しげきぶつをあたえてはいけません | ナノ
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しげきぶつをあたえてはいけません いち


俺はいま人の視線と言うのは一種の凶器になりうるということを実感している。
今日は高校での授業の初日なのだがー。
「おい、見ろよあいつ…」「確か柏木さんが…」
登校途中、学校に近付くに従い増えて来た不良から逃げるようにして歩いていた俺なのだが、一人が気付いた途端視線が俺に集中する。
ひいいいいいい!!!
めっちゃ見てる!!!不良が!!不良が俺をめっちゃ見てるうううううう!!!!
正直もう泣きそう。
だってそうだろっ!?俺、チキンなんだからっ!!(泣)

半泣き状態で教室に到着、さあ入ろう、と思ったんだけどー。
ふ、不良がめっちゃいるううううううう!!!!
なんでっ!?まだ1時間目始まって無いよおおおおおお!!?
そんなに真面目に不良は学校に来ない、という常識はどこに行ったんだっ!?
怖過ぎて俺が教室の中に入れないだろおおおおおおおお!!!
ドアの前で固まっているとー。

「んぁ?あ、お前…」
ガラッとドアが開いて硬直する俺の前にはすっごい剃りこみ入った茶髪の不良。
俺、死んだ…。
じわっと恐怖で涙が滲むのが分かる。
だ、だ、だってもう俺限界!!!
朝から超怖い不良の視線にさらされて来たんだよっ!!?
さらにこ〜んな近くですっごい怖そうな不良と対面したんだよっ!!?
もう涙腺が限界だよおおおおおおおお!!!!

「ぅ、ぅう…っ」
「え、んなっ!?おいっ!な、泣くなっ!?」
じわあっと俺の眼に浮かぶ涙に気付いたのか、不良はぎょっとした顔をして慌てだす。
しかし不良の声で教室の中にいた不良たちもこっちを見てきてもうチキンハートの俺は限界。
まさに俺の眼からぽろっと涙が零れおちた、瞬間。

「トモちゃん、おはよ〜!どしたのこんなとこつったっt…」
ひょこ、と横から覗き込むようにして満面の笑みで茜君が挨拶してきた。
「ぁ…」
びっくりして眼を見開いたら、ぽろ、とまた一粒零れた。
茜君は俺の顔を見て驚いたように目を見開いて、そしてー。
「…誰が泣かせた…?死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁ…?」
むぎゅ、と俺の顔を胸に押しつけるようにして、低い声でそう言った。
あんまりにも低い冷たい声で言うからびっくりして俺の涙も止まった。
それになんだか茜君が来てくれたことでほっとしたし。

「あ、あの、あ、茜君?」
ひいっと教室の中から小さく悲鳴が聞こえるのを不思議に思いながらも、顔をあげるとそこには眉を下げた表情の茜君。
「ごめんねトモちゃん、俺が遅かったせいで怖い思いしたよね…大丈夫、俺がちゃあんと制裁したげるから」
「え…いや、あの…」
ただ単に俺がビビって泣いてるだけで…と言おうとしたんだけど、またむぎゅって押しつけられてしまった。

「誰がやった…?お前か、真淵?」
「っく…」
見えないからよく分からないけど、真淵?さんの苦しそうな声にハッとする。
け、喧嘩なんかになったら俺、真っ先に病院行きだよ!!
ここは断固として阻止せねばっ!!
「あ、茜君っ!!」
意を決して大声を出すとびっくりしたように茜君は腕の中の俺を見下ろす。
あっさっきの不良の襟元掴んでるしっ!!
や、ヤバい!!ここは友好的に納めねば…!!
で、でも何と声をかければ…!?
あああああ分からないいいいいい!!!

「お、おはよっ!!」
な、なんて間抜けなんだああああああ!!!
よりにもよってそれえええええ!!!?
俺ってばあああああああ!!!
ええいこうなったらもうとにかく大人しく席に座るようにしたらいいんだっ!!!
「お、俺授業の準備したいなあっ!あ、茜君も準備しよ?」
俺のあほおおおおおおおおおお!!!!
どんなだよ!!!意味分かんないよ!!
テンパってるんだよ!!!

もう俺の脳内は支離滅裂だ。
でも必死な俺に分かってくれたのか、茜君ははあ、と仕方なさそうに溜息をひとつして苦笑してくれる。
「…も〜トモちゃんは優しいなぁ…」
す、と手を離した途端不良は勢いよく咳き込む。
うわっ大丈夫かな…
「今回は優しいトモちゃんに免じて許すけど〜二度は無いよ?」
分かってるよね、と茜君はそう言ってクラスを見渡した。
クラスの不良が青い顔で必死に頷く姿は夢に出そうなくらいある意味恐怖でした…。

◇◇◇◇
「…で、あ、あるからして…」
「まじかよ〜!!」「ばっかじゃね!?」「ぎゃはは」
じゅ、授業が始まったんだけど…全然聞こえないよおおおお!!!
ちなみに俺は先生に何かあればすぐ助けを求めれるよう前から一番目。
本当はなにかあったらすぐ逃げれる入口すぐが良かったんだけど…廊下に近いとサボってる不良に近いので諦めた。
だってもしむしゃくしゃした不良が来たら一番に殴られる位置だよっ!?
俺には無理っ!!!

というわけで教卓の真ん前に俺は座ってる。
ちなみに横は茜君。
茜君は後ろの一番良い席でも良いんだよって言ってくれたけど…授業が聞こえないだろうと思って丁重に断っといた。
案の定騒がしいからここで良かったと思ったんだけど…。
一番前でも聞こえないなんて予想外だよおおおおお!!
俺はちゃんと授業受けないと点数とれないから、どうしたらいいんだあああああ!!

「…ね、トモちゃん真面目に授業受けたいの?」
途方に暮れていると茜君が聞いてくる。
俺はこくりと頷く。
「俺、ちゃんと聞かないと分かんないんだ…」
「そっかあ…分かった!」
にこっと笑う茜君。
え?何が分かったって…?

「お前らトモちゃんが授業受けてる間は静かにしろ、音立てたら俺直々にぶっ飛ばすぞ?」
くる、と後ろを向いて軽い感じに茜君がそう言った途端教室は無音に。
「これで大丈夫だね、ほら先生サッサと続きしなよぉ」
「ひいっ!!こ、こここここここれは…」
先生どもりすぎ!?
いや気持ちはわかるんだけどっ!!
逆に無音過ぎて怖いんですけどおおおおおお!!!?
そうですよねなんかうっかり忘れそうでしたけど茜君総長でしたもんね…!!!

俺はにこにこ見つめてくる茜君の視線を感じながら、教師の声だけが響く逆に無言が恐ろしい空間で授業を受けた。
……お、俺もしかしなくてもすっごい人とお友達になったんだな……




101129
(べ、別に俺は授業が聞こえたら、良い、んだよ…?)
(そお?んじゃその程度なら話していいよお)

いきなり無音になったら怖いですよね〜
ちなみに授業中の茜君はトモちゃんがちまちまノート取るの見て悶えてます(笑)