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「#幼馴染」のBL小説を読む
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二重人格!?な彼 前編


「おはようございます東堂様!」
「おはよう」
「お〜さすが東堂だなあ、朝からすげえ人気」
開けた窓から見える、一人の人物に人が群がる光景を見てしみじみという戸田の声にのろのろと顔をあげて覗き込む。
集団の中心でキラキラしい笑顔を振りまいている背の高い美貌の男。
毎日繰り返されるその光景に俺の行動は正しかった、と実感する。
今日は特に集団の輪が大きい、あんな中に放り込まれてたら俺のズボンは足型だらけだ。

「そういや芦田って東堂の幼馴染だっけ?今日は別々に登校してるけど、いつも一緒だよな」
「…まあな…」
戸田の質問に小声で答える。
いつもあの集団に睨みつけられ脚を踏まれ突き飛ばされるなどされているので一緒に登校していると言っても俺にとっては苦行だが。
「あの東堂と芦田が幼馴染ってなんか変な感じだな、昔から東堂ってやっぱあんな風だったのか?」
「あんな風って?」
未だ集団に囲われたまま笑顔で対応する姿をぼんやり見ながら答えると予想通りの返事。
「頭も良いしイケメンで、誰もに優しい聖人君子みたいな人ってことだよ」

「…あいつが、聖人君子…?」
「そ、ほんと誰にでも優しいし、人間出来てるよな〜」
感心したようにファンに対応する姿を見つめる戸田はぷるぷる震える俺に気付かない。
あいつが聖人君子だと?人間出来てる?
「っんなわけあるか!あいつはな…!」
「うぉっどうした!?」
ガバッと勢いよく顔をあげ反論しようとした瞬間強烈な視線を感じてハッとする。
こ、これは…!

ぎ、ぎ、ぎ、と嫌がる首を回して強烈な視線を放つ人物の方へ向く。
「お、こっち見てる、東堂おはよ〜!」
能天気に手を振る戸田に、奴はにっこりと笑って手を振り返す。
そして俺の方を見てまたもにっこり笑うとそのまま校舎の中へ入る。
「……俺、終わった…」
東堂に手振り返して貰っちまった〜と阿呆な戸田が騒ぐのを尻目に俺はがっくりと机へ突っ伏す。
俺が何を言おうとしたか分かったってのか!?あいつは地獄耳なのかっ!?

そのままがっくり項垂れているときゃあきゃあ騒ぐ声が廊下から聞こえてくる。
そして。
「おはよう、拓」
キラキラと爽やかな笑顔を振りまきながらその原因がまっすぐに俺の方へやってくる。
「お、はよう、光…」
ひく、と引きつる頬を感じながら何とか返す。
うおおおすっげえ睨まれてる!女子が般若になってる!!
かたん、と隣の席に奴が座ると更に視線がきつくなる。
嫌々これは席順だから仕方ないだろっ!?

「今朝は先に行ってたけど、何か用でもあったの?」
その声に早く答えろ、と言わんばかりに周囲からの視線がまた強くなる。
「え、…いや、べ、別に…」
「そう、連絡が無かったから何かあったのかと思って」
にこ、と笑ってそう言う奴に周りは羨望と嫉妬の眼差しを俺に向けてくるが俺は知っている。
『てめえ何俺を置いて先に行ってんだ、ああ?』
と、奴の眼が言っていることを。
「明日は一緒に登校しよう、拓」
『明日も先に行ったら承知しねえぞ、ああん?』
と、奴の眼が俺に脅しかけているのを!!

「今日は帰りに少し用があるんだけど、待っててくれるよね、拓?」
『文句あんのか?あ?』
「…はい…」
途端にっこり笑う光に更にきつい視線を俺に送る周囲。
ううう長年の習慣でついつい従ってしまう俺のチキンさが悲しい…
にこにこ笑う光に俺は内心放課後のことを思って涙した。

そう、俺の幼馴染でもある隣に座る男、東堂光は二重人格さながらの性格の持ち主なのである。
学校では生徒会長まで務めていかにも品行方正な優等生なのだが…
「おい拓、てめえ朝のあれはどういうつもりだ?」
「どどっどういうって…」
お昼は生徒会の仕事があるから、と周囲の誘いを断って俺を携帯で生徒会室に呼び出したと思えばいきなり壁際に追い込まれて凄まれる。
「おかげであのくそ煩い連中の相手をしないといけなかったんだぞ、朝から胸糞悪い」
吐き捨てるように言い捨てる光はひっじょうに柄が悪い。
あの優等生の姿はどこに!?という豹変ぶりだ。

