ぐあいがわるいことをけんめいにかくします3 | ナノ
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ぐあいがわるいことをけんめいにかくします さん


「はあ、大丈夫かな…」
思わず口から溜息が出てしまう。
今日はプチ球技大会の日だ。
荒高は不良が多いので普段はまじめに授業を受ける人達が少ないんだけど、この日は別だ。
これに参加さえすれば単位はもらえるし、何より学年を問わずクラス対抗なので負けることが嫌いな不良達は燃えに燃えているのだ。
競技はシンプルにドッヂボール。
理由は野球はバット→危険なので不可、バスケ→接近戦で過去集団乱闘になったため不可、サッカーも同じ理由で不可、またバレーなどあまりルールが難しいと無法状態での何でもありの勝負になってしまうため不可で、残ったのがこれだからだそうだ。

はっきり言って俺にとったら憂鬱以外の何物でもない。
だって不良と対戦するんだよ!?
見かけ通りのひ弱な俺は格好のカモだ。
つまり全力で不良に狙われる…!!
欠席したくて堪らないけど、単位取得のためには必ず出なければならないので休むこともできない。
なんで先生達もこんなシステムにしたんだよ〜!!
そりゃ不良に単位を与えるための苦肉の策なのかもしんないけどさあ、もうちょっと普通の生徒のことも考えてよ!!

鬱々とした気分で学校についてしまう。
ううう不良がいっぱい来てるよ〜!!
いつもならお昼すぎても来てない人が多いのに今日は朝からやる気満々だよ〜!!
ひいいいと声にならない悲鳴を心の中で叫びつつ教室へ急ぐ。
もう学校の中で安全なのは教室しかないよ!!
教室に駆け込んで席に座り息を整える。
ふう〜、朝からもう既に心が疲れてるよ…

「トモちゃんおはよ〜」
「おはよう、茜君」
にこやかに声をかけられ顔をあげると茜君が登校して来たところだった。
「今日は着替えてグラウンドだっけ?」
「うん」
クラスメイトは既に体操着に着替え終わった人もいて、なんだかいつもよりも活気づいている。
ううう憂鬱だ…

仕方なくのろのろと着替えようとすると茜君が「トモちゃん、着替えはここね」と俺の腕を引いて教室の隅に連れて行かれる。
「んじゃ俺ここで着替えるから、終わったら言ってね〜」
「あ、ありがとう…?」
教室の隅に置かれたよくお店に置いてある試着室のようなところに俺を入れて茜君はにこっと笑う。
なぜか教室で着替えようとしたら茜君が「駄目だよこんなとこで着替えたら!!」と反応してその日は教室中から不良さんを追い出してカーテンにくるまって着替えさせられた。
その次の日にはどこからか試着室を教室に運び込んで、「これからはトモちゃんはここで着替えてね」と笑顔で言われた。

いや、なんで俺だけ…?
しかも試着室って…俺も周りも男ばっかだし隠す必要無いと思うんだけど…?
疑問に思ったものの、茜君がにこにこ笑っているため言い辛くそれからはずっとここで着替えている。
にしてもこの試着室をどこから持ってきたのかは…うん、深く考えないでおこう。
サッサと上下ジャージに着替えてカーテンの外へ出る。
「あ、トモちゃん、着替え終わった〜?」
シャッという音で気付いたのか、体操着姿の茜君が振り返る。
ジャージの裾を折って捲りあげている茜君と同じ物を来ている筈なのに、何だろうかこの違いは…
俺だと完全にちょっとださい体操着なのに茜君が着るとお洒落なジャージに見えるよ…

その違いにちょっと悲しくなりながらも茜君に近付く。
「用意できたなら行こっか」
にこ、と笑う茜君にうん、と返事してぞろぞろとクラス全員でグラウンドへ向かう。
皆やっぱりやる気にあふれてるようで「全学年制覇だな」とか楽しそうに言っている。
まず各学年の中で対戦して、各学年の1位と2位が上位リーグ、その他が下位リーグとしてまた対戦するんだけど、どうやら皆は優勝する気らしい。
同い年の不良でさえまだ怖いのに、年上なんて…想像しただけでも恐ろしい。
そりゃ俺だって皆で優勝できたら嬉しいけどさ…

