新春3 | ナノ
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新春企画 3


こ、これはどういう状況なんだろう…
今僕はソファに座るアシア様の膝の上にいる。
そう、膝の上。
なんで!?いくら僕が小さいからっておかしいよね!?
なんでええ!?

あの後一番良いホテルに着いたかと思うとそのままこれまた一番上の部屋に連れて行かれた。
ようやくおろしてもらえる、とほっとしたのもつかの間でなんとアシア様は僕を抱っこしたままソファに座っちゃってそれからずうっとこのまま!
困惑したまま膝の上に抱かれるままの僕とアシア様にようやく白い人が声をかける。
「アシア、嬉しいのは分かるが先に彼に説明しないと」
俺は少し外すよ、と部屋に二人っきりになるとようやくアシア様は僕に声をかけてくる。
「そうだな…さっきも言ったように俺はレピュを指名しようと思っている」
頭上から落ちて来た声にハッとする。

そ、そうだ!なんでか分かんないけど僕を指名したいって言ってるんだった!
「む、無理ですっ!!ぼ、僕は地味でどこにでもいるミニウサギだし…っ」
代表なんて無理!
もちろん容姿とかが普通ってのもあるけど、なにより代表になったら他の怖そうな種類の人達とも交流したりするんだよ!?
それにそのための専用の街に行くことになるし!
そ街ってなんでか強そうな種類の住む街に囲まれてるんだよっ!?
僕には絶対に無理!!

「きっともっと相応しい人が…」
「俺はレピュしか考えられない」
必死に言い募る僕の声を遮る様に声が降ってくる。
「レピュ…不安なのは分かる、でも必ず俺が守るから…」
ぎゅ、と後ろから腕が回されて抱き締められる。
ふわ、とした髪がほっぺたに当たる。

わわわわいいい、息がく、く、首に!!!
どどっどどどうしようドキドキするよ〜!!
「…俺の傍にいてくれ…」
掠れたみたいな声が間近で響いて僕はぴんっと耳を立てたまま硬直状態。
ひゃわわわわなんだか背中がぞわぞわするよお!!
「レピュ…」
する、とほ、ほっぺたが僕のほっぺたに!!!

「受けてくれるな…?」
熱い息が首、首に!!!
ひわわあわあわわももももしかしてここで断ったら僕、がぶって咬まれちゃう!?
ほ、本性はトラだし僕らウサギなんて一咬みでおしまいに…!!?
そそそそんな痛くて苦しい思いは嫌だよっ!!!
「ゎ、分かり、ましたぁ…」
そんな思いするくらいならちょっとぐらい怖くても我慢して代表になるよおおおお!!!

「本当か…!?ありがとう、レピュ…!これからは俺が守ってやるからな…!」
バッと顔を覗き込んでそう言ったかと思うと嬉しそうに笑ってそのまままたぎゅううっと抱き締められる。
ぼ、僕の顔今絶対真っ赤だよ〜!
あんな綺麗な笑顔をこんな近くでするなんて卑怯だよう!
し、心臓がドキドキして止まんないよ〜!

「話はついたみたいだな、レピュ君、俺はアシアの兄のイニス、これからよろしく、後早速で悪いけど今夜儀式を済ませよう」
部屋に戻ってきた白い人は僕を抱き締めたままのアシア様を見てにっこり笑ってそう言った。
え、ていうか、ぎ、儀式って…
「そうだな…衣装は?」
「用意してある」
え、え、と二人の顔を交互に見やる僕に気付いてアシア様はふ、と笑う。

「レピュ、こっちだ」
すい、と手を引かれて隣の部屋に。
「わあ…!綺麗…」
そこには儀式用の衣装が二つ用意されてあった。
新しく選ばれるごとに変わるそれは12種族それぞれの技術を寄せ集めて織り上げられる最高級品。
金糸銀糸をふんだんに使われた衣装の綺麗さに僕はぼおっと言葉もなく見惚れてしまった。

「これを着て儀式をする」
「すごく綺麗…でもアシア様ならまだしも、僕には似合わな…」
い、と続けようとした言葉はすい、と頬を撫でられて止まってしまう。
「レピュにきっと似合う…それに俺のことはアシア、と…」
片手で頬を包まれたままじいっと見つめられドキドキしてくる。
あ、アシア様に見つめられるとどうしてかこんなふうになっちゃうんだよ〜!
なんとか視線だけでも逸らそうとするけど覗きこまれるように見つめられて逸らせない。

「あぅ…あ、アシ、ア…」
見つめらるのに耐えられなくなりそう小さく呼ぶと、ふわっと綻ぶように笑顔になる。
はうううううむ、胸が〜!顔が熱いよ〜!!
「レピュ…」
なぜか段々近寄ってくるあ、アシアに内心ドキドキだけど動けない。
はわわわわわぶつ、ぶつかっちゃうよ〜!!
思わずぎゅうっと眼を瞑ってしまう。こ、これ以上見てられないよ〜!!
ふ、とアシアの息が感じられるくらいまで近付いた時イニスさんの声がかかる。

