ぐあいがわるいことをけんめいにかくします4 | ナノ
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ぐあいがわるいことをけんめいにかくします よん


ごめんなさいちょっと楽しみとか言ったの撤回しますだからもうやめてえええええええ!!!!
「ぬおおおおおお!!!!」ビュンドゴッ!!
「がはっ!」「この、おらああああああっ!!!」ビュンバシッ!!
「ぐっ」「てっめえええええええ!!!」ビュン
ななななななんだここはっ!?戦場か、戦場なのかっ!?
びゅんびゅん飛び交うボール、どう見てもあれに当たれば無事では済まない。
だってあの不良さんの腕見てよ!!むっきむきだよ!?
むっきむきの不良さんが全力で投げてるんだよ!?
俺なんかに受け止めれるわけないよおおおおお!!!

ボールに当たった時の音が今まで聞いたこと無いくらい鈍い音だよ!?
ありえない!!
正直内野はびゅおんびゅおん剛速球が飛んできて心臓に悪いのでさっさと外野にでも行きたいのだけど、そのためにはあのボールに当たらなければならない。
それは無理だ。
あれに当たるなんて自殺行為だよおおおおおお!!!
気絶したいが気絶なんてしたら間違い無くあのボールの餌食だ。
それだけは嫌だ!!
必死にもちうる限りの運動能力で逃げるんだけど、そもそも運動能力の高く無い俺。
相手にしてみれば俺は格好のターゲットなわけで。

「うおらあああああああっ!!」
「ひいいいっ!!」
ねねねねね狙われてるうううううう!!!
明らかに相手の不良さん達俺を狙ってるうううううううう!!!
そりゃどう考えてもクラスの不良さん達よりもひ弱ッぽい俺を狙うのは当然だけどさああああっ!!
びゅおんとボールが向かって来てぎゃあああああと内心絶叫している俺の前にさっと大きな背中が現れる。
バシン、とボールを受けた音と同時にその背中の持ち主が振り返る。
「大丈夫〜?トモちゃん」

「あ、茜君…!!」
今茜君が天使に見えるよ…!!
俺を救ってくれた君は正に天使!!ありがとう茜君!!
君こそこの荒高のてん…「な〜にトモちゃんばっか狙ってんだ、よっ!!」
ビュオッ、ドゴォッ!!「がふぁっ!!」ドサッ!!
て、てん…「て、てっちん!!てっちんが倒れたぞ!!」
「白眼向いてるっ!!」「保健室保健室!!」
ああああああああ茜君んんんんんん!?
「あっちゃあ、ちょっと強すぎたぁ?」
ちょ、ちょちょちょっとおおおおお!?
今、今茜君の投げたボールで人が倒れたよおおおおおおお!?

「ま、でも顔じゃ無かったし、一人減ったからいっか」
そそそそそういう問題では…
「トモちゃんに来たボールは俺がぜえんぶ取って当て返してあげるからねぇ」
「あああありがとう茜君…」
にこっと笑ってそう言ってくれる親切な茜君にそれ以外何を言えるというんだろう…
相手チームも心配はするもののアウトになったということに反論は無い様だし…
ていうかそもそもドッヂボールで保健室は使わないからね!?
茜君は言葉通り俺に向かってきたボールを受けて相手をばんばん当てて行ってくれた。
どうやら茜君は俺にとっては天使でも相手にとっては悪魔らしい…
結果的に俺は当たらずにすみ、一回戦は圧勝という結果に終わった。

「お疲れ様ぁ、トモちゃん」
「茜君、お疲れ様」
俺達は一度休んでから2回戦なので今度は審判としてコートの外に立っている。
茜君はあれだけ動いていたのにほぼいつもと変わらない姿だ。
少し髪が乱れてるくらい?
ぱらぱらと顔にかかるのが邪魔そうな茜君に、俺はふと思いついてきょろきょろとクラスメイトを見回す。
あ、いた!
クラスの中でも髪が一番長い不良さんはいつも手首に髪ゴムをいくつかつけてたんだよね。
教室では後ろに座ってるからプリント類を回す時に見て男の人なのに珍しいなって覚えてたんだ。
もし余ってるなら一本茜君に借りれないか聞いてみよう!

丁度こっちに歩いてきた不良さんに思い切って声をかける。
「ああああああああのっ!」
「え、俺!?」
いきなり声をかけたのでびっくりしたのか、驚いたようにこちらを見る不良さん。
隣にいる茜君も俺のことを不思議そうに見ているのが分かる。
ううううう大丈夫彼はクラスメイト彼はクラスメイト…!!
「ああああのっ!そ、その髪ゴムっ!!かかか借りれないでしょうかっ!!」
いいいい言った!!言ったぞ!!
声が裏返ったけど言った!!
「べ、別にいいけど…」

