってしまいすいません
ラストがどうしても上手く書きあげれず……
必ず完結はさせますので気長にお待ちください