「悪いがお楽しみは後にしてくれ、今のお前なら俺の気持ちも分かるだろう?アシア」
苦笑したその声にかあっと顔が熱くなる。
ぼ、僕今、な、なにをしようと…!?
「…はぁ、仕方ない…式場で会おう、レピュ…」
する、と最後に頬を撫でられてなんだか熱っぽい眼でそう言われて思わず背中がぞわぞわしちゃった。
バサ、とかけられていた衣装の大きい方を持ったアシアが部屋を出ていく。

「アシアは先に式場に移動してるから、レピュ君も着替えたら移動しよう」
イニスさんの声にぼおっと出ていく背中を見ていたことに気付いてハッとする。
そ、そうだった、僕も着替えないといけないんだった…!
「着替えたら呼んで、俺が式場まで連れていくから」
「あ、ありがとうございます…」
ぺこんとお辞儀したらくす、と笑う声。
「いいんだよ、…これからは君も俺の義弟になるんだからね」
「え?」
後半の声が小さくて衣装を手に取っていた僕は聞き取れなくて聞き返すけど、なんでもないよ、って言ってイニスさんは隣の部屋に移動して行った。

なんて言ってたのかな?
おとうとがどうのとか言ってたような…?
弟のアシアさんの儀式だからお手伝いしてあげるよって言ってたのかな?
多分そんな感じだよね、うん、よ〜しサッサと着替えちゃおう!
僕みたいな地味なの相手なら儀式も手を握るとかそういうのにしてくれるだろうし、ちゃっちゃと終わらせちゃったら皆すぐ忘れるよね!

◇◇◇◇
どっどど、どうしようすごい緊張してきた…!!
衣装を着て儀式をする広場についたんだけど…僕のいる舞台裏でも分かるぐらいの熱気が感じられる。
もう既にアシアが舞台に上がってて僕を呼んだら指名の儀式をしてお終いなんだけど…
どどど、ドキドキする!!
ややややっぱり僕なんかじゃ駄目だったんじゃ…!

怖気づいているとイニスさんがぽん、と肩に手を置いてくれる。
「心配いらない、アシアはレピュ君を選んだんだ、自信を持って」
「い、イニスさん…で、でも…」
穏やかな声にほんの少しだけ落ち着いたような気がしなくもないけど、やっぱり駄目。
緊張からかブルブル震えが止まらないよ〜!!!
「…ならアシアを信じて」
「え…?」

イニスさんを見上げるとにこ、と笑顔。
「舞台に上がればアシアだけを見ていればいい、全て任せれば大丈夫」
「ぁ…」
「行っておいで」
とん、と一歩前に進まされると同時に幕の向こうからアシアの凛とした声が響く。
「それでは今回のウサギの代表を指名する…レピュ!」

するすると眼の前の幕が上がる。
どくどく心臓が煩い。がくがく脚が震える。
どうしよう、やっぱりぼ、僕には無理…

「レピュ」

凛とした声にハッと顔をあげる。
真っ直ぐにこちらを見るアシアの瞳と視線が絡む。
ほんの数m先に美しい衣を身に纏ったアシアがいる。

すうっと心が落ち着いていく。
アシアを信じていれば、大丈夫。
震えが止まって、音も聞こえなくなる。
ただ眼の前のアシアだけを見つめて、一歩踏み出す。

どうしてこんなに安心できるんだろう。
会ったばっかりなのに。
でもどうしてだか理由は無くても分かる。
アシアがいれば大丈夫。

ゆっくりゆっくりと近付いて行く。
視線はずっと絡まったまま。
金色の瞳の中に炎が揺れているように見える。
その瞳に惹きつけられるかのように、一歩ずつ距離を縮める。

もう僕でも手を伸ばせば届く距離。
金色の熱い視線に、ぞくりと言いようのない震えが身体を走る。
揺らめく金色に、魅せられる。
「…レピュ…」
熱く掠れた声が聞こえた、と思った瞬間、アシアが腕を伸ばす。
「…ア、シア…」
そっと頬を撫でられて、僕も小さく名前を呼ぶ。

どうしてか分からないけど、どうしても名前を呼びたかった。
する、と手が顎に移動してくい、と持ち上げられる。
そうすることが自然だったように、僕は眼を閉じる。
自分でも理由が分からないけど、そうしていた。

「…ん…」
ふわ、と唇に柔らかい感触。
ああ…僕、アシアとキスしちゃったんだ……ってキスううう!!!?
一気に現実に返ってバッと眼を開く。
至近距離に見える長い金色の睫毛にぎょっとする。
はわわあわああああわわわわわわ!!!!
ぼぼぼ、僕は何をっ!!!?

思わず我に返ってぐっとアシアを押し返そうとするけど、いつのまにか後頭部と腰をがっちりと掴まれていて離れない。
ふぐぐぐ…!ぜ、全力なのにぴくりともしない…!!!
思わず一瞬脱力した瞬間。
にゅる、とした感触。
!!!!!?!?!?

