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「#幼馴染」のBL小説を読む
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背徳の恋 後日談 前編


「それじゃあまた帰りに迎えに来る」
「うん」
昼休憩も終わりに近付いて、雅と木守君は自分の教室に戻らないといけないんだけど、いつもわざわざ俺と橋田を教室まで送ってくれる。
初めは凄い注目を集めてて、何度か雅にもう良いよって言ったんだけど、雅に少しでも長く一緒にいたいからって言われてしまって俺は何も言えなくなってしまった。
俺だって嬉しいし、一緒にいたいのは同じなんだけど…まだ、慣れないって言うか…
雅もそれは分かってくれてるみたいなんだけど、引いてくれる気は無いみたい。
というか、あれから雅はどこかふっきれたみたいな感じがする。
それまではどこか遠慮がちだったんだけど、今はむしろ積極的というか…

「優…」
俺を椅子までエスコートするように座らせてくれる雅の顔を見ながらそんなことを思っていると、ハッとした時には至近距離に雅の顔。
「んっ」
さら、と前髪を掻きあげられたと思うと額に柔らかい感触。
ほぼ同時にきゃあ、と興奮した様なクラスメイトの声が聞こえて現状を思い出す。
「っな、み、雅…っ」
慌てて身体を引いて額に手を当てる。
頬が赤くなってるのが自分でも分かる。

きょ、教室なのになんてことを…っ!は、恥ずかしすぎる…!
熱くなった頬を自覚しながらも、軽く睨むように雅を見上げると穏やかに苦笑される。
「…悪い、優があんまり見つめてくるから」
キスがしたくなった、と顔を近付けて言われかあっと更に顔が赤くなる。
周りに聞かれないためだって分かってるけど、そ、そんなに近付かなくてもいいのに…っ
それにこんな体勢、更に皆に騒がれるじゃないか!
思った通りさっきのキスで注目していた周囲が一層きゃあきゃあと騒いでいる。
雅も分かってるはずなのに、とむっとして見上げると悪戯っぽく笑っていて。
分かっててやったな!と更に俺はむくれるけど雅はそれを見ても楽しそうに笑うばっかり。

雅は最近こんなふうにちょっとした悪戯をしてくるようになった。
悪戯って言っても、俺が注目されるのが苦手なのを知ってるのにわざと注目されるようなことをしたりという本当にちょっとしたことなんだけど。
それでもこんなふうにいきなりキスされたりするのには慣れない。
俺は恥ずかしさもあって楽しそうに笑う雅からぷいっと顔をそむける。
こ、こういうのは恥ずかしいからあんまり人前ではしないでって言ったのに!
ようやく雅は笑いながら「悪かった」と言ってくる。
悪かったなんて思って無いくせに、という思いを込めてじとっと見つめると苦笑で返される。

そのままぐっと顔を近付けたかと思うと耳元で囁かれる。
「…本当は今すぐ口にキスしたかったんだ、額で我慢したんだが…我慢しない方が良かったか?」
甘さを含んだ声と共に熱い吐息を耳朶に感じてぞくっとする。
「優さえ良いなら今すぐキスするが…」
どうする?、と熱を孕んだ声が肌を撫でる。
「…っ」
全身が熱く感じる。
ぞくんと痺れが背筋を走る。
雅のことしか、考えられなくなる。
「優…」
「…っぁ…」
キス、される、と思った時。

「…お二人さん忘れてるかもだけどここ教室。しかももう予令なるから」
呆れた様な橋田の声にハッとする。
お、俺、今、何…っ!!!
一瞬で真っ赤になったと思う。顔が滅茶苦茶熱い。
ちっという舌打ちの音の後ゆっくりと雅が身体を起こす。
「………わざわざどうも、橋田君」
「……すいませんね、お邪魔して」
雅と橋田が何か会話してるみたいだけど、恥ずかしすぎてそんなこと気にしてられない。
き、教室だったのに俺ってば何ってことを…!
橋田が言ってくれなきゃ、お、俺…っ!
周りの反応が怖すぎて顔があげれない…!!
しかも絶対今顔真っ赤だし…!!

