九度六分の熱 | ナノ
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九度六分の熱


「こちらに用意しましたっ」
「ああ」
どこか嬉しそうな親衛隊員が用意してくれたのは大山の食べかけのもの。
俺は大山を抱きかかえたままドカッとソファに座る。
全くイライラする。
大体なんだあの一年はっ!?
いきなり手に触って、あまつさえ握るだとっ!?
しかもよりによって大山の!!
やはり一発ぐらい殴るべきだったか、と眉を顰めていた俺は、腕の中からの呼び掛けにハッと声の方を見る。
そして固まった。

「…ぁ、あの…ま、前田?は、離して…ほしぃ、んだけど…」
恥ずかしいのか頬を赤くしてちら、とこちらを上目づかいに窺いながら、大山が俺の膝の上でそう言う。
そう、俺の、膝の、上、で。
「っ!!!!!!!」
一気に顔が赤くなのが分かる。
ま、待てよ今まであの一年に腹が立っていて気付かなかったが、お、俺は結構大胆な事をしてしまったのでは!?

ま、まず後ろから抱きしめた、よな…!?
し、しかもお、お前は俺のものとか言わなかったか…!?
い、いや実際そうなったら良いとか思って無くも無いこともないんだけどっ!?
て、ていうかうんって言ったよな!?
大山、確かに頷いてたよなっ!?

し、しかもその後抱き上げてそのまま移動したよなっ!?
そのまま座ったから今、俺に跨るみたいに大山座ってるし!
お、俺の腕腰に回したままだしっ!?
や、ヤバいなんか恥ずかしがってる大山が異様に可愛いんだけど!?
ていうか頷いたなら、お、大山、お、俺のことす、好き…!?
くそっ!ええいこうなったら聞いてしまえっ!!

「お、大山…?」
「っ!」
うつむいた大山に話しかけると、びく、と身体を揺らす。
わ、耳まで赤い。…可愛い。
「〜っ!な、何!?」
うわ、何その上目づかいしながらの精一杯強がってますみたいな顔!
ヤバい位可愛いんだけど…ってだから今はそれは置いといて!

「さ、さっきの…覚えてる、よな…?」
「…っ」
更に赤くなる顔。
わ、これって完璧覚えてる、よ、な…?
つられて俺も顔が更に赤くなるのが分かる。
何を言えば、と迷ううちに大山が口を開く。

「っあ、あれ、別に意味無いんだろっ?お、俺をあの場から呼び出すためのものでっ!」
その言葉に、またぷつん、という音。
「そういえば何のよ…っんん!?」
半ば無意識、本能のままに行動した、と思う。
「ん…っぁ、まえ…んん…!」
気付けば俺は大山の後頭部を片手で押えこんで、キス、をしていた。

「っふ、ぁ…ん…っ」
細い腰も押さえ込み、小さな抵抗も閉じ込めて。
苦しいのか上気する頬に、うっすら瞳が潤み始めるころ、俺はようやく大山を解放してやる。
「…っは、ぁ…」
ぐったりと俺に身体を預けて荒い呼吸を繰り返す大山の頬を両手で掴んで、俺は至近距離で眼を合わせたまま口を開く。

「…あれは本当だ、お前は今から俺の、だ…いいな?」
「…ぅ…」
ぼんやりしている大山の瞳を覗き込んでそう言う。
自分でも聞いたことの無い様な、甘さのある声。
「…口に出して言って、俺の、って」「…ぅ俺、前田、の…?」
「…名前で、もう一回…」
「…俺は、洋一、の…」
「そう、俺の…」
もう一度顔を近づけてキスする。

震える睫毛とか、紅潮した頬とか。
たっぷり舌を絡めて、大山の反応を堪能した後口を離す。
「…ふぁ…っ」
はあはあ、と息をつく大山は、やっぱりかわい…って!?

いま、おれ、なに、を…っ!!!?
ボッと顔面といわず全身が熱くなる。
くったり身体を預ける大山を抱く腕がかちんと固まる。
い、いま、気付いたら、おれ、き、キス、してた、よな?
し、しかも、お、おれのもの、とか言わせて…っ!!!?

「…よ、いち…?」
「っ!!?」
胸元から聞こえる大山の声にびく、と身体が揺れる。
うわ、色っぽ…じゃなくて!!
さっきのは嘘、だって言わない、と…
「…」
…いや、どこの誰とも分からない一年がいるんだ、この際本当にしよう。
うん、そうだな、そうしよう。
べ、別に大山が俺のになって嬉しいとかそういう理由でじゃ無いからな、うん。

「…」
そうこうするうちに、大山は俺の腕の中で眠ってしまった。
やっぱり平凡な顔で、もっと綺麗な人は大勢いるんだろうけど。
「…お前は俺のだからな、健太…」
まあ可愛いとも言えないことも無いから、俺のものにしてやる。

俺はそっと頭を撫でる俺の姿を、親衛隊員が興奮した様子で見ていたことには気付かず、満足するまで手触りを楽しんでいた。




101119
(こっちに来い!け、け、け、健太っ!!)
(っ!?わ、分かった…)
(な、名前呼び…!!隊長頑張ったんですね…!!)


前田君はスイッチ入るとエロくなると思います(笑)
普段ツンなのでスイッチ入ると暴走しそう
ツンデレが書いてみたくてこうなったんですが、まあなんとか纏まって良かったです