てあらにあつかってはいけません 2 | ナノ
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てあらにあつかってはいけません に


「こいつが?お前ら…俺を騙そうと言うのか」
「ち、違いますって…!こいつがトモですって!」
「何を言う!男じゃないか!」
「だからトモって男なんですって…!」
「大体脇口はどこだ?まさか…逃げ出したんではなかろうな!?」
「ひっ!さ、探してきますっ」
「ふん…あいつらといい脇口といい、信用ならんな…」
お花畑で動物達と追いかけっこをする夢を見ていた俺は、間近で交わされる低い声の会話にゆっくりと意識が覚醒するのを感じた。

誰だろう…今何時?
あれ?なんだろ俺のベッドってこんなに硬かったっけ…?
それにちょっと寒い…?
ん?俺崎田君に会ったような気がするんだけど?

ちょっと記憶を整理してみよう。
朝は普通に起きたよな?
んでいつも通り待ってたら崎田君が走ってきて…!!!
そうだ!!!崎田君!!!
不良に蹴られてたんだ!!!
俺、気を失っちゃって…!!!
てことは俺、今どこにいるのおおおおおおお!!!!?
さ、崎田君、崎田君はっ!?

ようやくどれだけヤバい状態か理解した俺はそろそろと眼を開ける。
ど、ど、どこここおおおおおおお!!!?
そ、倉庫!?
どうやらどこかの今は使われてない倉庫みたいなんだけど…
ちょちょちょちょ、俺、縛られちゃってるううううう!!!
なんで!?

後ろ手に縛られてソファみたいなところに寝かされてる。
いや、コンクリートむき出しの地面よりはマシって話なんですけどね…?
ででででも崎田君の姿が無いっ!!
倉庫内を見ようと身じろぎした時、真上から声がかかり俺は硬直する。
「む、起きたか、お前に聞きたいことがある」
低い声に俺は拒否反応を起こす首をなんとかぎ、ぎ、と動かし声の方を仰ぎ見る。

でででででっででっでで出たあああああああ!!!!!!
りりっりりりりりりリーゼント不良おおおおおおお!!!!!
「畑山さん、どうやら脇口ってやつ余りいい噂が無いようで…あ、起きたんスか」
「そうだ…今から確認するところだ」
ぎょひいいいいいいいいい!!!!
りりっりリーゼントが一杯いいいいいい!!!!

眼を見開いたまま硬直する俺にリーゼントの親玉、畑山が問いかけてくる。
「お前は柏木茜の『トモちゃん』か?」
こ、こ、こ、こ、怖いいいいいいいいいい!!!!!
何この人昔の漫画に出てきそうないかにもな不良顔なんですけどおおおおおおお!!!!!
クラスの皆は普通にイケメンとかばっかだし不良は不良でもタイプが違うっていうか俺まだこういうザ・不良みたいな人は駄目ですからああああああ!!!!!
耐性なんてありませんからあああああああ!!!!

「む、聞こえないのか?おい?」
ぬっとその大きくてごつい手が俺に伸ばされるのを見たとき、俺は限界を超えた。
「……ぅ……」
「何?」
「……っうわああああああああんっ!!」
「ぬあっ!!ど、どどどうしたっ!?」
いきなり大声で号泣しだした俺にぎょっとしてリーゼント達がうろたえるのが分かるけど、もう止まらない。

朝からめちゃくちゃ怖かったんだぞおおおおお!!!?
今まで泣かなかっただけ頑張ってたんだよおおおおお!!!!
俺チキンなんだよっ!!こんな怖いのは駄目なんだよおおおっ!!!
眼の前で崎田君が蹴られたりしてるのだって、すっごく怖かったんだからなあああっ!!

「ど、どうしたんだ、おいっ!どうすればいいんだっ!?」
「どどどうすればって、そんな…!」
「わあああああああんっ!!」
「ほ、ほ〜ら解いてやったぞ…あああどうすれば…っととととにかく何でもいいから持ってこい!」
「はいっ…っほ、ほ〜らカッコイイ般若の刺繍の短ランだよ〜」
「わああああああああああん!!!」
「バカもんっ!!もっと泣き始めたじゃないかっ!!他にないのかっ!!」
「えええっほ、他…あっ虎とかは…」
「わああああああああああん!!!」
「ええっそれも駄目かっ!?あああ他、他はっ!?」

◇◇◇◇
「うぅ〜っ…ひっく、ぅ〜」
「ほ、ほ〜ら怖くないぞ〜だから泣きやむんだぞ〜」
「ほらほらくまちゃんだよ〜」
ようやく落ち着いてきてしゃくりあげるだけになってきた俺に、必死にリーゼント達が声をかけてくる。
俺の周りは彼らがどこからか用意してきたぬいぐるみやおもちゃで一杯だ。

「ぅ…ひっく、…」
ぐし、と涙がようやく止まった眼を拭う。
そんな俺を見てほっとしたようにリーゼント達は肩の力を抜く。
「や、やっと泣きやんだか…」
「……ここ、どこ…?」
ようやく見れるようになったリーゼントに聞くと、「ここは俺の家の管理する倉庫だ」と教えてくれる。