「この機会に気に食わねえやつぶっ潰す」「あいつだけはぶっ潰してやる…」
とか結構ぶっそうな発言がすでに聞こえるんですけどおおお!?
ううう既に無事に家に帰れそうにもないんですが…
ぞろぞろとグラウンドに到着すると夥しい数の不良が!!
こんなに一つの場所に集まるなんて…ある種の感動を覚えないこともない。
しかも皆体操着だし…なんかそれだけ見てると可愛い気が…
「てめえ何ガンつけてんだ、ああ!?」「おまえなんぞ相手にするかよ、はっ!」
しないいいいいいいいいいいいいい!!!!
絶対しないいいいいいい!!!!!
やっぱ怖いよおおおおおお!!!不良は不良だよおおおおお!!!

うわあああああ良く見たらそこかしこで一触即発になっちゃってるしいいいいい!!!
思いッきし引き気味になってしまった俺の背中にぽん、と優しい手の感触が。
「トモちゃん、大丈夫だよ、今日はちゃんと競技で決着つけることになってるから」
茜君はそう言って一応俺達のクラスに割り振られている場所へ俺と一緒に並ぶ。
茜君…でも今日はってことはいつもはそのまま喧嘩に突入なんだよね?
やっぱ怖いよおおおお俺が一人で校内を歩けるようになるのはまだまだ遠いみたいだ…
しかも競技で決着ってことはそれだけ皆本気でやってくるってことだよね…?
どっちにしろ最悪だあああああ!!!

内心絶叫する俺をよそにどうやら全クラスが集合したらしく教師の声がマイクを通して発される。
「きょ、今日は球技大会を開催します、各学年の中で総当たりで1位と2位を決め、その6チームで決勝リーグ、他のチームは下位リーグとします」
いつもなら煩くて聞こえない放送もがやがやとしながらも今日は皆大人しく聞いている。
な、なんていうかその態度が逆に恐ろしいというかなんというか…
「る、ルールは簡単に最後まで自陣に残っていた人数が多い方が勝ちとします…ぼ、ボールはひとつで外野は2名から始めます」
その後も細かいルールがいくつか読みあげられていく。
どうやら反則したチームはその時点で敗北とみなされるようなのでこれだけ気合が入っているなら反則は無いだろうとほっとする。
いや、反則が無いって言っても俺にしたらもう相手が不良ってだけである意味反則なんですけどね…
審判は対戦相手以外のチームが担当することになるらしい。
一応教師も審判としているのはいるけど、多分小さくなってるしかないんだろうな…

コートがそんなにあるわけじゃ無いのでグラウンドと体育館と合わせて6試合が一気に行われる。
1年生と2年生がグラウンドで3年生は体育館でするのでぞろぞろと移動し始める。
運の悪いことに俺達のクラスは1回目の試合に出なくちゃならない。
まだ心の準備が出来て無いのに…!!
勝つためにそこそこ力のある二人が外野になることになり、俺は嫌でも内野として逃げ回らなくてはいけなくなった。
集まって作戦…というか士気をあげるために円陣みたいなのを組んでるんだけどもう俺の心臓はドキドキバクバク。

緊張と恐怖で気分が悪くなりかけた俺の背中にまた温かい手の感触。
「トモちゃん、大丈夫、俺がいるからね」
「あ、茜君…」
にこ、と俺に笑いかけた後茜君はぐるっと皆の顔を見回してニヤッと笑う。
「それじゃあ見せつけてやろっかぁ、今日は思う存分暴れて良いよ〜」
「総長の言葉もあることだし、てめえら今日はぜってえ勝つぞ!」
「「「おおおおお!!!」」」
茜君の後に真淵さんがそう言うと気合一杯に皆が雄たけびをあげる。
わわわ…な、なんだか俺もドキドキしてきた。
恐怖って言うか…わくわく?
ちょ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ楽しみ…かも。

にこっと笑いかけてくれる茜君に俺もほんの少しわくわくしながら笑いかけて第一試合は始まった。




110219
(で、出来る限り当たらないように頑張ろう…!)


今のジャージってどんな感じなんだろう…?
今も学年ごとに色違いのちょっと…なジャージなんですかね?
そういえば高校時代は球技大会に優勝すると食券が景品としてもらえたので頑張った思い出があります