20m | ナノ
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距離20m


「古川って甘い物好きだよね?」
「え?好きだけど…」
東がいきなり休憩時間に聞いてくる。
「良ければコレあげるよ」
差し出されたので手の平で受け取る。
ころん、と転がる白い包み。

「飴?」
「うん」
ニコニコしたままこちらを見つめてくる東に、食べることを期待されているんだろうと、包みを開いて口に入れる。

「美味しい?」
「ミルク味で美味しいよ」
「良かった」
思っていたより美味しくて、自然に笑顔になる。東もそんな俺を見て嬉しそうに笑う。

「気に入ってくれたみたいで良かった。はい、あげるよ」
「えっこんなに?」
ガサ、とまだ沢山入った袋を東が渡してくる。こんなに沢山、と困惑して東を見る。
「俺はそんなに甘い物が好きなわけじゃ無いし、ソレは古川のために用意したものだから、気にしないで貰って欲しいな」
にこ、と笑ってサラリと返される。

「え?」
どういう意味かきこうとしたとき、チャイムが鳴る。
困惑気味の俺にふ、と笑って東は前に向き直る。
その何か含んだような笑顔にドキッとする。
いつもの爽やかな東と違い、どこか怪しい雰囲気を纏うその微笑に男と知りながらドキドキしてしまった。

取り敢えず落ち着こう、と東の言葉の意味を考える。
そのまま受け取ると、東はわざわざ俺のために美味しい飴を用意した、ということになるが、何故俺のためにそんなことをするのかわからない。
じゃあどんなつもりで、と思ったとき、はっとする。
そうだきっと東は俺が受け取りやすいようにとあんなことを言ったんだ、と思い至る。
そうかそうか、と納得して飴をしまい、授業に集中する。

俺はそんなに深く考えずにすぐその東の発言を忘れてしまったのだが、それ以降俺がそのミルクの飴を食べているのを見るたびににこ、と笑う東に首を傾げる日々がしばらく続いた。






100909
(でもどうして俺が甘い物好きって知ってたのかな)

餌付けされていることに気付かない古川君