ほら、と腕に今日もつけていた髪ゴムをひとつ外して渡してくれる。
「あああああああありがとうっ!」
かかかか借りれた!!不良さんから髪ゴムを借りれた!!
怖かったけど毎日通ってた成果がここに…!!
「と、トモちゃん?」
借りた髪ゴムをもって一人感動に浸っていた俺に茜君がおそるおそる声をかけてくる。
その声に俺はハッとする。

そうだ!借りれたんだから感動に浸ってないで目的を果たさないと!!
「あ、茜君!か、髪の毛くくらない?」
隣にいる茜君を見上げてそう聞くと、きょとんとした顔の茜君。
「髪の毛、動いたらちょっと邪魔みたいだから…髪ゴムも借りれたし、くくったら邪魔にならないかなって…」
茜君にはいつもお世話になってるし、今日も既にお世話になったんだからせめてこれぐらいはお返ししないとね。
ていっても俺は髪も短いから髪ゴムも持ってないし借りなきゃだめだったんだけど。

「…もしかして、それ、俺のために借りてくれたの?」
きょとんとした茜君が俺の持った髪ゴムを指さしてそう聞いてくるので俺はこくりと頷く。
すると茜君は一瞬眼を丸くした後ふわっと華が開くように笑った。
「…そっか、俺のために借りてくれたんだぁ…」
その笑顔にかあっと顔が熱くなる。
あ、茜君その顔は綺麗すぎます…!!
現に俺だけじゃなくて近くで様子を窺ってた不良さん達も赤くなっちゃってるから!
男の人なのに、格好良いだけじゃなくて綺麗でもあるなんて凄すぎるよおお〜!

「じゃあトモちゃんくくってくれる?」
茜君はその笑顔のままそう言うとくる、と後ろを向いて座ってしまう。
「え、あ、でも俺綺麗にくくれないし…」
どうしよう、とおろおろしていると茜君が首だけ振り向いて口を開く。
「俺がトモちゃんにして欲しいの、お願い」
どんなでもいいからくくって、ね?とお願いされてしまっては俺に断ることなんてできない。
そもそもくくったら、って言いだしたのも俺だしね。
「が、頑張ります…!」
髪の毛なんてくくったこと無いけど、取りあえず輪ゴムみたいに止めたらいいんだよね?
ようし頑張るぞ…!

地面に座った茜君に合わせて俺も地面に膝立ちになる。
まずはくくる髪の毛を分けるんだよね。
全部くくるのは…難しそうだからやめといて、邪魔になってる上の方のだけくくればいいよね?
「茜君、くくるの上の方だけでいい?」
「いいよ〜」
一応確認をとると茜君もそれでいいらしいので邪魔になりそうな部分だけをくくることにする。

俺はくくる部分を決めようとそっと茜君の髪に触る。
わっ!さらさらだ〜!!
染めてるのに髪の毛痛んでない!やっぱり手入れしてるんだなぁ…
それに良い匂い…シャンプーなのかな?香水?
とにかく爽やかで甘い香りがする。
こんなに格好良くて、しかも身だしなみに気を使ってたら持てるよね…
しみじみと思いながらも髪の毛を纏めていく。
サイドにある髪をあげたから耳の形が良く分かる。
わ〜ピアスついてる!痛く無いのかな。

取りあえず何とか纏めれたので後は手櫛でどうにか整えていく。
うん、このくらいでいいかな。
ちょっと乱れてるかもだけど、手でだったらこんな感じで十分だよね。
借りた髪ゴムで何とか髪をくくっていく。
うううちょっとくくる間に緩くなっちゃったかもだけど、まあ落ちて来ないみないだしいいよね。
「こ、これでいいかな?」
て言っても鏡なんてないから手で触った感触でしか分からないんだけど。

茜君は手を頭に翳してそっと触れた後、にっこり笑ってくれた。
「十分だよ〜、ありがと、トモちゃん」
「ううん」
にこにこしてくれた茜君にほっとする。
前から見ても纏まってるみたいだし、上手く出来て良かった。
茜君が丁度立ち上がった時に2回戦が終わったようで笛の音がする。
「あ、もう出番だね」
またあの戦場か…ううう今度も逃げ回らないと…
とがっくりする俺の横に来た茜君がぽん、と背中を軽く叩いてくる。
なんだろう、と見上げると茜君の笑顔。

「大丈夫、トモちゃんに髪もくくってもらったし、今からは全力で行くよ〜」
「茜君…うん、俺も頑張るよ!」
そうだよね、取りあえず頑張ればいいんだよね!
俺はなんとか今回も逃げきろう、と気合を入れてコートに入った。
…ところでさっきは聞き流しちゃったんだけど、茜君今からは全力って言ってたよね?
てことはさっきので全力じゃ無かったんだ?
茜君…相手の人のためにもほんの少しは手加減した方がいいのでは…
俺は開始の笛の音を聞きながらぼんやりとそんなことを考えていた。




110220
(行っくよ〜!そらっ!!)
(がっはあ!!)
(柏木のボールに当たるな!死ぬぞ!!)
(ええ〜大げさだなあ)

茜の髪をトモちゃんにくくらせてみたかったんですよね