「雅様、そろそろ行きませんと」
「もう時間か…優」
雅の声にも顔があげられない。
は、恥ずかしすぎて雅の顔を見れないよ!
じっと下を向いて羞恥に悶えているとすっと雅の両手に頬を包まれて上を向かされる。
俺を覗きこんでくる穏やかな表情の雅の眼に真っ赤な俺はどう映ってるんだろう。
きっと情けない顔してるんだろうな…と見上げているとふっと雅が微笑する。
その笑みに見惚れているとすっと屈んだ雅が耳元で囁いてくる。
「…続きは今夜、な」
「っ!」
言われた内容と甘い声にかあっと顔の熱が上がる。
雅はくす、と笑うとちゅ、と頬に軽くキスしてから今度こそ身体を離す。

「それじゃあ放課後に」
優を頼むよ、と橋田の方に視線を向けてそう言うと雅は木守君を連れて扉の方へ向かう。
俺は恥ずかしさのあまり机に顔を伏せる。
あんなの、反則だ。
ちら、と視線だけで確認すると俺の視線に気付いたのか、雅は意味ありげな視線を俺に送ってから完全に視界から消えた。
その視線にまたもかあっと熱があがるのを感じ俺は机に突っ伏す。
駄目だ、恥ずかしすぎて顔をあげれない…!

「…まあ、なんだ、水橋」
「…何」
橋田がぽんぽんと肩をたたいて慰めるように口を開く。
「…もう俺達も大分慣れたって言うか今ではもはや皆期待してるって言うか…とにかく、あんま気にするな?」
橋田の慰めに俺はようやく顔を少しあげたんだけど…
「見た!?額だけじゃなく頬にもキスしてたよ!」
「今日は二回も見れるなんて、最高!」
「あ〜いつ口にされるんだろうね?きっとそれはそれは情熱的な…っ!」
「「「きゃあ〜!!」」」
…は、恥ずかしすぎる…!!!
クラスメイトの楽しそうな声に俺はまたも耳まで赤くなり、結局本令が鳴り教師が来るまで顔をあげることは出来なかった。

◇◇◇◇
「そういえばさ、水橋ってここ出ていった時、どうやってそれから生活するつもりだったんだ?」
HRも終わって雅を待っていると橋田が唐突にそんなことを聞いてきた。
いつもならもう既に迎えが来てる時間だけど、今日は急に仕事が入ったからちょっとだけ遅れる、と連絡が来たので暇つぶしに橋田と話していると、思い出したようにあの時の話題になってそう言われた。
俺と橋田以外には誰もいないし、今まであまりその話には触れていなかったのでどう答えるか迷う。
「あんまり貯金もなかったんだろ?未成年だし…働く当てはあったのか?」
俺は一瞬言うか迷ったものの、本当に心配してくれていた橋田には正直に話すことにした。

「実は…普通に働くのは難しそうだから、その…男娼、として働こうかなって…ほら、俺、一応経験はしてるから…」
俺がそう言うと橋田は一瞬眼を丸くした後キッと眉を吊り上げる。
「なんてこと考えてたんだ!!この馬鹿!!」
「え…」
思った以上の剣幕に俺は驚いて橋田を見るが、橋田はそんな俺には気付いていないのか眉を吊り上げたまま続ける。
「経験って言っても華宮とだけだろうが!ていうか好きでもない奴に抱かれるなんて、どういうことか分かってんのか!?相手もお前のことなんて好きでもなんでもないんだぞ!?」
「そ、それは…」
「しかもそんなことしてて身体を壊したりしたらどうする!?ヤバい趣味の奴が相手だったら!?」
「う…」
「いくら他に何もないからって身体を売るのだけは駄目だ!!自分を大切にしないでどうする!!」
「あ…その……ご、ごめん…」

