口下手にも程が | ナノ
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口下手にも程が


皆様こんにちは!今日は今年新しく高等部に進学して、火向様の親衛隊に入隊した僕がお送りさせてもらいます!
火向様はとっても格好良い人で、僕は入学式の後に一目見て親衛隊に入ることを決めたんです。
初めは恋人の岡崎様があんまりにも平凡な容姿だから、すぐ別れられるんじゃ、と思ってたんですが、何度かお茶会でお二人を見ているうちにそんなことは無いと分かりました。
火向様の岡崎様を見る眼が、とっても甘いんです。
愛しむ、ってこういうことなんだろうな、と思うほど。
見てる僕等が恥ずかしくなることもしばしばあるぐらいです。

親衛隊はお二人の邪魔にならないように陰ながらお二人を支援したり、交流会としてお二人とお茶会などをするのが基本的な活動ですが、最近はそれに加えてもうひとつしていることがあります。
これは隊長と副隊長には秘密です。
というのも、活動と言うのは隊長と副隊長を見守り、陰ながら応援する、というものだからです。

僕等の隊長は前田洋一様といって、とっても格好良い方です。
すらっと高い背に整ったお顔で、隊長自身に親衛隊がいてもおかしくない美形です。
御本人の希望で親衛隊はありませんが、僕等親衛隊員の中には隊長と火向様、両方のファンが多くいます。
僕は隊長の去年のお写真を見てびっくりしました。
なんと隊長は去年は僕達と同じ、いわゆる受けにしか見えない容姿だったんです。
今の隊長はどう見ても攻めにしか見えません。
お身体も鍛えているらしく、今では不良の集まるFクラスでも隊長に敵う者は少ない、と一目置かれる存在です。
家柄も本来ならA、もしかしたらSでも良いほどですが、強い希望でBのままにしてもらったそうです。
そんな素晴らしい隊長はどうやら、副隊長に恋をしているようなのです。

副隊長は大山健太様といいます。
容姿は失礼ですが平凡としか言いようがない、というのが第一印象です。
どうして彼が副隊長なんだろう、と思いましたが、しばらく活動するうちに納得がいきました。
副隊長は気配りが上手く、隊長をしっかり支えてくれる優しい人なのです。
平隊員の僕等のこともよく気にかけてくれます。
今では隊員も副隊長を慕ってお仕事をお手伝いする役を奪い合うほどです。
そんな副隊長を、隊長は好きなようなのです。

というのも、副隊長が僕等を構い過ぎるとすごく機嫌が悪くなられるので気付いたんです。
注意して見ていると副隊長と御一緒にいる時は機嫌が良いことが多いし、副隊長が隊長のお世話をしているときはとても御機嫌です。
決定的だったのは、ある親衛隊内でのお茶会です。
副隊長が隊長に飲み物を用意して、御礼を言った時のお顔が、火向様が岡崎様に向けるお顔にそっくりだったんです。
その後秘密裏に親衛隊員で話し合った結果、陰ながら応援していこう、ということになりました。
どうやら隊長はまだ御自分の気持ちに気付いていらっしゃらないようで、僕等はやきもきしていたのですが、先日どうやら自覚されたらしく、最近は以前よりもっと副隊長を気にしてらっしゃいます。

僕等もできるだけ応援しよう、ということでそういう甘い雰囲気に持ちこめるよう策を練りました。
今日が実行の日です。
僕等も応援しているので、隊長、頑張ってくださいね!
「可愛いでしょう?副隊長も被ってみて下さいよっ」
「えぇっ!?お、俺は…」
「ほら、おそろいなんですっ」
優しい副隊長はこう言われると断れないのは分かってます。
本日の作戦はネコちゃんで誘惑しちゃおう作戦です。
猫耳カチューシャをつけた姿を見せて良い雰囲気にしちゃおうとういう実にシンプルな作戦です。

「ほら、こうやって…」
「…うぅ、俺には似合わないよ」
装着したところで隊長が部屋に入ってきました。ナイスタイミングです!
「大山?」
ソファに座った隊長が姿の見えないことを不思議に思ったのか、名前を呼びます。
隊員で囲んで副隊長がカチューシャを外せないようにして隊長の方へ向かいます。
隊長は副隊長がいないからか少しむっとした様子で手元にある次のお茶会のリストを見ています。
「隊長、見てください!可愛いでしょう?」
「?いったい何を…」
顔をあげた隊長が眼を見張り固まります。

僕等はドキドキしてその様子を見守ります。
副隊長は黒い猫耳が恥ずかしいのか、うつむき加減に頬を染めてもじもじしています。
その仕草は僕らでさえ可愛いなあ、と思うのですから、隊長が思わないはずはありません!
ちら、と隊長の反応を窺うと、頬がうっすらと赤く染まっています。
「…ま、前田…?」
じっと見詰めたまま一言も発さないことに不安になったのか、おそるおそる副隊長が声をかけます。
その際ちら、と若干上目づかいに見上げる仕草は悶絶物の可愛さです!!
当然隊長には効果覿面、ボッと音がしそうなぐらい一気に隊長は耳まで真っ赤になります。

「っお、大山…」
「〜っに、似合わないよなっこ、こんなのっ」
恥ずかしいのか副隊長は早口でそう言って外そうとします。
ああっ!隊長、ここはひとつ褒めてあげないと…!!
「っま、待て!」
制止の声に副隊長は手を止めて赤い顔のまま隊長を見つめます。
隊長はその表情にまたしてもうっ、と悶絶しながらも、何か言おうと口をぱくぱくと動かします。
隊長!可愛い、だけでも良いんです!似合ってる、でもなんでも!
「っあ、そ、その…」
何度か手を握ったり開いたりしていた隊長ですが、ようやく口を開きます。

「っそ、そうだ!岡崎にもそれをつけさせよう!その下準備のためにも大山、そのままでいろ!」
た、隊長…!!
脱力する僕等を余所に、副隊長は隊長の勢いに説得され外そうとしていた手を下ろします。
そうなのです、なんと隊長は好きな人の前では素直になれないタイプのようなのです。
僕等も何とかしようと策を練るのですが、いざとなるとやっぱり隊長は素直になれないのです。
仕方ありません、プランBに変更です。

「隊長、なら岡崎様と火向様で写真をとって差し上げましょう!」
「記念にもなりますもんねっ」
「じゃあ写真がどんな感じになるか、隊長と副隊長で試してみたらどうですか?」
僕等の提案に、二人はうっすら頬を染めます。
プランBは記念写真で接近させよう作戦です。
「もっとくっついて下さい!」「肩抱いてください!」
ぎこちなく肩を抱く隊長ですが、その表情は嬉しそうです。
副隊長も恥ずかしそうにしながらも隊長に肩を抱かれています。

取りあえず今回の作戦は、隊長が2ショット写真を満足そうに手帳に挟むのを隊員が目撃したため、成功したと言えそうです。
中々進展しそうにないお二人ですが、これからも僕等は陰ながら応援したいと思います!
僕等隊員の夢は、火向様と岡崎様、そして隊長と副隊長が仲むつまじくお過ごしになるのを見守って行くことなのですから!




101109
(っ猫耳上目遣いとか…ヤバいだろ、くそ)
(は、恥ずかし…)

前田君はヘタレになってしまった(爆)
前田君は微妙に外国の血が入っている設定なので成長しました
しかしこの調子であと2話でくっつけられるのか…?(汗)