「ったく…おい、飯」
どか、とソファに座ったかと思えば横柄にそう言う。
俺がパンを差し出すとああ!?と睨まれる。
「うっ…!き、今日は母さんが寝坊したんだよ…」
こいつは俺の家族にもネコを被った優等生として接しているのでイケメン好きの俺の母親に気に入られているのだ。
大体そうでなければ何が悲しくてこいつの分まで弁当を持ってきてやらねばならんのだ…
「ちっ、おい、拓もそこ座って食え」
バリ、と遠慮も何も無くパンを食べ始める光が顎でソファを示すので大人しく座って俺も食べ始める。

「あ、あのさ…」
「ん?なんだ」
「放課後だけど…も、もしかして、ち、チームに行ったり…」
しないよな?とおそるおそる聞くが光は意地悪くにやりと笑う。
「当たり前だろうが、バイクで行くから家に着いたら用意しとけよ」
ひいいと引きつる俺ににやにや光は笑ってどんなに俺が嫌だと言っても変える気が無いことを悟る。
光はなんと優等生のふりを昼はしているのに、その実態と言えばここらで一番のチームのリーダーだったりするのだ…
いつもはきっちり制服を着こなして髪も整えているのだが、放課後は髪をワックスで弄ってバイクを乗りこなす。
そのあまりにも違いすぎるギャップのせいか未だにばれていないネコは年季の入った化け猫並みだ。
俺はと言えば小さいころから光の本性を知っているからか何かとこき使われ…身にしみてしまったパシリ根性が空しい。

俺はもう見るからに平凡野郎なのでそういう不良系統の方とは仲良くしたくないんだが…
はああと内心盛大に溜息をつきながら光を見る。
真っ黒の髪に長い睫毛、背も高いし筋肉だってついてる身体。
見かけだけは良い男だと思うんだけどなあ…
「なんだ拓、俺に見惚れても何もやらねえぞ」
「誰が見惚れてるかっ!」
口を開けばこれだよ…今は優等生ルックだから余計その暴言が衝撃だよ…
小さい頃はまだマシだったのになあ…いつからだっけ、光が不良になったのは。

中学に入る頃には悪ガキのトップになってたよな?
ううん…と昔を思い出しているとこんこん、とノックの音。
「どうぞ」
さっきまで足を組んでふてぶてしい態度だったのに今ではもう完璧なる優等生だ。
「失礼します、東堂会長がお仕事をしてるとお聞きしてお手伝いしようと…」
から、と扉を開けて入ってきたのは校内一の美少女と言われている佐田さんだった。
くるんとカールした明るめの髪に大きい眼、ピンクの頬の佐田さんに俺もさすが美少女…と見惚れてしまう。
副会長として集会などで見ることはあったが、こうして間近に見るのは初めてでドキドキしてしまう。

「ああ、ありがとう、拓、仕事の話をするから、ちょっと先に教室に戻っておいてくれるかな」
ぼおっとしている俺に光はにこにこ笑ってそう言う。
笑顔だけど、光の機嫌が悪くなっていることに俺は気がついた。
だてに長く幼馴染はしていない、ネコを被ってても本当はどう思っているのかぐらいは分かる。
「分かった、じゃあ後で」
ぺこ、と一応佐田さんに会釈をして出て行く。
う〜ん光の奴直前までは結構機嫌が良かったのに、なんでいきなり機嫌が悪くなったんだ?
結構あるんだよな、こういうの。

でも今回は佐田さんが来てからだよな、あ、もしかして、光の奴佐田さんのこと…!?
だからまだ時間あるのに俺に先に出てけって言ったのかな。
確かに格好良い光と美少女の佐田さんならお似合いだし…
う…なんか今ちょっと胸が痛かったような…?
気のせいか?
そうそう、それに佐田さんも光が会長だから副会長になったっていう噂だし…
うん?また痛かったような…ハッ!!

も、も、もしかして心臓病!!?
あわわ若いからって調子に乗ってお菓子とか塩分とか取り過ぎた!?
甘い物好きだからって食べすぎた!?
ま、まだちょっとチクンって痛んだだけだから大丈夫だよな!?
今から気をつけたら大丈夫だよなっ!?
よし、今日から節制するぞ!!
まずは…うん、甘い物我慢だよな…うう、辛いなあ…

俺は食べようと思っていたスイーツの数々を想って心の中で涙した。




110110
(ああ…スイーツ…)

20万hitありがとうございます!
ついこの間10万hitだったような気がするのにもう20万…!
これも皆様のおかげです、本当にありがとうございます!
20万hit記念は単純に20万→二重→二重な性格の攻め、です(笑)