そ、そうだよな…いくらなんでも、他にも探せば仕事、ひとつくらいあるよな…
俺、いくらショックだったからってマイナス思考すぎた…
橋田に怒鳴られて自分の考えの単純さに落ち込んでいると、しゅんとした俺に気付いた橋田がハッとしたように口を開く。
「あ〜…悪い、言い過ぎた、かも」
「そんなこと無い!俺だって自分が馬鹿だったって今なら思う」
そう言うと橋田はがしがしと頭を掻きむしる。
「悪い、完全やつあたり…俺さ、あの時水橋に俺の家で働けって言ってやればよかったと思ってて…」
探してる間ずっと後悔してた、と橋田は小さい声で言う。
「見送ってから気付いたんだ、これから水橋はどうするんだろうって、馬鹿だよな、学園に通わせてやるのは無理でも、家で雇うぐらいなら出来たのにさ」
「橋田…」

俯いて小さい声で「だからやつあたり…ごめん」という橋田に胸が温かくなる。
「ううん…橋田、嬉しいよ、俺、そんなに心配してもらえて…」
ここで唯一、親友と呼べるようなぐらい仲が良くなれたのは、橋田だった。
木守君も友達だけど、一番は橋田だと思う。
俺のことを心配して、そんなことまで考えてくれてた橋田に眼頭が熱くなる。
「橋田…ありがとう」
ちょっと感動して泣きそうになった声でそう言うと、照れくさそうに橋田がぶっきらぼうに返事をする。
「…俺、水橋のこと、一番の親友だと思ってるから」
「っ橋田…!俺もだよ…!!」
照れくさそうな橋田に笑みが零れる。

橋田と知り合えて本当に良かった。
多分橋田は、俺にとって一生の親友だと思う。
俺が辛い時に支えてもらったから、次は橋田が辛い時に、俺が少しでも支えてやれたらいいと思う。
しばらく照れくさい空気が流れたけど、橋田が吹っ切れたように笑って俺も思わず笑ってしまう。
二人とも親友だって言い合うなんて、青春、て感じで凄い照れくさいんだけど、こういうのも良いと思う。
あの時諦めていたら手に入らなかった、大切な時間。
雅が追いかけてきてくれて、本当に良かった。
俺は、今、こんなにも幸せを感じてる。

「…にしても、ソレ、華宮には言ってないよな?」
「?うん、なんで?」
ようやく落ち着いた空気になると橋田がハッとしたようにそう聞いてくるのでそう言うと、明らかにほっとした顔をされる。
疑問に思って聞いてみると、呆れた様な視線を送られる。
「あのな、あの溺愛ぶりを見てたら、そんなこと知ったらどんなことになるか想像つくだろ」
「っで、溺愛って…!そ、それに、こんなこと知ったからってどうもしないと思うけど…」
思わず照れてしまったけど、本当に分からなくて橋田の顔を見るとはあと溜息をつかれる。

「お前ね…こんなことばれたら、部屋から…っていうか、ベッドから出してもらえなくなるぞ」
「え」
橋田の言葉の意味を悟ってかああっと顔が赤くなるけど、続く言葉に今度は青くなる。
「ていうか数日はベッドの住人になるかもな、軽い軟禁状態にされるかも」
ええっ!と顔を赤くしたり青くしたりと忙しい俺の様子に、橋田は苦笑して口を開く。
「ま、ばれてなきゃ大丈夫だろ」
その言葉にほっと胸をなでおろす。
「そ、そうだよな、言わなきゃ良いんだもんな」
げ、現実に雅がそんなふうになるかどうかは分からないけど、万が一もあるもんな。

「橋田、俺、雅にはこのことは秘密に…」
「何を秘密にするって?優」
背後からかけられた声に俺はさあああっと顔から血の気が引く。
俺の正面の橋田も引きつって顔色が悪くなっている。
「教えてくれないのか?困ったな…」
全然困ったふうに聞こえない声が頭上から聞こえたと思うと、ふわっと後ろから抱きこまれるようにして顔を覗きこまれる。
「…続きは部屋でゆっくり話そうか、優」
「…み、雅…」
にっこりと笑顔で俺を見つめる雅に、俺は背中に冷や汗が流れるのを感じた。




110205

がうがう様遅くなりまして申し訳ありません!
優の身体売ろうとしてたのがばれて雅に怒られる、というリクでしたが…まだ橋田しか怒ってませんね(汗)
しかし橋田は何と言うか優の母的存在ですね(笑)
優も橋田には甘えてる感がありますし…