「ふん…ん、んん…!」
ひゃああああし、し、し、舌!舌が!!
僕の口の中にアシアの舌がああ!!!
ふあああああぼく、僕の舌があああああ!!!
「んっ…ぁ、ふぁ…っんん…」
た、食べられてるみたい…!
ぎゅううって抱き締められて口の中を掻き回されて、くらくらしてくる。

「んん…ふ…」
息が上手く出来なくて力が抜けてくる。
ああ、もう、僕、駄目…!
かくん、と力が抜けて僕はアシアにくったりと凭れかかったまま、気を失ってしまった。

◇◇◇◇
「…っは…ちょっとやりすぎたか…」
くったりと俺に身体を預けたまま気を失ってしまったレピュを抱きしめながら少しやりすぎたな、と思う。
軽くするぐらいで終わらすつもりが余りにも甘い感触に思わず本能のまま求めてしまった。
しかもレピュは慣れてないのか、必死にん、ん、と鼻で息をしようとする様子が可愛くて尚更高ぶってしまった。
今もレピュが気を失わなければどうしていたか分からない。

「…これで儀式を終了する」
ぐい、とレピュを横抱きにして騒然とした式場を後にする。
こんなに可愛らしい姿を儀式とは言えいつまでも見せていたくなどない。
「お疲れ、見せつけてくれたな」
「イニス…」
「ま、可愛い義弟が出来て俺も嬉しいよ」
イニスの言葉に腕の中のレピュを見る。

ほんのりピンクに染まった頬に濡れている唇。
まだ収まりきらない熱が欲しいと訴える。
「…アシア、分かってると思うけど寝込みを襲うのはいけないぞ、気長にすることだ」
俺という手本があるだろ、と苦笑するイニスにはあ、と長い溜息をひとつついて分かってる、と返す。
大切にしたい、と高まった熱をなんとか押し込める。
まだ知り合ったばかりだ、慎重に進めて行かないと。

「…レピュ…」
我慢はする。
だけど、キスくらいはもういいだろう?
ちゅ、ともう一度だけ軽くキスをして俺はぎゅっと抱きしめる腕に力を込めた。

◇◇◇◇
「レピュ、ただいま」
「ん…おか、おかえりなさい、アシア…」
あれから僕は眼を覚ましてからトラの街にも挨拶に行った。
目覚めた直後は僕は妙に意識しちゃってたんだけど、なんでもトラの人達は愛情表現としてき、キスはよくするんだって。
だから親愛の表現としても使うんだって教えられて、あのキスもそうだったのかな、と思って気にしないことにした。

だってあれからアシアはおはようとかただいまとか、挨拶するごとにキ、キスしてくるんだもん…。
い、今もしたけど、やっぱりまだ恥ずかしいなあ…。
まだまだ照れちゃうんだけど、多分これがトラの人達にとったら普通なんだよね…?
あ、そうそう僕は今アシアと一緒に暮してます。
今の代表とか、昔の代表が住みついてる街に住んでるんだけど、もともと一人では広かったからってアシアが僕も一緒に住ませてくれたんだ。
アシアってとっても優しいよね!

近くにはイニスさんとその奥さん…ん?男の人だから夫さん?でも子供を産んだって言ってたし…とにかくイニスさん家族が住んでて、アシアもイニスさんもお仕事してる昼間は奥さんと子供たちと一緒に過ごしてます!
僕も何か働こうか、って言ったけど、この辺りでは働くのは専ら身体の大きい肉食獣ばっかだから危ないってアシアに反対されちゃった。
でもその代わり家事をして欲しいって言われたから、家の仕事をしてるよ。

とっても過ごしやすくて心配していた怖いことは全然なくて、すっごく楽しいんだ!
でも最近なんだかアシアと二人っきりだとドキドキが止まらないんだよね…
い、嫌なドキドキじゃなくて、なんていうか、わくわく…?
とにかくドキドキするんだ、特に、その、夜…。
それにアシアがなんだか嫌に熱っぽく見てくるっていうか、背中がぞわぞわするっていうか…

思い切ってイニスさん夫婦に相談したら、もうすぐアシアが教えてくれるってイニスさんがにっこり笑って教えてくれた。
なんでか奥さんは何か言いかけてイニスさんにキスされてくったりしてたけど…多分同じことだよね!
とにかく僕は楽しく暮らしてるんだ!

「レピュ、おいで」
「うん」
とすんとアシアの脚の間に座るのが最近のお気に入り。
アシアがぎゅって抱き締めてくれるんだ。

「ん…くすぐったいよ〜」
はぷって耳をはむはむされてぴくぴく耳を動かす。
最近こうしてかぷって咬んでくるんだよね〜甘咬みみたいで痛くないから別にいいんだけど。
「レピュ…今日の朝言ったこと覚えてるか?」
「え、うん!一緒に寝るんでしょ?」
「…楽しみだな、レピュ」
「うん」
そういや一緒に寝るのは初めてなんだよね〜!
楽しみだなあ!

僕はその夜アシアの今までの言動の意味を身を持って知ることになるとも知らずに温かい胸に身体を預けて安心しきっていた。




110103
(レピュ…愛してる)
(ん、ん!あ、しぁ…っ)

これで一応完結です
レピュ君は美味しくアシアに食べられちゃうと思います(笑)

新春企画を読んでくださってありがとうございました
これからもよろしくお願いします