「なんで、俺…っ」
「あああああ泣くな!?お、俺達は柏木茜の『トモちゃん』に柏木との対決の仲介をしてもらおうと思ってだな…そうだ、本当にお前が『トモちゃん』なのか?」
またじわ、と涙の滲んだ俺に、慌てながらそう聞いてくる。
茜君のトモちゃん?
確かに茜君は俺のことをトモちゃんって呼ぶけど…
「お、れは川島智広、で茜君は、トモちゃんって、呼んでる…」
こくん、と頷いてそう言うとリーゼントは何とも言えない顔をする。

「…あの極悪非道で残虐な柏木とつるんでいるとは思えんな…ハッ!まさか脅されているのかっ!?」
真剣な顔で聞いてくるリーゼントに首を横に振る。
「あ、茜君、は、優しい、よ…?脅されてなんか、無い、よ…」
すん、と鼻を鳴らしてそう言うと、またも微妙な顔。「…嘘を言っているようには思えんし…腑におちんが…まあいいだろう、俺は畑山だ。どうやら脇口が手荒に扱ったようで悪かったな」
ぺこ、と頭を下げる畑山にきょとんとしてしまう。
「あいつが俺が柏木との仲介を頼みたがっていると知ってな、協力してやると強引に言ってきてつてのない俺は仕方なく頼んだんだが…どうやら間違いだったようだな」
苦々しい顔でそう言う畑山に周りのリーゼント達も頷く。

「人に頼もうと言う考えが浅はかだった。俺は正々堂々自分から柏木に対戦を申し込む、巻き込んですまなかったな」
「う、ううん…」
ふる、と頭を振ってそう言うと、ほっとした顔をする。
も、もしかしてそんなに悪い人じゃ、無い、のかな…?
さっき俺が大泣きした時も一生懸命あやそうとしてたし…

「しっかし川島君みたいに純粋な子があの柏木と知り合いとはね…分かんないもんっすね〜」
リーゼントの一人がそう言うのに?と言う顔をすれば、えっと言う顔をされる。
「…まさか川島君は知らないんすか?あの柏木の暗黒武勇伝」
あんこくぶゆうでん?茜君の?
きょとんとした俺の様子にえええっとリーゼント達が相談しだす。

「川島君何にも知らないで柏木の傍にいるみたいですよ…」
「あんなに純粋じゃ柏木の餌食になっちまうぞ!?」
「これは川島君が今後身を守るためにも教えておいてあげた方がいいんじゃ…?」
「でもあんまり詳細まで言うのは刺激が強すぎるぞ、また泣きだしたらどうする」
ひそひそ話してるけど、丸聞こえ。
刺激の強い話って…一体どんななんだろ?
そう言えば茜君の過去の話って聞いたことないなぁ…
今度聞いてみようかな?

ようやく纏まったのか畑山さんが真剣な表情で俺に話しかけてくる。
「いいか、川島、柏木はやたらめったら強くてな、小学生のころから俺達の間では有名だった」
しょ、小学生のころから!?
す、すごい小さいころから強かったんだね、茜君…
「中学に入ると冷酷非道なオークの総長となってこのあたりのトップとして君臨した、その頃のあいつの喧嘩と言えばもう酷いものだった」
顔をしかめて言う畑山さんに周りのみんなも頷く。
「酷いって…?」
「助けを請う者も容赦なく気のすむまで冷酷に笑ったまま人を痛めつける、柏木はまるで獣だった」

今の茜君からは想像もできない姿にえ、と思う。
「一度キレたら敵味方関係なく周囲にいる奴は標的としてみなす、俺の知る柏木はそういう男だ。川島、悪いことは言わない、柏木の餌食になる前に少し距離を置いたらどうだ?」
「川島君みたいにちっこいと一発で病院行きっすよ」
「一緒にいたらいつか巻き込まれちまうぜ」
心配そうにそれぞれ声をかけてくれるのは嬉しいんだけど。

本当に茜君はそんな人なのかな?
そりゃ中学の時はそうだったのかも知れないけど…
今の茜君はそんな酷い人には思えないよ?
俺の知る茜君は、ちょっと怖い時もあるけど優しい茜君だもん。
いつもにこにこ笑ってるんだよ。

俺が自分の知る茜君を話そうと口を開いたとき、轟音が近付いてくるのが聞こえた。
「ひゃっ!?な、何…っ!?」
「この音…柏木か!!」
畑山さんがそう言うとほぼ同時に開いていた扉から、倉庫に大きなバイクが入ってくる。
ギャッと音を立てて止まったそれに跨っていた人は。

「トモちゃん…!!」
焦ったように少し髪と息を乱して、うっすらと汗を滲ませた茜君、その人だった。




110109
(その声に胸が安堵する)

畑山は古風!を心がけて書いたキャラです
容姿は昔の番長キャラをイメージして頂ければいいかと
大泣きしたトモちゃんに慌てるシーンが書きたかった(笑)